マガジンのカバー画像

ショートショート

92
数百文字くらいのお話をまとめ
運営しているクリエイター

記事一覧

[DTM&ショートショート:ホラー] 春は大切な季節 - 隠された想い - #春弦サビ小説

[DTM&ショートショート:ホラー] 春は大切な季節 - 隠された想い - #春弦サビ小説

小説のサビ部分。つまり盛り上がるところだけを抜き出して書く試みです。

唐突にいろいろ出てきますが、物語の前後を妄想しながら読んでいただければ幸いです。

※注意※ホラーです

今回は元となったお話があります。
まずはそちらをお読みください。

春は大切な季節 - 隠された想い - 布団の中だけが春にとっての安寧の空間だった。

 ゆっくり布団から顔を出すと部屋の入口に無表情の母親が立っていたので

もっとみる
[ショートショート] 鼓舞 - そして世界は枯渇した - #春弦サビ小説

[ショートショート] 鼓舞 - そして世界は枯渇した - #春弦サビ小説

小説の途中を書く企画ですが、勢いで始まりから終わりまで書いてしまいました。

ららさんの作詞で曲をつくり、そしてお話を作ってみました。

まずは、曲を聞いてください。

鼓舞 - そして世界は枯渇した - ナギがまた泥水を掻き回していた。
 長い木の棒を持ってぐるぐると熱心に泥を混ぜている。

「そんなことして、いったい何の意味があるの?」

 ナミは毎日同じ質問を投げ続けた。

 そうしてざっと

もっとみる
[ショートショート] 記憶冷凍 - シナプスの森とフィヨロン

[ショートショート] 記憶冷凍 - シナプスの森とフィヨロン

 果てしなく続く海は凍っていた。
 緩やかに押し寄せる波はまるで滑らかなガラスのように見えた。

 凍りついた海の下にはかつてこの惑星に暮らしていた人々の記憶が保存されていた。

 ほんの百年ほどの寿命の中でこの星の人々が経験し想い感じたことの全てがここにあった。

 だけれども、この惑星は凍てつき千年もの間眠りについている。

 これらの記憶がこの世に放出されることはもうない。
 深い深い眠りの

もっとみる
[ショートショート:アクションホラー] 夜舞桜 - Sweet Potato Head Counterattack #春弦サビ小説

[ショートショート:アクションホラー] 夜舞桜 - Sweet Potato Head Counterattack #春弦サビ小説

小説のサビ部分。つまり盛り上がるところだけを抜き出して書く試みです。

唐突にいろいろ出てきますが、物語の前後を妄想しながら読んでいただければ幸いです。

夜舞桜 - Sweet Potato Head Counterattack 新宿歌舞伎町跡地にやってくると規制線が引かれていた。
 やはり噂は本当だったのだろう。

