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「藤田美術館」早春のレキジョークル・後編

前回はこちらです。
(天神さんの御朱印を追記しています)


この日のランチは、食いもん奉行・ミコさんおススメのお店に当たりを付けていました。
というのも開店前には行列ができるほどの人気店にも関わらず、前もっての予約は不可で、当日の10時半からしか予約できず、天神さん訪問中にミコさんが予約を取ってくれました。

この日の参加メンバーは合計4名。
午前中はミコさん。チコさん、私の3人のみで、あとで仕事を終えたリンさんがランチで合流する予定なのです。


Sugar Cubeシュガー キューブ

お目当てのお店は、天神さんの北鳥居を出てさらに100mほどの「南森町センタービル」という古ぼけたビル内にあります。
入り口から中を見ると、すでにリンさんがいて、手を振っていました。

小さな入り口からはいり、突き当りを右へと進むとすぐにありました。

店前には椅子が並べられいるのを見ると、やはり並ぶのが当たり前のようで、すでに一人待たれていました。

どんなにお客が並んでいても、開店時間にならないと店内の電気も点かないし、扉が開くこともありません。
狭い廊下で待たされつつ、予約しておいて良かったというのと、ちょっと強気の対応に、よほど美味しいのだと期待させます。

ランチは肉系と魚系の2種で、「さばのソテーしそバターソース」にもそそられつつ、ハンバーグに定評があるようなので、迷った挙句、全員が「煮込みハンバーグ」を選びました。

超ボリューミィです。
とても大きくて分厚いハンバーグなのは想定内でしたが、付け合わせの野菜も大きく、スープの具材もゴロゴロとたくさん入っていました。
全体的に美味しかったのですが、私的に気になったのはドミグラスソースの味が少し濃かった。
これは好みの問題ではありますが、ちょっとマイナス要素です。

とはいえ、このボリュームでこの味で、コーヒーが付いて1300円は安い!
ケチで食い道楽の大阪人も大満足のランチでした。


シックでおしゃれな「藤田美術館」

天神さんの最寄り駅の大阪メトロ・谷町線の「南森町駅」からJR東西線・「大阪城北詰駅」まで1駅だけ電車に乗ることにしました。
当初はブラブラ歩いていく予定でしたが、これから行くところも駅に近いのでかなりの時短になるからです。

何より、おばちゃんたちはJR東西線に乗った事がなく、興味のある路線であるのも大きな理由でした。

1997年3月に「京橋駅」から兵庫県の「尼崎駅」までを結ぶ路線として開通したので、私たち世代が通学・通勤の頃には無かったものであり、未知の路線なのです。

大阪にずっと住んでいても、知らない間に新しい路線ができて、目的地に行くにも複数パターンがあったりして、電車で出かけるにも下手したら迷子になる可能性もある昨今です。

✨美術館実記

「藤田美術館」は明治時代に活躍した男爵で実業家の藤田でん三郎とその息子、平太郎、徳次郎によって築かれた大阪府の登録美術館です。

美術品愛好家であった傳三郎は、維新後に日本の文化財や美術品が粗雑に扱われていることに心を痛め、特に海外への流出を阻止しようと、その収集に務めました。

日本の宝を守り、個人で所有するのではなく、多くの人に鑑賞してもらいたいという思いから、自邸の蔵を改築して展示室として1954年に開館し、以後「蔵の美術館」として、のべ70年にわたり愛されてきた美術館でもあります。

その蔵は1945 年の大阪大空襲で自宅は全焼したものの、延焼せずに残り、数々の名品を守り抜いた堅固なものでした。

2017年に、建て替え工事のため長期休館となり、
昨年の2023年4月1日にリニューアルオープンしました。


トップ画像は藤田美術館の外観ですが、近代的で斬新な外観なので、駅のすぐ隣ですぐに視界に入りながら、一瞬入り口がどこなのかわからなかったほどです。


✨ロビー

開放的で明るいロビーは心地よく、おまけにロッカーが完備しているので手ぶらで鑑賞できます。

誰でも自由に見て欲しいという理念なので、完全に撮影自由です。
美術館と名の付くものには撮影制限は当たり前なのですが、これは素直に嬉しいです。

しかも入り口でQRコードを提示してくれていてこの期間の展示品の詳細がわかるようになっています。


✨テーマ別の展示

この日は「咲」「筆」「竹」の3テーマに分かれていました。
他には「妖」「山」「紫」「土」「詩」「隠」「雪」など、様々なテーマが、それぞれ時期をずらしながら変わり、いつ来てもこのうちの3テーマの展示が楽しめるようです。(スケジュールPDF)

