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平隊士の日々 元治元年皐月十二

元治元年皐月十二  


井上組長に起こされる。
「昨晩、監察方より、鳥羽街道の先にある永明院と言うお寺に、
槍などを持った浪士の集団が集まっているという情報があった。
これから、五番隊、七番隊、九番隊を残し、
その他の隊士全員で捕縛に向かう。」と言う通達があった。
慌てて、準備をして、中庭に集合する。
近藤局長より、
「今回の浪士は多数の武器、特に槍を持っているので、
伍長、副長助勤は鎖帷子を身に着け、死者の無いように、捕縛に向かう。」
土方副長が、
「平隊士は、組長、伍長の指示に従い、槍の前には出ないこと。
乱戦にならないように、浪士を取り囲むこと。
準備が整った隊から出発する。」
伍長まで鎖帷子を身に着けるのは、初めてのことで、
相当、危険な隊務だ。

近藤局長、一番隊、二番隊、三番隊が先に出発した。
土方副長、四番隊、六番隊、八番隊、十番隊が続いて出発。
陽が昇るころ、永明院に着き、局長の部隊が突入し、
副長の部隊の我々が、逃げれないように周りを取り囲む。
土方副長が、
「垣根や塀を乗り越えて逃げる浪士がいる。
隙間を開けずに、必ず、浪士一人に二人以上で取り囲め。」
配置が済んだ頃、寺の内部で騒ぐ声が聞こえ、
十番隊が配置された裏門の方ので、
原田組長の「逃げるな!こら!」の声が聞こえる。
左に居た加藤が、「浪士が来た」と叫ぶ。
垣根を乗り越えて来た浪士を加藤と僕と西岡で取り囲み刀を向ける、
僕が斬り込むと、浪士の肩に刀が当たり、
刀を落とした浪士を加藤と西岡が捕縛した。
僕は周囲を浪士が出てこないか、見渡し、仲間に声を掛け続ける。
半刻ぐらいして、
竹内伍長「済んだみたいだ。屯所に戻るぞ。」

捕縛した浪士を引き連れ、屯所に戻り中庭に集合する。
近藤局長、
「ご苦労であった。浪士、十二人の捕縛、
および、槍、鉄砲を押収出来たことは素晴らしい。皆に、感謝する。」
土方副長、
「解散、食事だ。」

朝食、漬物、味噌汁、納豆、ご飯。
珍しい、納豆がでた、大阪では嫌いな人も多いが、僕は好きだ。

本日の隊務割。
午前が当直、午後が西巡察、夜が当直。

いつでも出れる準備をして稽古をしようとしていたら、
土方副長が来て手伝うように言われた。
ついていくと、浪士を捕らえて置く小屋の壁に穴が開いている。
どうも、浪士が逃げようとして、開けたようで、
板があるのでふさいでおくようにと言われ、
土方副長はどっかに出かけてしまった。
加藤と板をどうはったらいいか、もたもたしていたら、
井上組長が、
「なんだ、おまえら、金槌も使えないのか。」と言い、
さっさと、板を打ち付けはじめ、すぐに穴をふさいで、
「さぁ、稽古をはじめるぞ。」
稽古をしている内に昼になり、昼食。

昼食、天ぷら、小魚の煮つけ、梅干し、納豆汁、ご飯。

十番隊と西巡察。
特に何もなく、屯所に戻る。

夕食、しゃもの漬け焼き、ネギ雑炊、漬物。

当直、裏の蔵から、土方副長の尋問する声が聞こえる。

いつでも出れる準備をして、稽古。
監察方と一番隊が戻ったので、
西岡と少し飲み、朝の襲撃の話をしているうちにねむくなり、寝る。

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