古今集巻第九 羇旅歌 406番
もろこしにて月を見てよみける
阿倍仲麿
あまの原ふりさけみれば春日なる三笠の山にいでし月かも
この歌は、むかし、なかまろをもろこしに物ならはしにつかはしたりけるに、あまたの年をへて、えかへりまうでこざりけるを、このくにより又つかひまかりいたりけるにたぐひて、まうできなむとて、出でたりけるに、めいしうといふ所のうみべにて、かの国の人うまのはなむけしけり。よるになりて、月のいとおもしろくさしいでたりけるを見てよめる、となむかたりつたふる。
唐で月を見て詠んだ歌
阿倍仲麻呂
広々とした天の原の遠く空を仰いで見ていると、故郷の春日にある三笠山に昇り出た月が心に浮かぶ
この歌は昔、仲麻呂を唐に色々な物を習わせに送った時、長年が過ぎて、帰って来ることが出来なかったのを、日本から再び遣わしたのと一緒に、戻って来ようとして、出発した時に、明州という所の海辺で、唐の詩人たちが送別の宴を開いた。夜になって、月がとても美しく立ち昇ったのを見て詠んだ、と語り伝わっている。
「ふりさけみれば」は、遠くを仰ぎ見るという意味です。
百人一首にも取られている有名な歌です。仲麻呂についてのこの話もよく知られていると思います。奈良に帰りたかったでしょうね。
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