ちなみに5月から始まる「紫」は「紫式部と源氏物語」なので、また行こうかと思っています。

この日の各テーマをホームページからワンフレーズを抜粋してみました。
「咲」咲き誇る花々
「筆」珠玉の水茎の跡
「竹」信念を曲げない高潔さ


✨心に残る作品たち

・花入れ「よなが」

両面ともガラス張りなので、裏表の鑑賞ができる

これは「よなが」という名の花入れです。
竹の節と節の間が長い事から余長よながと名付けたそうですが、将兵たちの戦場でに野営を思い「夜長」にもかけています。

天正18年、秀吉の北条氏の小田原城攻めに同行した利休が、現地の竹で作ったもので、どちらの意味にもとれるようにひらがなで銘を書いたのは心憎い趣ですね。

そして、この1年後、秀吉に疎まれて切腹させられる事を思うと、さらに奥深さを感じずにはいられません。


銹絵絵替角皿さびええがわりかくざら

尾形光琳・乾山 兄弟による合作の銘品です。
おや?これは知っている作品だ!
かの有名な絵皿ではないですか?

実はちょうど2年前、彼らの記事を投稿し、絵皿についても調べたことがありました。

性格は正反対の兄弟ですが、決して仲は悪いわけではなく、二人で協力し合ってこのような芸術作品を仕上げたと思うと、心温まる思いがしたのを憶えています。

この日の展示枚数は2枚でしたが、収納箱の表書きには元々は20枚セットのものだったことがわかっていますが、現在、当館では10枚が所蔵されているようです。

 

竹鶴蒔絵茶箱
チコさんがおもむろに、
「この中の作品のうち、どれか一つあげる、って言われたらどれにする?」
と言ってきたので、思わず私が逡巡していると、
「私はこれ!」
と、チコさんが指さしたのがこれでした!

「な?これええやろ??」
と嬉しそうに言うチコさんの言葉に思わず私も頷いてしまいました。
確かにこんなにコンパクトにまとめられるのであれば、いざという時にサッと出してお茶を点てられる。
目で見て楽しみ、実用性も兼ね備えた逸品です。

そういえば幼い頃、実家のお雛様の下段にあった食器類でよく「ままごと」をして遊びましたっけ。
懐かしい思いでこのお茶道具をまじまじと眺め、感慨深くなりました。


無料ガイドツアー
ホームページには「音声ガイド」の事しか触れてていませんが、職員によるガイドツアーもあり、何点かの作品をピックアップして丁寧な説明がありました。

その中で興味深かったのが古文の読み方です。

例えば「の」に「乃」や「能」の漢字を当て、さらにかな文字になるとそれらは区別されます。
この使い分けの法則を憶えると、読み解くのも容易くなると言われていましたが、それがなかなか難しい。


出口エントランスの窓。
全ての扉は分厚くて重厚。
そこから見える庭園がまた絵になる。


✨旧藤田邸庭園

1893年頃に創建された邸宅と同時にできた庭園が無料開放されています。
美術館の出口からやロビー、そして一般道からも自由に出入りできるようになっています。

美術館の拝観料の1000円も内容のわりには安いと感じましたが…

庭園内は小径が木々や池の間を縫うように通され、これが藤田家個人所有だったとは驚きです。
季節の花々も咲くのでしょう。この時はやはり梅が咲いていました。

写真右は高野山光臺院こうだいいんの「多宝塔」を大正5年(1916)にここに移築したもので、創建年は定かではありませんが、延宝7年(1679)から元禄4年(1691)の間だと推測されています。

高野山の光臺院こうだいいん??それどこ??
レキジョークルでも2019年秋に訪れましたが、まったくスルーしていて聞いた覚えもありません💦

それもそのはず、現在は高野山の宿坊の一つで、表通りから100メートル以上も奥まった最も北側にあるそうです。
元々の開基は今から約900年前、白河法皇第四皇子である覚法かくほう法親王ほっしんのうによるものでした。

藤田氏は光臺院こうだいいんから譲り受けた後、まったく同じものを高野山の同じ位置に新しく再建したそうです。
私たちの感覚では、それならわざわざ中古を貰わなくても、初めから新しく建てれば良かったのでは?

そう思うのはきっとド素人というもので、数奇ものの藤田氏にとっては、しっかり年季の入った歴史あるものがどうしてもこの庭に置きたかったのでしょう。

確かに拡大してじっくり見てみると、随所に凝った技法がみられ、日本建築の見本みたいな塔と言えます。


✨あみじま茶屋

ロビーの一角にオープンキッチンがあり、全体が美術館に併設された「あみじま茶屋」となっています。
各種の淹れたて、点てたての日本茶と、焼きたてのおだんごが常時用意され、500円のセット料金でいただけます。

2方向がガラス張りなので自然光が心地よく射し、シンプルで開放的な空間でリラックスしながらいただきました。
時間は覚えていませんが、1時間ほども居たかもしれません。
なんせ話は尽きず、気が付くと飲み干した抹茶がすでに乾いていたので、とりあえず美術館を後にしました。

しかも、この後、帰路の途中の天王寺駅で、再びお茶タイムを取り、今後の予定についてまた談笑してしまいました。

ほんま、どんだけ喋るねん。



【参考サイト】
大阪の塔


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