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読書のススメ

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読書感想と創作小説&エッセイ集 読書感想記事はネタバレはしないように、あくまでも自分自身が感じたことを中心にしたもの。 創作ものは私の好みで独断と偏見で選びました。
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記事一覧

「宇宙生成の記憶」 

「宇宙生成の記憶」 

一万三千年前の遥か宇宙
無限遠点の向こう側
ぼくときみは出会った。
北極星の
柱の周りを
ぐるぐる周り
きみは未来へ
ぼくは過去へと
旅立った。
宇宙生成の記憶を携えて。

今ぼくが見ている景色は
その生成の記憶。
花の匂い
奏でられる音
柔らかな木綿の手触り
全て懐かしい記憶。

北極星の向こうにいるきみを
時々思い出す。
北斗七星がぐるぐる周り
ペテルギウスがキラリと光る。

ぼくは意識の一本

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最強の漢(おとこ)を、未練がましい奴にするなんて、北方謙三さんって、天才すぎる!

最強の漢(おとこ)を、未練がましい奴にするなんて、北方謙三さんって、天才すぎる!

僕が、哀しいほど憧れている漢。
その名は「林冲」。

北方謙三さんの『水滸伝』の登場人物。
憧れるが、「僕は、林冲にはなれない」と、あきらめてもいる。

林冲とは、槍の達人。
天下無双の武人。
最強の騎馬隊のリーダー。

登場人物の中で、最強の男の1人。

物語の序盤で、敵に奥さんを殺されてしまう。
亡くして初めて、奥さんを愛していたと知る、大バカ者。

その上、亡き奥さんに未練タラタラなのだ。

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バリ島あり

バリ島あり

・あらすじ

◆第1章 2003年(平成15年)
「ひまり! あんた、私に会わずに東京に戻るってこと~⁈」

ボリュームが大きすぎて、小宮山ひまりは思わず携帯電話を耳から離した。
顔の左側が条件反射でホンの少し引き攣った。見ようによっては、大きな左目でウインクしたみたいだ。

恐る恐る、改めて携帯電話に耳を近づけ会話を再開する。

「だってさー、仕方ないさ~」
「仕方ないじゃないわよ! あんたお母

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『本を読んで』

『本を読んで』

その人は本を読んで泣きました。
その人は本を読んで壁に投げつけました。
その人は本を読んで微笑みました。
その人は本を読んで考えました。
その人は本を読んで誰かに電話をしました。
その人は本を読んで悔しがりました。
その人は本を読んで笑い出しました。
その人は本を読んで手紙を書きました。
その人は本を読んでもう一度読みました。
その人は本を読んで空を見上げました。
その人は本を読んで恋をしました。

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外国人が感じた源氏物語

外国人が感じた源氏物語

以前、源氏物語についてこんな記事を書かせていただきました。

そこに仲良くさせていただいているcoucouさんから、とても興味深いコメントで記事ネタのヒントをいただきました。

なるほど確かに気になります。
私も結局は読了できなかった「源氏物語」を他国の人が読了した事だけでもすごいですが、この日本人でも理解しがたい平安時代の世界をちゃんとくみ取れたのだろうかと、にわかに気になってきましたので、ちょ

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源氏物語に見る紫式部の狙い

源氏物語に見る紫式部の狙い

今回は大河ドラマの感想文ではありません。
その基本情報として「源氏物語」の世界観についてまとめてみました。

主人公・光源氏のモデルは複数人いることは知られていますが、大河を見る上で、そのモデル探しをするのも一つの楽しみ方だと思います。

◇◇◇

「源氏物語」を読んでいない私が語るのはおこがましい事ではありますが、様々な論考を拾い読みしただけでもその世界観というものが伝わり、さも読了したかのよう

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『女ぎらい』を読んで

『女ぎらい』を読んで

先日、勉強になる書籍を
ご紹介いただきました。

「しんちゃん」さんの

読みにくい、
でもオススメしたい本

にて、著者 上野千鶴子さんによる
『女ぎらい』です。

とても興味深いご紹介をされていたので、
さっそく最寄りの図書館で調べて
手元に取り寄せました。

今回は、上記の書籍を読んで
わたしの所感を
皆様と共有させてください。

「女ぎらいとは?」
「ミソジニーって何?」
「どういった本な

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ドライブ(創作)

ドライブ(創作)

遅い午後の林道を走っていた。アスファルトの道路はだんだんと狭くなり、軽自動車でやっと通れる砂利道に変わる。

登り坂が多くなって、ずっとアクセルを踏み続ける。
やがて景色が開けて、工事現場のような砂利採り場のような、殺風景な場所に出た。

行き止まり?

