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私の「推しの子」論

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元臨床心理士による「推しの子」考察です。 「エヴァンゲリオンの深層心理」(幻冬舎) 「ウマ娘の精神分析」(同人誌) の実績があります。
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私の「推しの子」論 第1期 おわりに

私の「推しの子」論 第1期 おわりに

「推しの子」は単なる「アイドル」ものでも、芸能界内幕ものでもない。

もちろん、「転生もの」でもない。

ただそれだけならここもまでブームにならない。

星野アイのキャラクターは、カリスマ性の権化だが、アニメはそれを見事に映像化した。

主役であるかに見えたアイは、早々に舞台から姿を消してしまう。

アイも、出生と育ち、そして、芸能界に入ってからどういう人の影響を受け、どう変化して行ったのかのいき

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私の「推しの子」論 第4回 早熟少女、有馬かなの苦悩

私の「推しの子」論 第4回 早熟少女、有馬かなの苦悩

有馬かなは、ものごころつく前からモデル・子役として活躍していたようだ。

「重曹を舐める天才子役」(ルビイ曰く)、もとい「十秒で泣ける天才子役」であったかなは、高慢なプライドを持つに至った。

忙しい、通りがかりのスタッフに「バック持ってもらえる?」と平気で言う。

そういう彼女のプライドをずたずたに引き裂いたのが、医師、雨宮吾郎が転生してきた、星野アイの(実は)息子、アクアだ。

共演することに

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私の「推しの子」論 第3回 黒川あかねのようにSNSで炎上しないためにはどうすればいいか

私の「推しの子」論 第3回 黒川あかねのようにSNSで炎上しないためにはどうすればいいか

アニメ「推しの子」の第5話から第7話までは「リアリティショー」編と言われている。

リアリティショーとは、典型的なのは、それまで面識のなかった俳優やタレントたちを共同生活させて、脚本なしの状況に置き、対人関係のいざこざや友情や恋愛の形成を、どこまでが視聴者を意識した「演技」で、どこまでが本気の言動なのかが非常に曖昧なまま、成り行きに任せる。期間は限定されている。

「今からガチ恋❤はじめます」とい

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私の「推しの子」論 第2回 女キリストでありマリアである星野アイ

私の「推しの子」論 第2回 女キリストでありマリアである星野アイ

すでに第1回でも引用しましたが、アクアとルビイの、

「俺たちの父親って誰だ?」

「処女受胎に決まってるじゃない」

というやりとりに、母親アイは「これはマズい」と思い、子供たちの父親に、「会ってみない?」と連絡を取ってしまったわけですが。

このやりとり、さりげないですけど、この物語の構造を語る上で重要なポイントでしょう。

皆様もご存じでしょうが、イエス・キリストは、母親マリアのもとに天使ガ

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私の「推しの子」論 第1回 嘘は飛びきりの愛 

私の「推しの子」論 第1回 嘘は飛びきりの愛 

■【厳重注意】:この考察は完全にネタバレモードでしか進みません■

アイドルグループ「B小町」の不動のセンター、星野アイは施設育ちだ。

母子家庭に育つ。

しかし父親については、少なくともアニメの物語の第1話の時点では、語られていない。

だがその母親も、彼女が小さい頃、窃盗をして、捕まる。

その間、アイは施設に預けられる。

だが、釈放されてきた母は、彼女を引き取りに来ないまま、姿を消す。

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