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#90 ビリヤード解剖学・「手首の動作」(後編)

前回(#89中編)投稿からかなり時間が経ってしまい大変申し訳ございません!←投稿用の資料収集をする時間があまりなく・・・

今回はスヌーカー・チャイニーズエイトやポケットビリヤードにおいて、実際に手首がどのように使われ動いているか、を考察していこうと思います。

#88「手首の動作」(前編)はコチラ
#89「手首の動作」(中編)はコチラ

注)今回投稿の画像全般に試合動画からの切り抜きなので不鮮明な物が多いですがご容赦ください。またカメラに対する選手の向きの違い等で実際には視え方の差分や誤認があるかとも思いますが、あくまで考察のネタとしての参考程度に捉えて頂けると大変助かります!


〇チャイニーズエイト

まず初めに以下の動画より陳思明選手・唐春暁選手を参考に見ていきます。

※参考動画「Tang Chunxiao 唐春 VS 思明 Chen Siming | 2023 Tianxi Chinese Billiards Championship 天玺中式台球冠军赛

図1:唐春暁選手①

チャイニーズエイト女子トップの一人、中国の「唐春暁(Tang Chunxiao)」選手です。
図1はインパクト位置でのフォーム
ぱっと見でも明確に分かるくらい、手首は外巻き(背屈方向)です。
コック方向については僅かに親指側へ向かっている(撓屈)感じでしょうか。

図2:唐春暁選手②※めちゃくちゃ画像荒いです・・・

図2はテイクバック位置になります。
引き続きここでも外巻きを維持しつつ、グリップの内側・小指方向に隙間が作られていく形になっていきます。
指の並びを見てみると、人差し指→小指と段々と外側(キューから離れるような)に開いている様子もあります。

次にコックはより親指側(撓屈)に強く傾いています。
これはグリップにおけるキューの支点が常に親指・人差し指側に維持されるからだろうと推測できます。(小指側に傾く尺屈が強くなると、相対的に人差し指より小指側が高くなってキューに近づき接触するから)

一方、手首(コック)のスウィングはこの時点で既に小指側に引き絞られているのではなく、肘の起動により0→前進へ運動する際に、グリップが慣性により瞬間置いて行かれる事で尺屈方向へ動く、という事なのかと思われます。

図3:唐春暁選手③

図3フィニッシュ位置になります。
最終的にコックは撓屈側に傾いています。(一見するともっと傾けられそうな感じですが、実際に自分の手首で動かしてみると前腕~小指側ラインが一直線になった位がおおむね撓屈の限界だと分かるかと思います)

唐選手、テイクバック時点でもかなり撓屈気味なので、実際にコックを使う量をかなり小さくしている、のではないでしょうか。(または逆に振り出しの反動で尺屈する量が大きくなりコックが効くのかも??)

今度は「チャイニーズエイトとポケットビリヤードの究極ハイブリッド」、同じく中国の「陳思明(Chen Siming)」選手。

図4:陳思明選手①

インパクト位置の様子。
唐春暁選手と比較すると、手首はほぼニュートラル(背屈・掌屈がほぼ無い)に見えます。
コックもほぼニュートラルでしょうか。

図5:陳思明選手②

そしてテイクバック位置。
先ほどの唐春暁選手と同じように、親指・人差し指支点でキューを支えつつ掌の隙間が大きく開いた形になっています。
特に陳思明選手は中指~小指をかなり伸ばし広げていて空間を作っています。おそらくこれは陳思明選手のテイクバックの振りの大きさに対して指が干渉しないようになっているのだと思われます。(図2の唐選手との肘角度で比較すると分かり易いかも)
また中指~小指とキューの位置関係を見ると、第1関節(先端側の関節)付近によっていることから、必然的に掌は外に開きキューと距離がある状態であるはずです。←第2・3関節に寄るとほぼ掌もキューと接する。

コックについても特にどちらに寄るでもなくほぼニュートラルです。


図6:陳思明選手③

最後にフィニッシュ位置
これでもほぼ撓屈方向のコック動作が発生した形だと思われます。

それと少し別視点なのですが、
陳選手は背屈(手の甲の外傾)は小さ目(ほぼニュートラルっぽい)ですが、フィニッシュのタイミングで少し背屈に逃がしている?動作があるように見える気もします。
もしもその動作があるとしたら、おそらくですがフィニッシュの握り込みで人差し指以外の指があまりキューと干渉しない形にしているのかな?という感じがします。

