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キツネなシッポと遊びましょ、の話エピソード4その①それは突然やってきた

シッポシリーズの番外編です。天真爛漫キャラで縦横無人に暴れまわったボクの家庭内サバイバル劇場です。今回は奥さんの危機を前にちょっと頑張ってます。

要約です。イザって時にはボクだってやるんです。

【ご参考に】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とりあえず↓話④を読んで頂ければココの世界観が伝わります。
うっすーい世界観でスイマセン。日々に疲れたら、そんな時にぜひどうぞ。
今回は感動作を目指してます。それにしてもシッポって、どうなったんでしょうね。

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しばらくして、季節が変わって時が進んだ。奥さんのお腹は日増しに大きくなり、それにつれてボクも慣れない家事仕事を覚えていった。やれば意外と家事はできるもんだ。休みの日に日差しを浴びてシーツを干すなんて、今まで知らなかった休日の過ごし方だった。奥さんのゴジラ第4形態もいまや冷凍凍結されてしばらくは冬眠中のようだ。つまり今やボクは夫婦仲も仲睦まじい、もうすぐパパなオトコになっていた。

そんな秋口の日に、事件は起こった。
その日は夕暮れの綺麗な日だった。休日だったので、ボクは近所のスーパーで買い物を済ませると、奥さんの指示に従い夕食の準備をした。奥さんはソファーで編み物をして、あーだこーだと言い合いながら久々の大作「ロールキャベツと春巻き」の夕食を完成させた。どっちも奥さんの好物だ。おいしそうに、でも体重の増えすぎにも注意しないと、そう言って奥さんは笑顔で控えめに食べていた。片づけをして、お風呂の準備をして、ふたりで洗濯物をたたんでいる時に、突然世界が激しく揺れ出した。上下から左右に、それは今まで味わったことのない揺れだった。明かりも消えてしまい、ボクは薄暗闇の中を奥さんのそばまで這ってたどり着くと、奥さんの頭を両手で抱えて揺れが収まるのを待った。奥さんは立ち技と寝技が得意だが、力技パワープレーと地震が大の苦手だった。ボクは結婚前に、奥さんが子供の頃に味わった地震の恐怖がいまだに忘れられないと言っていたのを思い出していた。
「大丈夫だよ。すぐに収まるから。」
何の根拠もないが、ボクは何とか奥さんを落ち着かせようとした。ボクの両腕をつかむ奥さんの手がひどく震えていた。僕は奥さんの手を強く握り返して時間が過ぎるのを待った。

ようやく揺れが収まった。明かりは消えたままだが、部屋中のモノがひっくり返っていた。ボクはなぜかこういう自然災害系には強いようだ。もともと人生で味わった悲劇が災害級だったせいか、ボクのココロと関節は非常に鍛えられていた。ボクは奥さんを何とか立たせて、そばのソファーに座らせた。顔色が悪かったが、ペットボトルの紅茶を飲ませて横になるように言った。外はまだ少しだけ明るくて、さいわいなことに窓ガラスは無事だった。テレビをつけてニュース速報を待つ間、部屋を見回ってみたが、大抵のモノは床に散乱していた。台所がひどい惨状で、棚のガラス類が床に落ちてあちことで割れていた。明かりもつかず、電気製品はみな動きを止めていた。そう言えばこの部屋はオール家電だから、停電になればインフラ自体がすべてアウトだった。

ローソク、趣味でもっとそろえときゃ良かったな…ボクはふとそんなコトを考えていた。いついかなる時でもユーモアのココロを忘れない、それがボクの主義であり、強さなのだと思う。

どうやら結構な規模の地震のようだ。奥さんが実家に連絡しようとしたが、つながらない。こういう時は互いの無事を信じてしばらく待つしかないのだ。もう一度外を見ると、とりあえず辺りに煙はあがっていない。火事は大丈夫だ。ベランダから下を見ると何人かが外に出ていて、道の端で座りこんだ人の介抱にあたっていた。

電気は数日使えないだろう。オール電化のこの部屋はインフラのない原始の時代に逆戻りだ。幸いお風呂の支度の途中だったから、水は結構確保してた。ご飯はさっき食べてて、非常食は数日備えがある。ローソクとランプも偶然だが先週買っていた。つまりは数日だけ太古の暮らしに戻るだけで、明かりも家電もつかえない中で楽しいキャンプ生活を満喫するだけだ。考えようによっちゃ、数日正当な理由で会社を休めるわけだ。ボクは会社から支給されたスマホの災害アプリに自分の状況を入力した。出勤できる?にはムリと答えておいた。この状況で身重の奥さんをひとりにはできない。ボクは震えの収まった奥さんに、大丈夫だよ、数日で落ち着くはずだから。それまでココで生きていけば良いだけだから。そう言って励ました。奥さんは涙ぐんでいたが、少し落ち着いたようだ。少しお腹が張るから、少し休むね。そう言ってソファーに横になった。ボクはとりあえず台所の惨状から片づけを始めることにした。


(イラスト ふうちゃんさん)


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