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【5】猫とがん患者

がん告知から考える時間が欲しくて家出して、たどり着いた場所で過ごす日々で猫たちのありように和んだ。
なんて美しくて可愛く誇り高いイキモノだろう。

昔、猫と暮らしていた。
14年ほど前に離婚した前夫と猫がかつて私の家族だった。その猫は前夫の実家の庭に眠っていると聞いた。私が離れてから前夫が迎えた新たな妻に子供が生まれた頃に猫は亡くなったのだという。
思えば、あの猫との時間に支えられて生きていた。あの子と離れたくなくて決心がつかなかった時期を過ごし、あの子の存在に後ろ髪を引かれながら1人で新しい生活に踏み切った。
猫族を目の前にすると、どこかにあの猫を想う。

人間と同じように猫に話しかける私に、身を寄せた場所の2人は猫たちと私の反応を楽しんでくれていた。

私も、猫のようになれたらいいなぁ。

いいんだ、嫌なことは嫌で。
好きなことは好きで。
わがままは、我(われ)のまま。
好きに生きよう。
できるだけ自分の好きに生きてみよう。

体を少しだけくっつける猫の温かさが嬉しくて勇気が湧いてくる。

そろそろ、自分の住まいに戻ってもいいんじゃないだろうか。
自分の選択を家族に医師に伝えようと気力が生まれはじめていた。




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