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飛騨高山ウルトラマラソン2023(前編)

飛騨高山ウルトラマラソン(100km)を走ってきました。
はじめての100km、完全に未知の世界でかなり緊張していましたが、完走できてよかった!


道中しんどすぎて泣きそうな箇所もあり、さすがに一言で「楽しかった!!!」とは言い切れないアレでしたが、徐々につらかった記憶が達成感に上書きされてきつつあり、これがウルトラの罠か……と震えております。

いや、皆さんがおっしゃる通り、ものすごくいい大会だったし達成感はひとしおだけれども、やっぱめっちゃくちゃ長いよね……100km……。

詳細は、さすがに長くなりそうなので2回に分けます(それでも長いぞ)。



【コース図】

累積標高 2,529m(マップ上に「目を疑う登り坂」ってw)


土地勘のない場所をぐにゃぐにゃと走るので、「どこを走っているか」は正直わからず、高低図を意識した方が精神衛生上よい。

どこで登ってどこで下るのか、おおまかには頭に入れてスタートしたつもりでしたが、やはり実際に体感してみないと想定と違う(だいたいにおいて傾斜が思ったよりキツくて長い)ことも多々ありました。


【スタートまで】

第2ウェーブ(4:50)スタートだったので、3時半に高山駅からシャトルバスに乗車し15分程度で飛騨高山ビッグアリーナに到着。待ち時間等もほぼなく、とてもスムーズに体育会に入れました。この時点で既に雨は小降り状態で、走っている間はずーっと降り続ける(最高6mm)との予報。雨具をどうするか最後まで悩んでいたのですが、短めの100均カッパ(丈がちょうどランパンの裾くらい)を着て走ることに。結局、途中で頻繁に脱いだり着たりしたので、かぶりタイプではなく前開きで丈短めのカッパは重宝した。

スタート地点に移動するまでは、体育館の座席を使えるし、第1ウェーブの人たちとも出会えてリラックスして過ごせた。体育館の中の女性用トイレは常時少し並んでいる感じだったので、時間に余裕をもって済ませた方が吉。

第1ウェーブで出走する方々をお見送りし、そのままその場で少し待機して第2ウェーブのブロック後方からスタート。朝早く、雨も降り続いているのにたくさんの人が見送ってくれてうれしい。
わーい。人生で一番長い徒歩の長い旅にいってきまーす!


【0~10kmまで(1:04:07): 序盤なので淡々と】

雨が降りしきる中をスタート。ペースはどうしようかなぁ……と思っていたところ、ちょうど斜め前くらいにご近所ランナーSさんの姿が見え、キロ6分半くらいのゆるっとした速度で進んでいるようだったので、黙ってひたひたストーキング開始。基本の走力が高い方なので、途中から爆走しはじめたらやだな……と(一方的に)警戒していたものの、このSさん、非常にスタイルがよく、足も細く、ランニングフォームも美しく、後ろから眺めながら走るのにはいい感じなので、ついていくお化けはとても気分がよかった(いっぱい褒めたからなんかくれ)

3kmくらい走ったら体に熱がこもる感じがしたので、カッパを脱いでランパンの背中ポケットに収納。この後、雨足が強くなったら着て、暑くなったら脱ぐ、を10回くらい繰り返した。ちょっと面倒だけれども、こまめに温度調整できたのは若干疲労を減らせたように思うし、気分転換にもなったんじゃないかな。

幸い、Sさんは暴走せず安定して平均キロ6分ちょいくらいで走ってくれてたので、全くしんどくはないんだけれども、なんとなく体が動きにくくて、私自身には思ったほど余裕がない。想定ではもっと楽に走れるつもりだったし、なんなら序盤の数少ない平坦区間はキロ6分くらいまで上げられたら上げたかったんだけどなぁ、と思いつつ、長丁場なのでここで無理は厳禁だし、そもそも今回の最大の目標は「初ウルトラ完走」なので、ちょっとでもしんどいことは(この段階では)せずにゆっくりペースをキープ。だがしかし、なんやかんやしているうちに、10km前後のエイドらへんでSさんを見失ってしまった。残念。