ここまでのまとめとして
唐選手・陳選手のグリップ動作から見る限りでは、チャイニーズエイト系では
「コックによる効かしについてはあまり大きく使ってはいない(大きく使える形にしていない?)」
のではと推測されます。

※より屈折角度が大きくとれる尺屈(小指側への傾き)が、テイクバック→インパクトの初動時に瞬間的に振れるだけと思われるため。撓屈(親指側への傾き)自体は角度が小さく且つ親指側が高くなるとフィニッシュでのキューの持ち上げ動作にも繋がるので、フォームが低くキューを顎下近くで抑える形では持ち上げ動作自体に勝手に制限が掛かる=コック(撓屈)も制限されるはずでもある。

ではありますが・・・陳選手についてはテイクバック時かなり握りも開いていて支点とも親指は添えているだけでほぼ人差し指1本、であれば手首周りの脱力が強ければ肘のスイングの反動で結構動かせている可能性もありそうな感じもしますが・・・(ストローク全体の流れで拡大・スロー化して映像見てみたいですね!)


〇スヌーカー

次はスヌーカー界のトップ「ロニー・オサリバン」選手を検証してみます。
※参考動画「147 Classics: Ronnie O'Sullivan | Snooker | Eurosport」


図7:Ronnie O'sullivan選手①

まずはストローク開始前のインパクト位置
「意外に!?」と思ったのですが・・・オサリバン選手、手首がまあまあ内巻き気味なんだなと!←色々なスタイルも取り入れていそうなので、若い頃からの変遷もあるのか見てみたい。

握りも結構しっかり全指を使っているようにも見える感じです。
コックはニュートラルでしょうか。


図8:Ronnie O’sullivan選手②

こちらはフィニッシュ位置
※現状テイクバック位置が確認できる画像が上手く見つからなくて検証には不足で申し訳ないです・・・もう少し色々な動画を掘ってみようと思っています・・・(オサリバン選手、黒いシャツの事が多くて、単純に腕と身体の境目も分かりにくい・・・)

フィニッシュも握りは深い感じに見えます(実際には強く握ってまではいないと思われますが)。←これについてはスヌーカーキューがポケットキューよりも短く、オサリバン選手も含め概ねの選手のグリップ位置はキュー尻一杯の位置が多いかと思います。
薬指や小指辺りに握った際に当たる物(キュー)が無い為、一見深く握った様な形に見えるのかもしれませんね。

コックについては前(撓屈)に行くより寧ろニュートラル~尺屈気味で終わっています。
恐らくですが、スヌーカーにおける「キューレベルが水平近くを保った」ストロークに対して、フィニッシュでコックが撓屈だと親指・人差し指側が高くなる=キュー尻がしゃくり上がり易い、ので必然的にこのようなフィニッシュ形に落ち着くのかもしれません。


図9:Ronnie O’sullivan選手③

ちょっと追加資料として。
これはオープニングブレイク時のフィニッシュ。
こちらではおそらく手首は外巻き(背屈)で、前腕回内により小指側も開いているようにも見えます。

スヌーカーはこのパターンが多いのかな?と予測していたのですが、天才オサリバン選手のストロークバリエーションが豊富?で色々なパターンが出てくるのかもしれません。


〇ポケットビリヤード

ちょっとスヌーカーの独自性を見いだせずにいましたが・・・思い出しました!ポケット界の教本にしてスヌーカーをバックボーンに持つこの御方・・・Allison Fisher(アリソン・フィッシャー)選手がいらっしゃるではありませんか!


図10:Allison Fisher選手①※どれも動画切り抜きで画質粗くてすみません・・・

ストローク始動前のインパクト位置
見る角度のせいもあるかとは思いますが・・・やはり少し外巻き(背屈)に見えます。
グリップも全指しっかりめに握っているように見えますね。

図11:Allison Fisher選手②

テイクバック位置
オサリバン選手同様、あまり手首についてはコック動作の変化が見られないように思われます。
陳思明選手ほど指を開放する感じでもなく、軽く開いてキューを人差し指支点にしつつ残りの指にも乗せているイメージでしょうか。(これは撞く球の状況によって違う形もあるかも・・・)


図12:Allison Fisher選手③

フィニッシュ位置
これもオサリバン選手に似ている感じで、コックはむしろ尺屈寄り・キューをしゃくり上げないように親指側が持ち上がらないようにして指全体をフラットにしつつキューが乗っているイメージに見えます。


こんどは生粋のポケット選手Albin Ouschan選手(ヨーロッパ選手なのでスヌーカー入っているかもですが・・・)


ーーー以降も執筆続くーーー



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