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長い目で見れば最後に勝つのはトヨタ。いつもの常勝パターン

日本人としては、日本で時価総額1位の企業、トヨタの未来がどのようになっていくのは非常に気になるところです。

数年前まで、トヨタは米国のテスラや中国のBYDなどといった企業と比べて電気自動車(EV)事業に遅れをとっていると懸念されてきました。

しかし、最近では大きく盛り上がっていたEVに対する期待が、世界的に鈍化し始めています。2023年の世界のEV販売台数は前年に比べて30%増えましたが、2022年の前年比60%増に比べると増加のペースは鈍化しています。

EVの分野で世界一の時価総額を持つテスラの株価はピークと比べて大きく下落し、中国では電気自動車の供給過剰が社会問題化しており、企業同士の競争が激化し過ぎて、新興のEVメーカーの経営破綻が増えてきています。

また、アップル社が自前のEV、通称「アップルカー」の開発を中止するという報道も出ており、盛り上がっていたEVブームが一旦収まりつつあるようです。

一旦EVブームが終わりつつある。

2022年頃の株式市場は、これから電気自動車がもの凄いスピードで普及していくと予想していました。実際、この予想の方向性としては間違ってなかったわけですが、電気自動車の普及のスピードは株式市場が予想した方、早くなかったのです。

2022年、2023年を見ると、世界的にはガゾリン車から電気自動車よりも、ガゾリン車からハイブリッド車へという流れの方が進みました。

トヨタは2023年、ハイブリッド車を前年比約27%増の250万台を販売しており、充電や電気自動車の価格の問題から、現時点での消費者は電気自動車よりもハイブリッド車を選んでいます。

ただ、長期的に見れば、世界の人々が電気自動車にシフトしていくという流れは変わらないため、トヨタも他社に少し遅れて、1450km走る電気自動車を2028年に発売する予定で、これは現在市場にある電気自動車よりも航続距離よりも非常に長く、EV市場に大きな影響を与えることが期待されています。

トヨタは電気自動車の遅れを批判されながらも、「我が道を行く」という戦略を取り、激しい電気自動車の競争を上手く避けながら少しずつ前進しているように見えます。

実際、一番売れているのはハイブリッド車。

自動車産業のアナリストである中西孝樹さんは、トヨタについて次のように述べています。

「正直言って、2026年に新しいBEVファクトリーという組織の中で作る次世代のEVが出るまでは、競争力はいまひとつかなと思います。その影響を最小限のしながら2026年の次世代型にいかに繋げていくか。そこで大きく挽回をして、いつもの常勝パータンに持っていきたいのだと思います。」

欧州では、高性能のハイブリッド車をつくるトヨタに対して「トヨタ潰し」が行われてきました。欧州の自動車企業は、ハイブリッドの技術ではトヨタに勝つことができないため、電気自動車を普及させるために有利な法律やルールを作ってきました。

EUでは、ガゾリン車やディーゼル車の新車販売を2035年に事実上禁止する方針が発表されています。特にEUは、20世紀は製造業を日本を中心とするアジアに奪われ、21世紀に入るとITのプラットホームを米国に奪われてしまい、自分たちの産業の強みを発揮していけば良いのかを悩んでいます。

日本車に対して、なかなか競争力を発揮できない欧州企業は、ルールを変えることによって、電気自動車を普及させ、自分たちの強みを発揮しようとしているのでしょう。

ルールを変えて、競争力を持というとするEU

ある意味、本当に電気自動車が環境に良いのかという部分は様々な議論があります。電気自動車は走っている時は、二酸化炭素を出しませんが、電気自動車の製造過程ではガゾリン車よりも二酸化炭素を出しています。

現在の電気自動車は何百キロのバッテリーを積んで走ります。そのバッテリーをつくるには膨大な量のレアメタルを使います。さらに電気自動車にはモーターが必要で、モーターをつくるにはレアアースを使い、そのレアアースをつくるには様々な場所で環境破壊が起こります。

従って、現時点で本当に電気自動車が環境に良いかという議論と、ビジネスで勝つかどうかという部分を分けて考える必要があるのでしょう。米国、中国、欧州は「脱酸素」というトレンドをビジネスのツールとして使うことで、様々な産業を支配しようとしている部分をしっかりと理解しておかなければなりません。

電気自動車が必ずしも二酸化炭素を減らすとは限らない。

トヨタは少しずつ電気自動車の開発を進めていますが、すべて電気自動車にするというのではなく「マルチパスウェイ」という考え方を持っています。

「マルチパスウェイ」とは、電気自動車一択に絞るのではなくハイブリッド、バッテリーEV、燃料電気車などすべてをやるという戦略です。

自動車と言っても、エネルギーの調達事情やインフラ設備の普及など、それぞれの地域によって事情が異なります。

トヨタの最大の強みは、どこまでいっても市場が求めているものを必要な時に、必要なだけつくるという「トヨタ生産方式」なのでしょう。

ある意味これは、本当の市場適応力なのかもしれません。


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