【10~20kmまで(1:04:40): 軽く絶望する】

事前に作成した携帯用メモに「10~15kmまでゆるい坂」と書いてあった区間。自分で自分にだまされた。

確かに、高低図では(他のアップ区間よりは)ゆるめに見えたのだが、それは単なる比較の問題で、走れない程度ではないがそこそこの坂が、しかも15kmではなく17kmまで続くので、力加減の配分を誤り、15~17km区間でちょいちょい歩きを交えてしまう。あう。

えっと……これ、事前に「ゆるい坂」だと思ってたところだし、序盤も序盤のこの時点(15km)で歩き交じりなら、メインのコース最高地点までの坂とか千光寺とか裏ボス峠とかラスボス峠とか、この先待ち受ける数々の難所をどう攻略するんだよ……ちょっと待ってこれもう無理じゃね、私???と、本日最初の絶望をする。

最初の絶望、と思っていたけど、振り返ってみればここが一番の心折れポイントだったかもしれない。この先まだまだものすごい長いのに、思ったよりがんばれない自分に超がっかりしたけど、さすがに20kmいかないうちに投げ出すわけにはいかない。おまえ遠路はるばる何しに来たねん、ってなるわ。

できるだけ歩かないようにしながらも、ちょいちょい歩きながら「(自称)ゆるい坂」をクリア。だがしかし、登りで全然力が出ない。先が思いやられる。しょんぼり。



【20~30kmまで(1:08:58): 原因はおまえか】

下り坂を過ぎて、平坦区間に入り、そろそろウォーミングアップには十分な時間も過ぎたので、それなりに走れてもいいんじゃね?と思うものの、無理なく進んでいけそうな出力で走ると、ペースが6'20"/kmにはりついたままぴくりとも動かない。むぅ……体感では6'00"/kmくらいなのに、今日はほんとにダメだなぁ、雨だからかなぁ、と悲しく足を動かしていると、急激にお腹が痛くなってきた。おおう。なんかやばいのきた。

これはむりー、と26.6kmエイド(道の駅ひだ朝日村)の常設トイレに飛び込んで一息。どこのエイドでも軒並み仮設トイレには男性の長い列ができていて、ここが(女性専用がある)常設トイレじゃなかったら人としての尊厳を失っていたかもしれん……とぷるぷる震えながら、腹痛がおさまるまでしばし待機。下半身はお腹こわして(雨で冷えたのか?)おお大変な感じだが、上半身は暇なので、擦れそうなところにワセリンを塗りまくる。湿った妖怪ベタベタお化け爆誕。

ここから先、40kmの最高地点まで登りが続く区間なので、きちんと腹圧がかけられるよう、完全にすっきりするまで5分弱トイレにこもって態勢を整えてからリスタート。

すると、出すもん出したからか、さっきより体が軽い。ようやくキロ6を切るペースを見たぞ。やっほう。なるほど……本日のペースがとんと上がらない原因はおまえ(胃ではなくて腸)か……!と納得はしたものの、頼むから今後できるだけ暴発してくれるなよ……と祈る。



【30~40kmまで(1:11:33): 自分は信用ならんので】

30kmからの下りはあんまり記憶がないなぁ……トイレ行って体が軽くなった!と思ってたけど、単に下りだったからなのかも。とにかく、戦々恐々としながら33kmくらいからはじまるガチ登りに向けて精神統一する。コース最高地点に向かっていくだけあって、8kmくらい登り続けるけど、これを誘惑に負けて全部歩いてしまうとものすごいタイムロスになるので、できるだけ走らなきゃいけない。けど、まだ前半も前半なので、後半に向けてそいれなりに体力を温存しながらいかなきゃいけないわけで、こういう微妙な出力に関しては、初参加かつ初100kmだと加減がさっぱりわらかんので、とりあえず、(おおよそ同じくらいの走力であろう)周囲の人に合わせよう、特に、登り坂でも大きく崩れることなくできるだけがんばって走りそうな女性ランナーを参考にしようと決めて、適度なターゲットを物色。きょろきょろ。

というのも、私は平坦専用機でアップダウンがとても苦手で、こういった「がんばる登り」に関しては、もうまったく自分を信用していないのです。普段から坂がちょっとキツければ遠慮なく歩いていいと思っているので(実際、一人で走っている時は気ままに歩く)、「本当に歩いていい坂」の判断は人任せにしてやるぜ、という作戦である。他人に丸投げ大作戦。

