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子ども心を教えてくれたスゴイ体操の先生

私には、7歳の長男と、5歳になったばかりの保育園に通う次男がいる。

noteにも何度か書いているけど、私は子育てが得意なほうじゃない。子どもにどんな言葉をかけたらいいか、どんなふうにすれば子どもがきちんと成長するのか、本当によくわからなくて日々悪戦苦闘している。(きっと世の中のママパパはみんな、そうかもしれないけれど)

そんな中、保育のプロや、先輩ママの子どもへの接し方を見ると、「なるほど〜こうすればいいのか」と学べることが多い。先日の保育園の参観でも、私に大きな発見をくれたできごとがあったので、どうしても書きたいと思った。

5歳の次男、ヨウの通う保育園には、週に1回、体操の教室がある。
体操専門の先生が来てくれて、みんなに簡単な体操を教えてくれる。といってもそんなに難しいものじゃなくて、鉄棒や跳び箱とかを使って「遊ぶ」ことがメインだ。

その日、保育園の様子を参観する私も「動きやすい服を着てきてください」と事前に言われていた。私はその言葉にしたがい、ランニング用のスニーカーを履き、いつものデニムを着て参加した。

体操の教室が行われる園庭へ行くと、すでに体操の先生が待っていた。男の先生で、いかにもベテランという感じ。園児たちはみんな体操服に着替え、私もそのクラスの一員となって参加する。

その日は、このクラスではじめて縄跳びをするということだった。ヨウもたぶん、縄跳びに触ることさえはじめてだ。そのためまずは、縄跳びの”持ち方”から説明がはじまる。私が感心したのは、ここからだ。

「縄跳びするときね、こうやって持っちゃう子がいるんだけどね。こういう持ち方はね、マイクだからね〜」先生は縄跳びの柄の部分を、紐を下にしてもち歌うポーズをした。

みんなが笑う。私も思わず、笑ってしまった。先生のポーズが昭和の歌手みたいだった。へぇ、そんな説明の仕方があったんだ。

「正しい持ち方はね、こう。
左手をマイクのように持っちゃったら、右手にコップみたいに輪っかをつくってね。それで左手のマイクを、ロケットみたいにピューーーーーって、コップの中に飛ばすと、縄跳びの持ち方になるよ」

「わからなくなったらね、一旦左手にマイクの持ち方で持って。それで右の輪っかに向かって、ピューーーっとロケットを飛ばしてあげれば大丈夫。すぐわかるからね」

なるほどなぁ。私だったら、「縄跳びの正しい持ち方ができるなんて当たり前」という前提から入ってしまう。仮に持ち方を間違ったとしても、

「正しい縄跳びの持ち方は、こうだよ」

と1回か2回か教えて、それで子どもが忘れようものなら、「いま言ったでしょ!?なんでわからないの?」と言葉には出さなくとも、ちょっとイライラした物言いになってしまう。でも先生は、はじめて縄跳びに触る子どもの目線に立っていた。

そして子どもがイメージしやすい「マイク」とか「ロケット」に例えて、頭に入りやすくしていたのだ。こっちのが全然面白いし、覚えちゃう。子どもへの声がけって、なんて創意工夫の詰まったクリエイティブなんだろう!

「さあそれでは、縄跳びをこうして、地面に置いてみましょう」

先生は縄跳びをΩの形にして、園庭のグラウンドの上に置いて見せた。そして、そのΩの上を反復横跳びをするように、ジャンプしてみせる。みんなが真似をして、そのΩの上をジャンプして楽しんだ。

まずは縄跳びの存在に慣れて、縄跳びと仲良くなるような時間を作っているのだと思った。

すると先生は、ひとりの子を指してこう言ったのだ。

「今、とってもいい人がいました。それはコウタくん」

コウタくんは、私のすぐ隣にいた子だった。
その子は私から見たら、正直に言えば、そんなに上手というわけではなかった。どすん、どすんと、縄跳びの左右をゆっくり移動していた感じ。他にもっとキビキビと、テンポよく跳んでいる子がいたけど、なんでコウタくんなんだろう?

「コウタくんは適当にパッパとジャンプするんじゃなくて、順番が合っているかな?って、頭で考えながらやっていました。考えながら動くのは、とってもいいことです」

なるほどなぁ。確かにコウタくんは、ちゃんと考えながら跳んでいた。だから動作が人よりもゆっくりだったけど、それは足だけじゃなくて、頭が動いている証拠だった。コウタくんは、恥ずかしそうに、嬉しそうにしている。

