マガジンのカバー画像

短歌結社誌『塔』感想文

159
自分の所属する、短歌結社誌『塔』を読んで、好きな歌の一首評をしたり、気になった記事の感想を書いたりしています。
運営しているクリエイター

記事一覧

『塔』2024年4月号創刊70周年記念号(3)

⑭きんのゆげ 臓器をこぽこぽあたためるために冬のむアップルティーの 上澄眠 初句の平仮名…

川本千栄
4日前
7

『塔』2024年4月号創刊70周年記念号(2)

⑥飛行機はこれほど燃えるか燃えるだらう夜空にのぼる炎見るのみ/使命帯び被災地へ飛ぶ五人(…

川本千栄
5日前
3

『塔』2024年4月号創刊70周年記念号(1)

①特集:座談会「百葉集を読む 2019-2023」) 「死にたい」とツイートしてから消した人がヤギ…

川本千栄
6日前
5

『塔』2024年3月号(3)

⑰動物と触れ合うカフェとう風俗がある 今、どこ?今、もう原宿駅 丸山恵子 5/8/5/8/8。四…

川本千栄
3週間前
5

『塔』2024年3月号(2)

⑧夢の中で不誠実だと責めていたあの日笑って許したひとを 田宮智美 自己を殺して無理に許し…

川本千栄
4週間前
10

『塔』2024年3月号(1)

①内臓のいちばんちかく似たやうなくちびるの色ばかり購う 藤田ゆき乃 内臓は口から一本の管…

川本千栄
4週間前
9

『塔』2024年2月号(3)

⑯中本久美子「私の先生」 〈「なんで辞退するんだ。君に入れた後輩の気持ちはどうなるんだ。」と。「私なんかとてもとても」と言うと「どうして自分のことをなんかって言うんだ?失礼だろ。自分に対しても。」〉  著者が部長を辞退すると言った時の先生の反応。とても響く文。 〈音符と音を一致させていく。楽器の音が読めるようになる。表情を読む。(…)指揮する時自分は何を感じ、どう表したいかを持つことだと。音は自分の中で映像になる。〉  ここも良かった。著者は吹奏楽部の部長になり、指揮を先生か

『塔』2024年2月号(2)

⑦強い気持ちはいらない炎(も)える葉鶏頭ゆふぐれるまでここにゐさせて 田中律子 いらない…

川本千栄
1か月前
5

『塔』2024年2月号(1)

①いそいそとトムのうんちを袋に詰め永田先生たのしき日課 永田和宏 あ、、、言っちゃった。…

川本千栄
1か月前
5

『塔』2024年1月号(3)

⑫ああ、又だ、鍵かけたつけ……玄関(げんくわん)より幾程もなき歩みなりけり 篠野京 上句…

川本千栄
2か月前
6

『塔』2024年1月号(2)

⑦対談「短歌における口語と文語」吉川宏志×栗木京子 栗木〈本当の古語の流れを汲む文語とい…

川本千栄
2か月前
5

『塔』2024年1月号(1)

①享保の雛(ひいな)が見つめているものは我にはあらず背後の時間 三井修 雛人形を見つめて…

川本千栄
2か月前
5

『塔』2023年7月号~12月号ベスト10

2023年の後半のベスト10を選びました。どれも良い歌です。選べなかった良い歌もたくさんあ…

川本千栄
2か月前
18

『塔』2023年1月号~6月号ベスト10

毎月の『塔』から好きな歌を選んで一首評をつけています。その中から去年前半を振り返って、ベスト10を選びました。順位順ではなく、掲載順に載せています。あくまで私の好みで選んでいますが、どれも自信を持ってオススメできる良い歌ばかりです。 リアルにはリアリティなし しまむらで買ひたる服を脱いだら全裸 宮本背水 現実には現実感が無い。むしろフィクションに現実感を感じているのか。安い服を部屋で脱ぐ、そんな日常には現実感がないのだ。どこで買った服でも全部脱いだら全裸だが、しまむ