しかしとにかく先を急がなくてはならない。

小山のような坂をアクセル全開で進む。
地面は緑色の上にうっすらと雪が乗っている。

と、目の前が消え

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【#シロクマ文芸部】ちょっと嬉しい北風

【#シロクマ文芸部】ちょっと嬉しい北風

十二月に挑めば勝てるかもしれない。

北風は負けをどうしても認められずにいました。旅人のコートを脱がせたのが自分ではなく太陽だったのを未だに許せなかったのです。

コートを脱がせるなんて自分にばかり都合が良いことを、今度は旅人を遠くまで運ぶという話を提案すれば。

自分の力が強くなる十二月が来るのを待って北風は太陽の元へ走り出しました。

「どけどけどけぇ~い!」

ビュウビュウビュウ~!

「き

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息をするように本を読む101〜アガサ・クリスティ「春にして君を離れ」〜

息をするように本を読む101〜アガサ・クリスティ「春にして君を離れ」〜

 推理小説好きの中で、アガサ・クリスティの名を知らない人はまずいないだろう。
 その作品の数は長中短編、戯曲を含め250作を超え、映像化された物も多い。
 
 しかし、この「春にして君を離れ」は他のクリスティの作品とは一線を画した、ちょっと異質な小説だ。ロマンス小説、というジャンルに分けられるらしい。
 物語の中では殺人も盗難も誘拐もない。事件らしい事件は起きないし、犯人も探偵も出てこない。ただあ

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秋のデートと紅葉鳥

秋のデートと紅葉鳥

「紅葉鳥?紅葉狩り?」
覚えたての言葉を使ってみたい
意地悪な発想をすれば、これだ

小牧さんからのお題を拝見し
懐かしいエピソードを思い出した

レオ氏が「紅葉狩り」を間違えた
ボケをかましたと思い
「今の時期はどこも観光客が多いじゃん」

前職はあまり休みがなく
カフェでのんびりした後、古着屋に行きたかった

「もしかしてだけど、モミジ肉とか知らん?
ボタン鍋とか…」
「知ってるよ。知ってるけ

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【最近読んだ本】作家にしか書けない「がん治療」の話。あなたにも読んでほしい。

【最近読んだ本】作家にしか書けない「がん治療」の話。あなたにも読んでほしい。

西加奈子さんの本は何冊か読んだが、本当のところ、好きな作品は「サラバ!」だけだ。だけど、この「サラバ!」という、単行本で上下巻の長い長い物語があまりに好きすぎて、もうこの1作品だけで大好きな作家さんになってしまった。
特に下巻は一気に読んだ。もしかしたら西加奈子さんは作家人生をこの一作品に詰め込んだのではないかと思うほど、作家としての“熱”みたいなものを感じた。(今思い出しても震えるほどだ)

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『自分が増える』

『自分が増える』

昼休み、社食で日替わり定食を食べていた時に肩を叩かれた。
その日のメニューは、日替わり定食の中でも一番お気に入りのアジフライ定食だった。
普通は知っている顔を見つけて、同じテーブルに座るのだが、このメニューの時だけは違う。
角の日当たりが悪く特に人気のないテーブルについて、1人でゆっくりとアジフライを味わうのだ。
そのアジフライに辛子をぬり、醤油をさっとかけて、箸で掴み上げた時だった。
ちなみに私

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『胃のなかの眼』

『胃のなかの眼』

どうも腹の調子が良くない。
毎日、下痢を繰り返している。
食事を消化の良いものに変えてみる。
おかゆや雑炊。
あるいは、うどんをよく煮込んでみたり。
それでも、変わらない。
整腸薬を近くの薬局で買ってきた。
一週間服用してみたが、効果はない。
同僚からは、
「最近、少し痩せましたか」
などと言われる。
確かに、鏡を見ると、心なしか頬がこけているようにも見える。
ズボンのベルトの穴も、ふたつほどキツ

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