短編『何も気にならなくなる薬』その211
・深淵、お断り、成り上がり「成り上がりお断り」
お店の前に看板は事情を知らない人からすれば何のことだかわからないが、彼のことを知っていれば多少は理解ができるのかもしれない。
面白半分で入る人もいれば、少し考え込んでからお店に入るのを辞める人もいる。
彼は地獄の底にいた。
深淵といってもいい。
彼の人生には、栄光と衰退、そして裏切りがあった。
彼はこうして社会の一部として復帰を果たしたが、未だに成り上がりという人種を許せないでいる。
何も関係ない人までその看板を見て、店に足を運