行政書士試験の内容が変わるかもしれない件

令和6年の試験に向けて、告示を改正しようとしている

総務省が行政書士試験の内容の変更のため、告示を改正しようとしています。
先立って、パブリックコメントを募集しています。
「行政書士試験の施行に関する定め」の改正に関する意見募集

どのように変更されるのか?

パブリックコメントに告示案が添付されているので、読んでみました。
簡単に言えば、いわゆる一般知識等の分野(問題47以降)で行政書士法や戸籍法・住民基本台帳法といった「行政書士業務と密接に関連する諸法令」をかならず1問以上出題するというものです。

行政書士の業務に関し必要な法令(以下、法令問題)

(法令問題については告示改正案に含まれないため、変更されない)

  1. 対象となる憲法、民法、行政法、商法・会社法、基礎法学に変更はない

  2. 試験実施する日が属する年度の4月1日現在施行されている法令、という条件も変更ない。

行政書士の業務に関し必要な基礎知識(以下、基礎知識問題)

  1. 微妙なことだが、「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」にかわった。

  2. 従来、一般知識等として政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解があげられていた。

  3. 告示案では一般知識、行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令(以下、諸法令)、情報通信・個人情報保護及び文章理解とされている。

    1. 一般知識とは、政治・経済・社会を含む

    2. 概要には行政書士業務と密接に関連する諸法令を必ず1題以上出題するとある。

  4. 諸法令については試験実施する日が属する年度の4月1日現在施行されている法令に関して実施する。

試験問題の出題割合

  1. 法令問題46問、基礎知識問題14問の配分は変更されていない

  2. 法令問題は択一式および記述式、基礎知識問題は択一式という出題形式も変更されていない。

なぜ変更されるのか。

  1. 前回の試験内容見直し(平成17年の告示改正)以後、関連する法律の改正や特定行政書士制度の創設、行政書士に求められる規範や規律に関する改正(欠格事由、懲罰及び罰則に関する規定の整備など)がなされている。

  2. 行政手続の複雑化やデジタル化への対応、各種災害の被災者支援、感染症対策における給付金申請支援、在留外国人への在留手続支援など、行政書士に期待されるその役割が拡大している。

という理由だそうです。

行政書士業務と密接に関連する諸法令ってなに?

改正の概要から、行政書士法、戸籍法、住民基本台帳法あたりが想定されているようです。
とくに行政書士法は、変更の理由から特定行政書士制度や行政書士に求められる規範・規律あたり、戸籍法や住民基本台帳法は職務上請求権の要件をターゲットにしているのかもしれません。
たとえば、業際問題により行政書士登録が抹消される事例問題とか、職務上請求権を行使して戸籍謄本や住民票の写しを取得する場合の要件とか、いろいろイメージできそうです。
行政書士には認められないけど、特定行政書士に認められる事務の種類を選ばせるというのもギリギリ出題範囲内ではないですか?
一方で、(変更理由に在留手続支援とあるけど)在留資格の申請等取次関係は試験では出題されないのではないでしょうか。
行政書士試験で出題できる内容がほとんどないとも言えますし、取次関係の知識は行政書士登録後の申請取次事務研修会で得られれば十分だからです。

私が受験生ならどう思う?

現在の一般知識等の問題配分は、

  1. 政治・経済・社会 7問~8問(令和4年:8問)

  2. 情報通信・個人情報保護 3~4問(令和4年:3問)

  3. 文章理解 3問

となっております。
試験問題の配分がほとんどかわらず、 諸法令がかならず1題は出題される以上、これはある意味対策が取りやすくなったとも言えます。とくに一般知識の政治・経済・社会は出題範囲が広すぎるのに7問も出題されています。
行政書士法などを出題するなら、政治・経済・社会から1問はけずらざるを得ないのではないでしょうか。
一方で、"一般知識は直前対策"派の人にとっては作戦を一部修正する必要がありそうです。諸法令は対策の余地がある(範囲が狭まっている)ので、絶対におとしたくないところです。
直前対策の理由が一般知識は広範囲だから運次第の短期記憶勝負なところがあるから、という方は諸法令だけは優先度を上げてもいいと思います。
私なら法令問題に目処がついたら、諸法令と個人情報保護法を学習します。

2019年の私は一般知識で一歩およばず、178点でおちました。
今でも覚えていますが、

問題51 度量衡に関する次の記述のうち、Aの方がBよりも大きな値となるものはどれか。
   A       B
1   1 坪     1 平方メートル
2   1 間     2 メートル
3   1 町歩    1 平方キロメートル
4   1 升     2 リットル
5   1 里    10 キロメートル

平成29年度試験問題より

をおとさなかったら、うかっていたのです。
同志社大学京田辺キャンパスのローム記念館でこの問題だけ(1坪 平方メートル どのくらい)ぐぐって「あ、あかんかったか。でも他で何とかなってるやろ」と思ったことまで覚えています。
他のどの問題をおとしたかは忘れましたが、これをおとしたことだけは忘れられない問題です。
令和4年ならきっとヒラリー・クリントンでしょう(勝手な思いこみ)。
一般知識はこういう問題も出てきます。
社会一般の知識かもしれないけど、運試しなところがあります。
これが1問、行政書士法の範疇に狭められたら対策できるかもしれないのです。
そう考えると、今回の改正は悪いものではないでしょう。

今年受験する人へのコメント

令和6年に試験の出題範囲が変更され、上述のとおり対策しやすくなるとは言っても今年合格できるならそれが一番です。
そして、毎年こういう話がでてきますよね。「次年度は民法で配偶者居住権を含む改正が施行される」とかなんとかかんとか。
こういう話題に右往左往せず、今年の出題範囲に集中できるかどうか、自分の弱点を早く潰せるかどうかが大事だと思います。
あと5ヶ月ちょっとです。頑張ってください。

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