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短歌総合誌 角川『短歌』感想文

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短歌総合誌 角川『短歌』を読んで、好きな歌の一首評をしたり、気になった記事の感想を書いたりしています。
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記事一覧

角川『短歌』2024年3月号

①鶺鴒のちひさな気持ちこぼれたり小走りすれば陽差しゆれたり 小島ゆかり 上句に鶺鴒に対す…

川本千栄
2週間前
6

角川『短歌』2024年2月号

①対談 川野里子×睦月都 睦月〈翻訳不可能だと思っていた感覚がはじめて短歌で形にできたと…

川本千栄
1か月前
3

角川『短歌』2024年1月号

①苦しいね子供は親を拒めないチャールズ・マンソンが父であつても 山田富士郎 流行りの言葉…

川本千栄
2か月前
5

角川『短歌年鑑』令和6年度

①中島裕介「作品点描4」 反吐まみれのシドとナンシー知らざりし正気は鈍器わが手に重い 川…

川本千栄
2か月前
4

角川『短歌』2023年12月号

①TULIP(チューリップ)の唄に編み物する女性をりをりにゐて今宵も聴けり 栗木京子 チュー…

川本千栄
3か月前
5

角川『短歌』2023年11月号

①既視感が好きだと思う湖や映画と同じような理由で 福山ろか 既視感は新鮮さを欠く、マイナ…

川本千栄
4か月前
7

角川『短歌』2023年10月号

①一日の内訳に月光は含まれる浴びるたびみずうみになるというのに 立花開 一日の内訳は時間で計られるはずだが、そこに月光を含めた。月光を浴びていると、日常的な考え方や行動ができないのだろう。ぼおっと湖になっている時間なのだ。 ②一度きりの命 一度きりの肌 燃やさなくても燃えているのに 立花開 一連から亡くなったピアニストを詠った歌と分かる。芸術に憑かれて燃やさなくても勝手に燃えてしまう命を、自ら縮めるように燃やした人。ジャンルは違えど、主体もその気持ちを共有している。 ③音

角川『短歌』2023年9月号

①モノレールの吊り革ゆれるなにげなさに「きょうもあしたもいようと思う」 井辻朱美 「 」…

川本千栄
6か月前
5

角川『短歌』2023年8月号

①抽象化されたるのちも人体の熱(ほめ)きはありて曲線に立つ 吉川宏志 詞書「マティス展・…

川本千栄
7か月前
6

角川『短歌』2023年7月号

①何の種蒔きても生えぬ鉢ひとつ何か生えぬかと時をり見つむ 花山多佳子 本当ならちょっと怖…

川本千栄
8か月前
2

角川『短歌』2023年6月号

①晩春は銅貨のいろにひぐれつつはじめから無い兄弟姉妹 小島ゆかり 銅貨のいろ、に惹かれた…

川本千栄
10か月前
9

角川『短歌』2023年5月号

①時間とはあおぞら、ながれゆく雲か 窓はしずかなひかりの在り処(ど) 三枝浩樹 窓から青…

川本千栄
1年前
5

角川『短歌』2023年4月号

①さりながらわが抱擁の日々はすぎ穂絮のかるさを生きゆくばかり 日高堯子 ある年代に達して…

川本千栄
1年前
6

角川『短歌』2023年3月号

①この歌集がこの世界への敵意でも終はりの一首までいとほしむ 今野寿美 「この」歌集がどの歌集を指すのか気になるところだが。実作者の一人として最近、どんな感情でも歌に込めていいのか、と迷うことが多い。愛おしんで読んでくれる読者の存在は大きい。 ②青海を眺めるわれを待つてゐる母 やり直す生はなけれど 梅内美華子 大きな青い海を眺めている作中主体。それを待っている母。お互いに言葉は発しないけれど、心の通じるところがあるのだろう。二人とも人生をやり直すことはできない。それも分かって