 木刀を握る手に力が入った。
 ミサはこの中にいるのだろうか。

 僕は裏側に

もっとみる
[ショートショート:SF] 散華 - 歌う女 - #春弦サビ小説

[ショートショート:SF] 散華 - 歌う女 - #春弦サビ小説

小説のサビ部分。つまり盛り上がるところだけを抜き出して書く試みです。

唐突にいろいろ出てきますが、物語の前後を妄想しながら読んでいただければ幸いです。

散華 - 歌う女 - それは偶然の出会いだった。普段は踏まない回路の隅っこをなぞるように舐めるようにひとつずつ潰していった先に、その入口はあった。

 中を覗いてみると、そこはゼロとイチの配列からなる、二進法の世界だった。
 コンピュータに二進

もっとみる
[ショートショート] トラネキサム酸笑顔と僕の出会い

[ショートショート] トラネキサム酸笑顔と僕の出会い

ある日、見知らぬ女に「トラネキサム酸笑顔」と言われた。

「何ですか?」

俺がそう聞き返すと、女はニヤニヤと笑うばかりだった。

腹が立ったので無言で立ち去ろうとすると、女が僕の腕を掴んでさらにこう言った。

「だから言っているでしょう。虎猫サムさん、笑顔って」

恐ろしくなって女の手を振りほどこうとしたが、思った以上に彼女の力は強くて、僕は逃れられなかった。

女は僕を引き寄せると耳元でこう囁

もっとみる
[ショートショート] 春とギター:底無しの欲望

[ショートショート] 春とギター:底無しの欲望

目を開けると野原にいた。

ヒラヒラと蝶々が飛んでいく。
うまそうだなと思った。

ゆくっり立ち上がると少し目眩がした。
あっちで少しどんちゃん騒ぎやりすぎた。

私の名前は春。いまそう、ここにこうして生まれたばかりだ。

音が聞こえてきたので私はそちらへ向かった。
人間がいた。

人間は弦楽器を持って声を出していた。

私はこれが “歌” というやつだと知っていた。
我々が奏でるものとはだいぶ違

もっとみる
[ショートショート] オバケレインコートの思い出

[ショートショート] オバケレインコートの思い出

 中学三年生のころ、好きになった男の子がいた。
 彼はいつも丈の長いジャケットを制服の上から着ていたので、オバケレインコートと呼ばれていた。

 たいていの時間、彼は読書をしていた。
 私にはそれがとってもクールでかっこよく見えたんだ。

 彼は探偵ものをよく読んでいた。
 私もこっそりそのシリーズを図書室で借りて読んだ。

 共通の話題を探していたんだと思う。

 ある日、私は思い切って彼に話し

もっとみる
[ショートショート] 風車のモリビト | シロクマ文芸部

[ショートショート] 風車のモリビト | シロクマ文芸部

風車のモリビトに言われて僕は微調整を続けていた。

この作業に何の意味があるのか僕には全くわからなかったけれど、とにかく何千何百とある風車の方向を調整して正確に風を捉えて最速で回るようにするのが僕の仕事だ。

風車は地面から生えてくる。いつのまにか生えてくるので知らず知らずに方向が狂っているものが増えてしまうのだ。

風車の向きを狂ったままにしておくと、この世の均衡が崩れて厄災が起こるという。

もっとみる
[ショートショート] 桜色の小人と恋と呪い [ダブル文芸部]

[ショートショート] 桜色の小人と恋と呪い [ダブル文芸部]

 桜色の小人が道端に落ちていた。

 それは本当に全身が薄いピンク色の小人だった。

 あまりに小さいので花びらと間違えて踏んづけそうになった。

 実際誰かに踏まれたのかもしれない。動かないし。

 俺はしばらく横たわっている桜色の小人を見下ろしていたが、そのまま置いていくこともできず、そっと拾い上げてポケットにしまった。

 そんなことをすっかり忘れてバイトして、家に帰ってきてズボンを洗濯しよ

もっとみる
[ショートショート] 向かい合った鏡 - 迷宮 | 青ブラ文学部

[ショートショート] 向かい合った鏡 - 迷宮 | 青ブラ文学部

 鏡に向かって座っていると、そこに映っているのが全くもってまるで知らない人に思えてくる。

 それは確かに私であるのに、光化学的においても紛れもなく私であるのに、私は目の前に映っている自分を自分だとは認識できないのだあった。

 確かに鏡に映っている私はほんの少し過去の私であるし、この安物の鏡の反射率を考えるとせいぜい80パーセントにも満たない完全ではない私な訳なのだが、そう言った微かな違いでは済

もっとみる
[ショートショート] 春と風水師はきまぐれってね #シロクマ文芸部

[ショートショート] 春と風水師はきまぐれってね #シロクマ文芸部

 春と風水師は気まぐれってね。誰が言ったか知らないけど実に的を射ている。

 俺の親父は偉大な風水師だったらしいが俺にとっては女好きのどーしょもないとんだクズ野郎だった。

 お袋は十年前に出て行ったきり、風水しか能のない男に育てられた俺は、必然と知らない間に風水師になっていた。

 そんな親父も一週間前、脳卒中だか何だかでぽっくり逝ってしまった。
 途方に暮れた俺が遺品の整理をしていると、親父か

もっとみる
[ショートショート] レトルト三角関係:マスターは天手古舞

[ショートショート] レトルト三角関係:マスターは天手古舞

 増員の必要が出たのでレトルトを一体発注した。

 非戦闘地区に配送されるので取りに行かねばならん。

 一人で行くつもりがレトルトSPが付いてきてしまった。
 女性型のすばしっこい個体なのだが…。

「マスター、前方に敵。射ちますか?」

「あれは敵じゃないぞ、ネコちゃんだ」

「マスター、地雷です。破壊しますか?」

「あれは牛糞だ」

 そう…彼女はポンコツ。戦闘能力だけバカ高いポンコツなん

もっとみる
[ショートショート] デジタルバレンタイン:旧人類の奇妙な習慣

[ショートショート] デジタルバレンタイン:旧人類の奇妙な習慣

 考古学研究を趣味とする僕は、いつものように旧人類の残した画像データを漁っていた。

 それは人類が仮想現実に拠点を移行する前のもの。数万年も前の情報である。

 旧人類は物質世界に囚われた不自由な暮らしをしており、娯楽といえば口から有機物を入れて尻から出したり、お互いの裸を舐めあって遊ぶことくらいだったようだ。

 そんな彼らの暮らしを見るのが僕の趣味だった。

 今日発見した動画はかなり衝撃的

もっとみる