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市民プールへ行く

先週の土曜日、高校の友達と市民プールへ出掛けた。
久しぶりに泳ぎに行くから楽しみだったけれど、
20代半ばの男3人が市民プールへ行くなんて
周りからはかなり浮いていた。

市民プールへ来ているのは小さい子供を連れた親子連れか、
健康志向のおじいちゃん、おばあちゃんだけだ。
男3人で行くものではない。

流れるプールは子供たちで賑わっていたので入らず、
僕たちはおじちゃん、おばあちゃんが泳いでいるガチ練習ゾーンで泳ぐことにした。

僕は意外にも中学、高校と水泳部だ。
泳ぐことには多少自信がある。

まず、試しにクロールを泳いでみることにした。
何年も泳いでいないから、
下手したら泳ぎ方を忘れてしまったかもしれないと
不安だったけれど、体はちゃんと覚えていた。
僕はあの頃の感覚を取り戻して、真っ直ぐ泳ぐことが出来た。

他の泳ぎも忘れていないか試してみたけれど、
背泳ぎも平泳ぎもバタフライも問題なく泳ぐことが出来た。

ただあの頃と違うのは、
すぐに疲れるということだ。

25m泳ぎきった頃には僕はもうヘトヘトだった。
バタフライに関しては筋力が無くて、
25m泳ぐのもしんどかった。

現役でやっていた頃は50mも全力で泳げていたのに、
今になっては肩が全然上がらず、
僕は自分の体力の無さを痛感したのだった。

友達が途中で「25m勝負をしよう」と言い出した。
僕以外に水泳部はいないから僕は絶対に負けたくはなかった。

人よりちょっと出来るもの、
それが僕にとっての水泳だった。

僕は水泳以外はてんで駄目で運動全般苦手だから、
高校時代は体育の授業をサボったりしていた。

スポーツ大会の日にはなるべく出なくて済むよう、
目立たぬように影を潜めていた。

一方僕に勝負を挑んだ彼はスポーツ万能、
スポーツ大会ではいつも中心の的で女子からも人気があった。

僕はそれを体育館の隅で「何がええねん」と
悪態をついていた過去がある。

そんな僕でも唯一彼に勝てるのが水泳だった。
僕は水泳を幼稚園の頃からやっている、歴が違うのだ。

もう何年も泳いでいないとは言え、
ここで負けるわけにはいかない。
僕は「絶対に負けないぞ」という意気込みで勝負に挑んだ。

もう1人の友達が合図を出してくれて、
僕と友達は2列に並んで同時に泳ぎ出した。

なるべく息継ぎをしないように、手と足を無心で動かす。
あの頃泳いでいた感覚を必死で思い出す。

それでも僕と友達の距離は離れない、
すぐ横にピッタリと友達は付けていた。

「絶対に勝ちたい」という執念で、
僕は最後の5mでさらにギアを入れて泳いだ。
そして、何とかタッチの差で僕は勝つことが出来た。

友達が「やっぱりちくわは速えーな」と褒めてくれた。
僕はそれが当たり前のように「まあね」と返したけれど、
内心は凄く焦っていた。

高校生の頃はもっと体ひとつ分くらい離しての余裕の勝利だった。
それが今はタッチの差でギリギリだ。

いずれ抜かされる日が来そうだ!!
僕はコッソリ自主練をしておこうと心に誓った。

全力で泳いだあとは、
ジャグジースペースでのんびりと体を休めた。
そこで僕は突然友達から結婚するという話を聞いて驚いた。
(審判をしてくれた友達の方)

高校1年生の頃に出会って、早10年。
正直あの頃から僕たちの話す内容や遊び方は全く変わっていなかった。

未だにマックで夜通し話したりするし、
市民プールで全力で競争するくらい、
くだらないことをずっとしていた。

そんな僕たちだったのに、
1人が結婚という人生の大きな節目に立っていることに、感慨深くなった。

もうこれまでのように遊ぶことは
出来ないのかなと思うと寂しい気持ちにもなった。

ただやっぱり友達が運命の人に巡り逢えたこと、
それをちゃんと祝福出来ることは純粋に嬉しかった。

僕は結婚式で受付を担当することになった。
結婚式は来年の5月にするそうで今から楽しみだ。

さて、友達3人の中で彼女がいないのは僕だけだ。
水泳で勝って得意になっている場合ではない。
僕もそろそろ恋愛をしなければと思った夏の終わりだった。

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