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若手人材のコミュニティについて考える

こんにちは、知財塾運営です。
会社員として働く傍ら、若手知財の集まるコミュニティ「知財若手の会(チザワカ)」を主催、自身の会社「LeXi/Vent」を立ち上げた上村侑太郎さんと、若手法務の集まるコミュニティ「U-35若手法務の会(わかほう)」を主催しながら、noteでの執筆活動が実を結び、この度書籍を発行される「法務のいいださん」こと飯田裕子さん。
2人のキャリア対談を「知財お仕事ナビ」で実施しましたが、本編に収録しきれなかった2人の考えるコミュニティ運営について、番外編としてお届けします。ぜひ本編と合わせてお楽しみください!


「チザワカ」と「わかほう」が生まれるまで

上村さんは研究開発部門から知財部門に異動後、4年のうちに「知財若手の会(チザワカ)」を立ち上げ、飯田さんも法務職としてのキャリアをスタートさせてから早い段階で「U-35若手法務の会(わかほう)」を立ち上げられます。
お二人が若手人材の集まるコミュニティを作ろうと思ったのには、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
上村:チザワカは、若手の知財人材に学べる場を提供したい思いで立ち上げました。
きっかけは少し昔に遡るのですが、僕が知財業界に入って右も左もわからなかった当時、教えてもらう場を作ろうと、企業の知財部員が集まるSlackコミュニティで特許分析、IPランドスケープの勉強会を企画してみたんです。
蓋を開けてみたら、参加者はベテランの方ばかり、若手は2,3人。そこで議論をしたら、参加者に自分の意見を否定されるということが起きました。その場に相手の意見を否定しないなどのルールがあればよかったんですけど。
そのとき、新しい考えや柔軟性のある若手で集まった方が、こういう会は融通が効くというか、スムーズに運営できるんじゃないかって思ったんです。IT業界って、若手の勉強会がめちゃくちゃある。だから、知財業界にもあるかなと思って探したんですけど、全くなくて。なんてこの業界は閉鎖的なんだ、だったらもう自分で作るしかないと思いました。

飯田:先輩と飲み会に行くと、昔の思い出を振り返ったときに疎外感や焦りを感じることが多かったんです。「どこで知り合ったんだっけ。そういえばもう15年だよね」みたいな話が、このまま目の前の仕事だけしてても、私にはできるようにならないなって。そんなことを喋れる同期が欲しくて、わかほうを始めました。ここから知り合って、10年15年一緒に、違う会社だけど、同じフェーズを経て「社外の同期」みたいな人を作る場にしたいなと。
さっき上村さんもおっしゃっていましたが、エンジニアさんはそれが普通で、任意の勉強会が毎日どこかしらであって、知見を共有する世界を持っています。法務だってもっと楽しみたいし、ノウハウも知りたいし、世界が広がってもいいのかなと。

それから、自分がセミナーに登壇したときに、同じ会社の上司の方と、若手の方がどちらも申し込んでいたことがあって。「成長したいけど、先輩を信じていいかわからない」って20代の若手と、「後輩に自分なりに伝えてるけど、響いてる気がしない」って40代の上司という構造がそこに生まれていることが、なんとなく伝わってきました。
例えば、上司に「この本いいよ」と勧められたから、読まないと関係が悪くなりそう。でも、本当にこの本は自分の業務に役に立つのか?他にもっといい本があるんじゃないのか?って、若手の方が懐疑的になる。
そういう若手の方が、SNSを調べて、私のXに来て、「いいださんもこれ勧めてる」って確認してから、ようやくその本に手をつける、みたいなことが起こってそうだなと。上司が勧めたのと同じ本なんですけどね。
私もそうでしたが、若手の頃って”エビデンス”が欲しいんですよね。社内の情報だけじゃ不安になる時が出てきてしまう。それなら、エビデンスを取れる場を作ればいいんじゃないって思って。
それは今、自分がギリギリ中堅やベテランじゃなくて、若手に分類してもいいかなという年齢層にいるからできることかなと。上司の方の悩みも解決してあげたいし、困ってる若手たちには横の繋がりを作ってほしいと思いました。

飯田:ちなみに、わかほうには「過去チザワカにも参加しました」って人も来てました。

上村:聞いたことあります。

飯田:何が違うか聞いたら、「こっちはみんな陽キャですね」って言ってました(笑)。わかほう、うるさいんですよ。喋ってる人も聞いてる人もメモ取ったりしないし。交流会になると、マイクがないと話が聞こえないぐらい。至る所で爆笑。めちゃくちゃ賑やかで自由な会です。

上村:それがいいんじゃないですか。こっちは結構ガチガチ。しっかり会の流れやタイムテーブルを作ってやっているので、みんなシーンって聞いてます。僕は主催者だから、あれこれ言えないですけど、もっとはしゃいでもいいのになっていう思いもありますね。


コミュニティの育ち方とこれから

上村:飯田さんの話を聞いて、「参加した後、自分でアクションを取らないと次に繋がらない」ってメッセージは、核心だなって思いました。
これまでは、その場を企画することにメリットを感じてもらうのだと思っていたけれど、その後のアクションを促すことまではチザワカはしてこなかったなっていうのを聞いてて感じました。

