見出し画像

【無料公開】台湾で食べた① - 中華圏のリハビリに。

今日から台湾旅行記(5泊6日)を始めます。

僕がnoteを始めたのは、2020年1月。その後すぐにコロナが世界を席巻し、海外旅行どころではなくなったので、これまでnoteで海外の食べ歩きについて書く機会もありませんでしたが、ブログ時代を思い出して書いてみます。

+++++

我が家にとって4年ぶりの海外旅行となった今回、旅行先はすんなりと台北に決まった。目的は「中華圏のリハビリ」だ。横浜中華街の近くに住んではいるけれど、どこまで行ってもあそこは日本。久々に中国語が飛び交う世界に身を浸し、その土地ならではの中華料理をむさぼり喰いたかったのだ。

心情としては長年住んでいた大陸に行きたかったけれど、ビザの難易度や航空券の高さを考えると、腰が引けた。その点、台北ならばお手軽だ。また、僕も連れも何度も訪ねたことがある土地でもあるので、たとえ子連れで行ってもそれなりに食べ歩きを遂行できるはず、という安心感もあった(我が家は、原則として「旅=食べ歩き」なのです)。

まず連れと話し合ったのは、「台北で食べたいものはなにか」ということだ。僕らの狙いはもちろん、「その土地でしか食べられないもの」「その土地でこそ食べるべきもの」になる。

協議の結果は、「台湾料理と客家料理」になった。福建料理をベースとして独自の変化を遂げた台湾料理は、台湾ならではのものだ。客家料理も、福建・広東・江西あたりの客家料理とはまた違ったおもむきがある。この2つを重点的に攻めることで方針は決まった。

なお、ガイドブックやネット情報を見ると、東北料理、北京料理、上海料理、浙江料理、雲南料理など中国の地方料理の人気店も紹介されていたが、それらは全てスルーすることにした。なぜか。

この記事に店情報はありませんし、今後10本以上台湾編が公開される予定ですので、この記事の単品購入よりメンバーシップ加入をご検討ください。

僕の経験から言うと、台湾の地方料理は台湾化されていて、その地方の料理とは異なるものだからだ。

余談になるが、数十年前は「台湾にこそ本当の地方料理が残っている」という主張をよく見かけた。理屈としては、国共内戦で国民党側についていた各地の優秀な料理人が台湾へ移住して味を伝えた一方、大陸ではその後の大躍進政策や文革のせいで料理文化が消え去ったから、というものだ。

多分、その理屈が正しかった時代もあったのだろう。でも、料理というものは、良くも悪くもその土地の影響を必ず受けるものだ。最初に伝わった地方料理は各地方の味そのものだったとしても、時間の経過と共に必ず変わる。

国共内戦から80年近くが経過した今、台湾の地方料理はすでに台湾化していると僕は思う。ひと言でいえば、台湾料理に引きずられて、どの地方料理もどことなくみんな甘い。

ここで、「台湾料理は甘い」という点に説明が必要かもしれない。日本だと「台湾料理はあっさり」と紹介されることが多いからだ。

でも、食べればわかる。そりゃ刺激が強烈な四川料理や湖南料理に比べたら「あっさり」かもしれないが、塩や醤油をキリっと効かせる北京料理や東北料理よりは明らかに甘い。あっさりと言うなら、広東料理の方が遥かにあっさりだ。さすがに大陸一甘い上海料理よりは甘くないけれど、台湾料理の基調には確実に甘さがある。

ずいぶん前に、「台湾料理の甘さはなに由来なんだろう?」と思ったことがある。上海料理の砂糖の甘さとはまた毛色が違うからだ。

その理由のひとつは、醤油にあるようだ。台湾の醤油は、糖分(甘草や甘味料)を添加している製品が多い。また、醤油の粘度を高めた醤油膏(とろみ醤油)という調味料もあって、これはさらに甘みが強い。味付けのベースとなる醤油が甘いのなら、料理が甘くなるのも納得だ。

面白いのは、台湾の中でも北部より南部の方が甘口の製品を好むのだそうだ。日本でも、南方の九州で甘い醤油が好まれるのと同じだ。そもそも人間の身体は暑いと糖分を欲するそうだから、自然な話ではある。

「あの甘さも土地の味だからね。久々に楽しもう」
「そうだね。なんだかんだで私は十数年ぶりだし」

そう、僕が「台湾の料理は甘い」と言うのは、それが悪いという意味では全くなく、単なる事実であり、それはそれとして楽しむ用意があるのだ。ただ、その甘さを(本来は甘くない)地方料理という形で経験したいとは思わないということである。

さて、話を「台北で何を食べたいか」に戻すと、台湾名物の小吃は「まあ、余裕があれば食べようかね」という位置に落ち着いた。

過去の食べ歩きの経験から、僕は「都会の小吃に本当に美味しいものは少ない(現代人の嗜好に合わせて、味が濃すぎたり甘すぎたりする例が多い)」と思っていて、それは小吃天国の台北においてもあまり変わらない。

「まあ、子供の経験にはなるから、適度に食べよう」
「そうだね。あ、でも、甜品(甘いもの)は絶対食べる!台湾の豆花や芋圓は『台湾にしかないもの』だし、美味しいよ!」
「わかったわかった、確かにそうだ」

ま、こんなことを言いつつ、結果としては懐かしくてあれこれ食べてしまったのだけれど(笑)。

前置きが長くなりすぎたので、今日はこのへんで。次回から本編です!

出発前の羽田での一杯。ウェーイ!

<2023年7月>

励ましの「スキ」を頂けると、次の記事を書く原動力になります!

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 300

よろしければサポートをお願いします!頂いたサポートは食材と酒徒のやる気に姿を変え、新たなレシピとなって皆さまに還元される寸法です。