しばらく適度な女性ランナーさんを物色しながら進んでいたのだが、先行している小柄なかわいいポンチョの女性と、とっても細い脚の青いタイツの女性をロックオンして、彼女らが走れば走り、歩けば歩く、とついていくお化けを存分に発揮。とはいえ、目を付けただけあって、この2名の女性がなかなか歩いてくれないのでちょっと……いやかなり、しんどい。ううう~……。体格差を考えると(どちらも私よりずっと華奢なので)ついていく対象を間違えたかな……?と思いながらも、ぎりぎりもうダメ……って感じになると歩いてくれるのと、歩く速度に関しては私の方がやや速いのでちょいちょいズル(あ、走り出すんですね、今気づきました!、的な小芝居を脳内で演じながら走り出しを意図的にワンテンポ遅らせる)も交えつつ、なんとかお二方から大幅には引き離されず最高到達地点まで到着。あいにくの雨(というかこの高度までくるともうがっつり降っていて濃いめの霧も発生)でまったくもって景色は楽しめないけど、とりあえずここが一番高いらしいぞ。がんばったー。

ちょっとした達成感に満ちあふれて写真撮影なぞ。まだ40km地点だけど。


かなり歩いた気がしていたけれど、この区間71分と、当初の想定よりも健闘。(勝手についていった)女性ランナーさんたちには大感謝だなぁ。



【40~50kmまで(1:04:07): ちまき覚醒す】

さて、40km地点のコース最高点を越えたらしばらくずーっと下ります。

先日の鯖街道で下りの速度があまりに遅く、さすがにこれはなにか根本的なことを間違えているのでは……???とネット検索したところ、どうも私は下り=休み区間と思っていて、ピッチはそのままにゆったり楽して走ろうと思っていたけれど、それは大きな間違いで、脚に負担をかけないようにできるだけピッチを上げて細かくステップを踏んだ方がよいようだ、と思い至りまして(非常に基礎的で今さらなことだと思いますが、これまで全然気にしていなかったのです平坦専用機なので)。ということで、下りでは腰を少し引いて重心を若干下にして、脚(というか主に膝)にかかる負荷が極力均一になるまで歩幅を細かくし、そのぶんピッチを最大限にぶん回す(ひざ下だけくるくるーと回す感じ)、という非常にちょこまかした走り方をしてみたところ、なんと!下りで他の人を抜けるじゃないか!!(どびっくり)

なんということでしょう。三週間前とはえらい違いで、脚も痛くならないし、他の人に抜かれないし、体感とほぼ同じ速度が出ている(キロ5分を切って走れる)。この走り方が正解なのかはわからんし、傍から見たらかなり失笑もののフォームであることは間違いないけれど、少なくとも速度は全然出ている。速度は正義。すごいぞ自分。匠の技で増改築されて別人トランスフォームかよ。

ただし、斜度が急になればなるほど足をぶん回すことになり、一歩間違えば右足と左足がからまってすっ転ぶので常に全集中の呼吸で挑まねばならず、顔は終始、半目無表情の大仏顔である)。オールスポーツがパパラッチしていないことを切に願う。

ということで、突然の覚醒に大感動しながら鬼門の下り坂を攻略。
うっへっへ(満足)

とはいえ、下り切ったあたりで再びお腹がゴロゴロしだして、一転、うーうー唸りながら45.5kmエイド(岩滝公民館)でトイレにピットイン。あれかな?今日は関門エイドのたびにトイレ行く仕様なのかな?(快適な常設トイレの設置場所を察知して痛くなってくれててむしろえらいぞ)

このトイレ休憩を差っ引くと、この区間、60分くらいで走れているので、やはり今回、下りの走り方が劇的に改善したと思う。拍手。事前に鯖街道ウルトラを走っておいて本当によかったし、鯖を走っていなかったら、脚への負荷が段違いに大きくて、100kmのラストまで脚がもたなかったと思うので、事前に最適な練習レースの組み合わせを教えてくれたご近所ランナーMさんの恩恵がはかりしれない。ちなみに、全体的な疲労度に関しては、飛騨高山のこの50km地点で、すでに水都70kmよりも上だなと感じながらも、同時にまだそれなりの余力はあることも実感できたので、水都の経験もばっちり生きている。あの2つの練習レースは、飛騨高山完走のためには必須だった。


後編に続く