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古い記憶を思い出した話

古い記憶というのは、ふとした時に何気ない拍子で思い出してしまう。そんな風に思えることがある。それは、ボクが鶴の記事を読んでいる時のことだ。

↓ツル、食べちゃいましたって、昔のヒトはおそろしい…


随分と昔のことだが、同僚の後輩女子が結婚した。

その半年前の夜、彼女が夜に突然電話してきた。職場で話すことは多かったが、何度か数人で飲みに行ったりしたくらいの関係だったから何事かと気になった。そう言えばしばらく前に、彼氏が政治家になりたいとか言い出して困ってるって話を聞いたことを思い出した。年下で可愛らしい感じの人だったが、そろそろ結婚とか考えて迷ってるのかな、そんな風に思った。

ハナシというのは、どうやら新しい彼氏ができたのだという。しかもボクよりも結構年上の人だという。真剣交際を申し込まれて悩んでるんだと。

ボクに人生相談するのはどうなの?とも思ったが、まずは自分の気持ちが第一だから、正直どう思ってるの?そう聞いてみた。そうしたら、気持ちはすごく嬉しい、でも…と言葉がよどんだ。何か言いにくそうだった。マジメな人だったから、真剣に悩んでいることは想像がついた。いつものおどけた感じのカワイイ口調でもなかった。

しばしの沈黙のあと、彼女が言ったことにボクは驚いた。
彼氏のアタマがツルなのだと。

令和の世で人様の容姿を口にするのはイケない。なので表現を婉曲えんきょくしてツルとした。結構な年上のツル、確かに強烈な並びの単語だ。ボクもツルなんて想像もしない世代だった。でも人の価値は見た目なんかじゃない。容姿で人を判断してはいけない。その人の真剣な思いこそ大切にすべきではないか。確かそんな風に話したことを覚えている。納得はしなかったが、安心した風で彼女は電話を切った。

それからしばらくして、結婚式の案内が届いた。彼女の職場が異動になりしばらく会うこともなかったが、そういえばボクは彼女にその後を聞いていなかった。コトの行方も気になり、ボクは式の当日を迎えた。会場は港のそばの洒落しゃれた感じのレストランだった。

あー、ツルね。新郎の姿を見て、ボクは彼女のその後を理解した。二人とも幸せそうな笑顔だった。でもそれ以上に、新郎側の盛り上がり方が異常だった。彼女が結構カワイイ系の美人さんだったこともあり、先輩後輩を交えたオトコ達は新郎の快挙に大騒ぎだった。お偉いさんの上司まで揃って酔った顔でバンザイ\(^o^)/してた。周りに愛されてるいい人なんだろうな。新婦側のボクらは引き気味に彼らの狂宴を眺めていたが、ボクは彼女のオトコを見る目の確かさが嬉しかった。

その後新婦側のスピーチがあった。ボクらがともにお世話になった上司で、ご夫婦そろって結構な地位にある方だ。
「夫婦のあり方についてですが、互いに毎日、花に水を注ぐように愛を贈りあいましょう。愛情とは枯れやすいものです。でも、そうすればずっと幸せに過ごせます。」
時々見かけていた夫婦仲睦なかむつまじい様子から、本心の言葉だと思った。

ボクがこの言葉の意味を心から理解できたのは、随分と時間のたったつい最近のことだ。



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