他のみんなはコウタくんを真似して、1回1回、ちゃんと考えながら跳ぶようになった。

「じゃあ次は、縄跳びをさっきの正しい持ち方で持ってみましょう。そして、縄の上を1回ぴょんとジャンプしてみましょう」

先生はやり方を見せてくれた。いよいよ、いわゆる縄跳びっぽい跳びかたの始まりだ。

私にも縄が配られ、渋々チャレンジした。私は体育は得意じゃないし、縄跳びをするのはたぶん20年以上ぶり・・・。久しぶりの感覚で、ちょっと慣れない。

縄を回して、
ぴょん。

ああ懐かしい〜
ぴょん。

意外と飛べるじゃん!
ぴょん、ぴょん。

もう少し連続で飛べるかな?
ぴょん、ぴょん、ぴょん、ぴょん。

みんなの様子を見ながら、横の方でこっそり、久しぶりの縄跳びの感触を楽しんでいた。少し跳べると、もう少し跳びたくなってしまう。うっかり一瞬、参観を忘れて真剣に縄を回していた。
するとすかさず、先生にその様子を見つけられてしまったのだ。

「あれっ、お母さん!今すごい頑張っていました!ちょっと3回飛んでみてもらえますか?」

私は反射的に「えーー!」と言ってしまった。思えば運動の苦手な私が、体育関連のことで「やってみてください」とみんなの前で言われるなんて、人生で初めてに近いこと。

ヨウが私をニヤニヤと見ている。体操の先生や園児の他に、担任の3人の先生も私の様子に注目していてちょっと恥ずかしい。でもここで私が挑戦する姿を、息子に見せないわけにはいかない。

私は覚悟を決めて、えいやっと、跳んでみた。

えいっ。
えいっ。
えいっ、
えーーーいっ!

リクエストされた3回に、1回オマケもつけて。しっかり笑顔で(笑)
ふぅ、なんとか成功した。跳び終わったあとは5歳児たちに拍手してもらって。まんざらでもないご機嫌気分!
私の跳ぶ様子を見たあと、先生がこう言った。

「今、お母さんが縄跳びするの、みんな見たよね?頭はまっすぐ、上になってたよね。前かがみになってなかったよね。ヨウちゃんのお母さんみたいに、ピンと立って跳ぶときっと上手くできるよ」

私がやったのは、縄跳びをゆっくり4回跳んだだけ。きっと今これを読んでいる方のほとんどができるだろう、ごく簡単なこと。

でも先生にこんなふうに具体的に褒めてもらうと、もう大人な私でさえ嬉しくて、「なんだか私いいことしたかも!?」とちょっと誇らしげな気持ちになった(笑)そしてちょっぴり、縄跳びに自信が湧いてきた。

それからよく先生を観察していると、先生は22人いる園児たちの様子を隅から隅まで見渡して、どんな些細なことでも指摘してみんなの前で褒めてくれていた。しかも具体的にだ。
すると褒められた子はもちろん、その他の子たちも褒められた動作を真似して、どんどん積極的に縄跳びに向き合っているようだった。

ヨウも「きみは縄飛びをキレイにくぐるね〜」と言われていて、信じられないスピードで何度も何度も縄をくぐって見せていた。調子に乗りやすいのは、私と同じだ(笑)

その様子を見ながら私は、普段の自分の子どもへの声がけを、少しだけ反省したのだ。

もし息子が縄跳びを1回跳べたら、私はこう言うだろう。

「うんうん、上手。でももう少し軽やかに飛べるといいかな〜」
雑に褒めて、それとセットでできていないことを指摘してしまったり。

「はーい、あと3回はできるできる。やってみて!」
できたことを無視して、次なる課題を提示してしまったり。

「今できた」ことに注目して、どんな些細なことでも声をかけて指摘して褒めていたかと言えば、それは完全にNOだったのだ。

私はこの日帰ってから、息子たちへの声がけを少しだけ、変えてみることにした。

たとえば、音読の宿題をする小1の長男には、
「今の文章、一文字一文字、ちゃんと合っているか考えながら丁寧に読んでいたよね。それとっても良かったよ」と具体的に指摘してみた。

いつもだったら、スラスラと読めていない限り、こんな風に褒めることはなかった。しかも褒めかたが「すごい」とか「上手」とか、とても大ざっぱなものだった。(反省)

私が具体的に良いところを伝える工夫をしたところ、息子は音読をするたびに、「今のは何が良かった?」と自ら聞いてくるようになった。

私は私で、「初めて読んだときよりも、正確に読めていたのが良かったよ。何度も読んだおかげだよね」など、息子に伝える良いところを探しながら向き合うようになった。息子は音読は好きではなさそうだけれど、私が良いところを指摘すると、次から次へと読むようになったのだ・・!

思えば私もそう。書いたコピーに対して、「○○って言葉、すっごくいいですね!」など具体的なポイントを指摘されたら、「こんなところまで見てくれたんだ」とキュンとしてしまう。その人のために、もっといいコピーを書きたくなってしまう。

子どもだって、大人だって、おんなじなんだ。

体操の先生は、私にそれを教えてくれた気がする。

それにしても、こんなにたくさん縄跳びをしたのは久しぶりで、次の日は筋肉痛がひどかった(笑)

私は子育てはあんまり得意じゃないけど、子育てを通じて、発見して成長できる毎日が心から楽しい。私はすぐイライラするし、怒るし、きっと完璧に良いママじゃない。でも怒ってしまう以上に、息子の良いところを、たくさん言葉に出していきたい。

忘れないようにしたいと思う、11月のことだった。

小森谷 友美
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