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英国の4つの子どもコミッショナーによる新型コロナ関連のオルタナティブレポート

 英国を構成する4法域(イングランド・ウェールズ・スコットランド・北アイルランド)の子どもコミッショナーが、英国における子どもの権利の保障状況に関する共同報告書を国連・子どもの権利委員会に提出したこと(2020年12月)を、先日の投稿で紹介しました。

 この共同報告書とあわせて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが英国の子どもたちに及ぼしている影響についての報告書PDF)も別添文書(全5ページ)として提出されています。

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 そこでは、次の9分野について、COVID-19パンデミックによる子どもたちへの影響が簡潔にまとめられています。

1)平等および差別禁止
2)意思決定、CRIA〔子どもの権利影響評価〕および参加
3)暴力・虐待・ネグレクトからの子どもの保護
4)教育
5)貧困
6)不安定な食料状況
7)到達可能な最高水準の健康
8)自由の剥奪
9)遊びおよび余暇

 他の分野よりも相対的に詳しい記述が行なわれているのは、4)教育、6)不安定な食料状況、7)到達可能な最高水準の健康(メンタルヘルスを含む)です。また、次の記述は日本にもそのまま――というより、より以上に――当てはまると言えるでしょう(リンクは平野が独自に張ったもの)。

意思決定、CRIAおよび参加(2条、3条、4条、12条、24条、28条、29条)
 パンデミックは、構造化されたCRIA〔子どもの権利影響評価〕プロセスが必要であることを実証してきた。政府の対応では子どもたちの権利がしばしば見過ごされてきたためである。子どもたちに影響を与えるいくつかの決定は、CRIAの公表をともなうことなく行なわれた(学校閉鎖と教育支援、保育関連の決定、家族との接触制限を含む)。パンデミックが始まった時点でスコットランド政府はCRIAを実施していなかったため、CYPCS〔スコットランド子ども・若者コミッショナー〕は、COVID-19に対する国の対応についての独立CRIAを委託した。そこでは、〔子どもの権利〕委員会の4月の声明で挙げられた主要な領域が対象とされている。
 COVID-19への対応においては、意思決定に携わる人々と英国全土の子どもたちとの関わり合い(engagement)が存在しなかった。この尋常ならざる時期にあって、意思決定に携わる立場にある者は、子どもたちと関わり合い、その意見を考慮するべきだった。子どもたちの意見を完全に欠いたまま意思決定が行なわれることもあった。これは、最近の判決で控訴院も認めた問題である。

* 引用部分の最後で言及されている判決(PDF)とは、社会的養護下にある子どものための保障措置がCOVID-19パンデミック下で緩和されたことをめぐり、イングランドの登録慈善団体「Article 39」が教育省を相手どって起こした訴訟で言い渡されたものです。興味深い内容ですので、機会を見てあらためて紹介したいと思います。

 今回の別添文書には、国連・子どもの権利委員会が事前質問事項で英国政府に対して行なうことが考えられる、COVID-19関連の質問案も掲載されています(英国に対する委員会の事前質問事項は、2月8日~12日にかけて開催される会期前作業部会で採択される予定です)。以下、参考までに別添文書に記載された質問案を訳出しておきます。

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