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品川駅のトイレにて。

土曜日、品川駅で待ち合わせをしていた。
その前にまだ時間があったので、僕は駅のトイレに向かった。
今日はその時に起きたプチ事件を書こうと思う。

個室のトイレは満員状態で、
ひとり外国人のおじさんが個室が空くのを待っていた。
僕も大きい方をしたかったのでその後ろに並ぶ。

品川駅のトイレは分かりやすく、
人が入っている時は×マークが表示される。
個室のトイレは10個以上あったけれど、
全てに×マークが表示されていた。

「ん?待てよ。」
よく見ると、奥に1個だけ◯の表示が見える。

なんだ、奥のトイレが空いているじゃないか。
外国人のおじさんはなぜ行かないんだろう。

行かないなら僕が行きますよ、
僕はそう思って並んでいるおじさんの横を
通り抜けて◯が表示されているトイレに向かって歩き出した。

でもトイレに着いて、僕は言葉を失った。
なぜおじさんがこのトイレに入らなかったのか、
その理由も瞬時に分かった。

めちゃめちゃ汚い...!!
どう汚いかここに書くのを憚れるほど汚い!

簡単に説明すると、
便器の中にあるはずのものが床に散乱している。

「こりゃあ入れんわ。」

僕は踵を返して、おじさんの方へ戻る。
おじさんも同じものを見たのだろう、
僕が戻ってきた時、同情の笑みをかけてくれた。
僕もおじさんに微笑み返す。

僕とおじさんは最悪の惨状を見たもの同士、絆が生まれた。

それにしても、どう使ったらあんなに汚れるのだろう。
ちゃんと座ってすれば、あんなことにはならないはずだ。

最悪汚したとしても、放置するなよ。
僕は並びながら汚した人間に腹を立てていた。

そんなことを考えていると、
ひとつトイレが空いて外国人のおじさんがトイレに入っていった。

「どうかおじさんが快適に過ごせますように。」
僕は心の中でそう呟いた。

その後はしばらく1人で待っていると、
今度は僕の後ろにひとりお兄さんが並んだ。

お兄さんは僕と同じように奥の個室の存在に気付き、
僕に話しかけてきた。

「奥のトイレ空いてますよ?」

馬鹿め、お前はあの惨状を見てないから
そんな吞気なことが言えるんだ。
行きたいなら、行ってこい。

でも、僕はお兄さんにもあの惨状を見せるのは
可哀想だと思ったので、親切に教えてあげた。

「あそこのトイレめちゃめちゃ汚いです。」

お兄さんはその一言で全てを察したのか、
行こうとはせずに僕の後ろに黙って並んだ。

そのまましばらく2人で並んでいると、
近くのトイレがやっと空いた。

良かった、これで入れる。
長かった待ち時間もこれで終わり。

しかし、悲劇はまだ続く!!

中から出てきたおじさんが
僕の顔を見ながら、
「すいませんね、すいませんね」と謝ってくる。

僕は「何言ってんだじじい」と思いながら、
トイレに入ろうとして息を飲み込んだ。

またトイレが汚いのである!!

どう汚いかと言えば、
やっぱり便器の中にあるはずのものが
床に付いているのだ。

奥のトイレほどの惨状ではない、
奥のトイレはガッツリだが、
こちらは申し訳程度だ、頑張れば出来なくはない。

いや、感覚が麻痺しているぞ。
どう考えても、床にあってはいけないものがあるんだ、
ここで出来るわけがない!!!

僕はやっぱりトイレから出て、
後ろのお兄さんに「ここもやめておきます。」と話した。
お兄さんの位置からもトイレの中は見えたから、
お兄さんも黙って頷いた。

その会話を聞いていたのか、
トイレから出てきたクソジジイが
「え?え??」と話しかけてきた。
なんで入らないの?と言いたげだ。

こんな状況で入れるわけねーだろ!!!
てか、奥のトイレもお前が汚した可能性あるな!!

僕はそう言いたかったけど、
「大丈夫です。何でもないです。」とだけ言い、
おじさんをさっさと帰らせた。

あー早くどこか空いてくれないかな。
僕はいつもこう小さい不幸に見舞われるよな。
僕はもう半分泣きそうになっていた。

後ろのお兄さんはここのトイレがヤバいと思ったのか、
気付いたらいなくなっていた。

僕はそれでも1人で並び、
やっと空いたトイレに入った。

そこのトイレはちゃんと普通で、
僕はやっと心が休まる思いで用を済ましたのだった。

僕は便器に座りながら心に誓う、
品川駅では二度とトイレをしないと。

僕は何事もなかったようにトイレを出て、
待ち合わせの友達に「元気だった?」と話しかけたのだった。





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