この数ヶ月ずっとコミュニティの勉強をしているんです。どうしたらコミュニティが大きくなるのかとか、他の運営メンバーが、コミュニティを運営することのメリットを感じられるっていうようになるのかな、とか。
コミュニティが大きくなるにつれて、僕1人では運営できなくなってきたんです。そうなると、人の手を借りないといけない。人の手を借りないといけないってことは、僕の信条として、借りた分は返さないといけないから。
それに、コミュニティをやり始めたら後続が出てきて、他のコミュニティに人が分散するかなと思っていたんですよね。でも、そんなコミュニティが出てこなかったことも大きい。

チザワカを見て、「チザワカみたいなことをやりたい」って人たちが出てくるかな、と?
上村:そう、別の団体は出てこなかった。「自分から進んで」という動きがなかなか出てこなかったりするのは、知財業界特有のものなのかなと思ったりはするんですけど。
ということはある程度、僕たちのチザワカに期待してくれているんじゃないか、そうなるとこの会を続けていかなきゃいけないって思って、色々試行錯誤しています。

チザワカに来た方がわかほうに来たというような、相互送客という言葉がフィットするかは分かりませんが、「どちらも見てみる」という機会は、キャリアに悩む若手にとってはいいきっかけになるのではないでしょうか。

上村:ありだと思います。会の雰囲気は全然違うんでしょうね、
飯田:でも、自発的に動くのが辛いタイプの人にとっては、チザワカの方が優しい仕組みだなとも思っています。「この会に来るのに精一杯の勇気を振り絞りました」ってだけの人には、わかほうって残酷です。来ただけでは、その先何も起こらないから。
チザワカの参加者は究極、受け身でも大丈夫で、参加すれば主催者・運営側からちゃんとコンテンツを提供してくれるし、次回も呼んでもらえる。そういう安全性がありますよね。

わかほうは自発的な行動がとれる(とろうとする)タイプ、チザワカはお膳立てしてあげると前に進めるタイプがくる傾向にありそうですね。
上村:そうですね。なので、参加者のオンボーディングなどをちゃんとやるようにしていて、チザワカはそれでいいのかなと思ってます。でも今、多分2年前ぐらいに戻って、飯田さんのやり方を僕が知っていたら、多分飯田さんのやり方でやっていたと思います。

飯田:そうかな。チザワカの方が色々丁寧にやってると思うけどな〜〜。でも、お互いに「選ばなかった道」の方がよく見える気持ちはわかります。

上村:複雑にしすぎてしまった感はあります。コミュニティのミッション・ビジョン・バリューから作ってあるんですよね。

飯田:それはすごい!わかほうはもっと適当にやってます(笑)


飯田さんは上村さんに、主催者としての心がけや、人を巻き込むときの工夫を聞いてみたいそうです。

上村:主催者として、参加者全員に喜んで帰ってもらうことを心がけています。なので、ペルソナを全部出したり、アンケート結果に基づいて内容や時間配分を見直したり、企画は毎回改善しています。
誰かを巻き込んでお願いするときは、それ以上のものを返す。最近は運営を周りのメンバーに徐々に任せて、マネジメント的な動きをしていますが、義理と人情が僕の生き方のキーワードなので、お願いした方とWin-Winの関係でありたいと思っています。

飯田:主催者って、自分が「これやりたい」って言った瞬間に、全員がそれに巻き込まれるじゃないですか。それが難しいなと思ってて、鶴の一声が自分にあるから。それについては何か気をつけていることとかあります?

上村:運営メンバーで、チザワカに集まる人たちがどうやったらチザワカを楽しんでもらえるかを、徹底的に議論し尽くすことですかね。こうすることで、僕1人の企画だったものが「運営メンバー一同」の企画に変わる。運営はうまくいってるかどうか、まだ判断がついてなくて、言語化できないところも多いですが、そんな感じでしょうか。

2つのコミュニティには、参加にあたってどちらも年齢制限があります。
わかほうは、飯田さんが35歳の年齢を超えたら、どうなっちゃうんですか。
飯田:年齢制限まではあと3年ほどありますが、そこを待たずに早く主催者をやめて、次の主催者に交代したいです。運営スタッフとしては残るけれど、主催者のバトンは渡していきたい。私がやらなくなってなくなるコミュニティだったらそれはそれで諸行無常でいいですけど、私が35歳を超えても主催者として残り続ける若手コミュニティには絶対にしたくないです。だから、わかほうを今後も残したいと思う人は運営スタッフとして手伝ってほしいし、主催者もみんなで交互にやろう、そのための支援はもし引退してもOBとして責任持ってやるよっていう感じです。

上村さん、チザワカはどうされますか?
上村:僕も、36歳になったら出た方がいいと思っています。5年後ですね。箱としての支援はLeXi/Ventでやろうと思いますが、最近企画をやりたいって子が入ってきたので、仕事を振っていこうかと。コミュニティ運営って大変だろうと思われますけど、絶対にプラスになるので。

チザワカとわかほうが、もう少し回数を重ねて、お二人が35歳になる手前でもう一度同じインタビューをしたいですね。「あの時こうやって話したよね、その後どうなった?」という。

上村:そうですね!今日は本当に話せてよかった、面白かったです。
飯田:外から見たらきっと同じようなコミュニティをやっている30代同士に見えるけれど、こんなに考え方やコミュニティの設計が違うんだと思って、でも同じ悩みを抱えていたりして、すごく面白かったです。

ありがとうございました!

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