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平隊士の日々 元治元年皐月十

元治元年皐月十  


明け方、夜襲があった。
一番隊がいきなり踏み込んできた。
蹴飛ばされて起き、慌てて、刀をつかみ立ち上がる。
廊下側に寝ていた六番隊も奥の方に寝ていた、
五番隊、七番隊の多くが、蹴飛ばされている。
土方副長の合図で終了。
土方副長がボソッと、
「夜襲は一番隊が良いな。」
出来れば、二番隊の方が僕たちには良いです、とは言えないので、
言葉を飲み込んだ。
布団をかたずけ、掃除して、稽古。

朝食、漬物、梅干し、大根の味噌汁、ご飯。

本日の隊務割。
午前は非番、午後は西巡察、夜は当直。

久しぶりの非番。
どこかに出かけようか?
そう言えば、山南総長が買っていた、
透明な羊羹が美味しそうだったな、買いにくか。
西岡に声をかけ、一緒に出掛ける。

茶屋で透明な羊羹を食べながら、茶を飲んでいたら、
浪士らしき人物が通り過ぎる。
西岡と目配せして、後を付ける。
浄篤院と言う寺に入ったことを確認して、西岡に見張らせ、
番小屋に走り、新選組の屯所に知らせるように言い、
西岡のもとに戻る。
寺から出てくる様子はない。
当直の二番隊がかけつけ、
監察方の島田勝司副長助勤が寺の境内を調べに入る。
「永倉組長、寺の中に五六人の浪士がいるようです。」
永倉組長が
「じゃぁ、俺らだけでじゅぶんだ。」と言い、
隊士を引き連れ、突入する。
西岡と裏手に回り、逃げ出す浪士の捕縛を手伝う。
浪士五人を捕縛し、屯所に戻る。

昼食、魚の煮つけ、天ぷら、梅干し、味噌汁、ご飯。

土方副長に呼び止められ、
「非番にもかかわらず、ご苦労だった。
勘定方に言っておいたので、手当をもらえ。」と言われた。
一番隊と西巡察に行く前に、勘定方により、手当をもらう。
特別手当が500文と言う大金でびっくりする。

屯所を出てすぐの御前通りを、二条の方に歩いていく浪士二人を発見。
沖田組長が合図をして、浪士の前に出るために、路地を走っていく。
井上組長はゆっくり、離れずに浪士の後を付いていく。
浪士の前に、沖田組長が飛び出し、誰何すると、
浪士二人は、きびすをかえし、こちらに逃げてくる。
組長が斬りつけると、一人は沖田組長の方にまた逃げていく。
一番隊が一人を捕縛し、六番隊も一人を捕縛、
番小屋に連絡し、一番隊の奥村伍長に浪士は任せて、巡察を続ける。
京都の町が何となくざわついている。
祇園祭が近いせいか、町の人通りも多い。  
暮れ六つ前に屯所に戻る。

夕食、唐辛子と京菜の雑炊、漬物、煮魚。

当直なので、いつでも出れる準備をして稽古。
三番隊が戻ってきたので、当直は終了。

竹内伍長の五人で酒を飲む、
祇園祭中に非番があれば、
今日貰った特別手当で遊びに行けると西岡と話していたら、
竹内伍長が、
「500文ぐらいだろう?」と手当の値段を当てる。
伍長が非番で捕縛に係わると、800文だそうだ。
安部が、俺も行けばよかったと残念そう。
今年の祇園祭の宵山は、水無月の五日(6月5日)だそうだ。
後、ひと月もすれば、京都の夜が華やぐなぁと思いつつ寝る。


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