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でこぼこを育む 〜発達障害のこども②治療と支援〜

こんばんは!いつも読んでくださりありがとうございます。
コロナ感染が急増していますが、みなさんお変わりありませんか。医療従事者の皆さんいつもありがとうございます。

さて、前回から発達障害についてお話していますが、今回は治療や支援についてお話していきたいと思います。

発達障害の治療・支援について

 前回お話しましたが、発達障害は本人が「生活する上で困り感がある」、「特性のため(大多数の人ができることに)困難さがある」場合などに治療対象となります。そもそも、発達障害はそれ自体が病気というわけではないですので、根本治療というものはありません。(人それぞれが持つ特性は個性でもあります。)
 ですので、治療の目的は困難さを軽減すること、困難さなどからくる二次障害(不安・抑うつなどの感情、うつ病、自傷、不眠など)を防ぐこと、本人の成長発達を促すこと、活きていく上で必要なスキルの習得を促すことなどになります。
 

薬による治療

 薬による治療はADHDに多いです。ADHDでは脳内の伝達物質であるドパミンやノルアドレナリンが不足するため、その働きを強めたり伝達を改善する様なお薬を内服することで、落ち着きの無さや衝動性などの症状を改善し、学習に集中しやすくしたり、落ち着いて生活しやすくしたりします。
 主流なお薬として、コンサータ(メチルフェニデート)・ストラテラ(アトモキセチン)・インチュニブ(グアンファシン)等があり、ビバンセ(リスデキサンフェタミン)という新薬もでました。

 また、ADHDに関わらず、本人の困り感や症状に合わせて、不眠・不安感・抑うつ感・気分の浮き沈み・イライラ感などの付随する症状に合わせてそれぞれに対応するお薬を組み合わせて使う場合もあります。
 お薬はその子の状況に合わせて幼児さんなどの幼いときから使用する場合もありますが、服薬による治療はあくまで、そのときの困難さを和らげるために活用するもので、根本治療というものではありません。

環境調整による支援

 前回お話したように、発達障害ではその特性から様々な生活への支障や困難がでるため、特性に合わせて環境を設定することが大切になってきます。
 ADHDでは、不注意さなどへの対応として、「(集中したいときには)気が散りにくいように周囲の刺激を排除する」「整理整頓して目につくものを減らす」「(集中力が続かないので)話をするときは短く伝える」「(忘れ物を減らすため)メモや手順を張り出す」などの工夫します。

 ASDでは、過敏性への対応として「(音に敏感な場合には)イヤーカフを使用する」「(光に敏感な場合には)照明器具を工夫する」「(触感の過敏には)洋服の素材を工夫する」などの対応をします。
 また、伝え方などについても「(先の見通しが立たないと不安になりやすいため)予め今後の予定を伝えたり、スケジュール表を張り出す」「(コミュニケーションを補足するために)イラストなども用いてで具体的に視覚的にわかりやすく提示する」などの工夫をします。

LDでは、読み書きの困難さを補うために、「(ノートに書字する代わりに、)PCやタブレットなどの端末を用いる」「あらかじめ板書したノートやプリントのコピーを提供してもらっておく」「宿題のやり方や量を配慮してもらう」などの工夫をします。(日本ではこのあたりは遅れており、学校の理解と連携が大切になってきます)

ソーシャルスキルトレーニング(SST)

 ソーシャルスキルトレーニングは「社会生活技能訓練」などと言われるもので、本人が日常生活や社会生活を送る上で役立つ、生活能力やコミュニケーション能力や社会性などを上げるためのトレーニングの総称です。(略してSSTとよばれることが多いです)
 SSTは本人が必要とするもの(伸ばす必要のある部分)に合わせて様々なものがあり、行政や病院・療育施設・放課後等デイサービス・NPO等の場所で受けることができます。発達障害の場合は、主にコミュニケーション方法、衝動性や感情のコントロール術、困った行動への対応方法などを学ぶことが多いです。

ペアレント・トレーニング

 本人ではなく、保護者のためのプログラムとしてペアレント・トレーニング(略してペアトレと呼ぶことが多い)というものがあります。ペアトレは保護者に、子どもへの理解を深め、子どもへの具体的な関わり方を学んでもらうことで、子ども本人の行動改善を促したり、家族間の良い関係性を気づいてもらい、日常生活をより円滑に送ることができるようにすることを目的にしたプログラムです。内容としては褒め方や叱り方、行動の促し方などがあり、行政や病院・NPO団体などで学ぶことができます。
 元々は発達障害や知的障害のお子さんをもつ保護者の方に向けて開発されたものですが、それ以外にも、子育てに悩む親御さんや、虐待や不適切養育・養育力の低い家庭などで家族を再統合する際などにも用いられています。私個人としては、そういった家庭だけでなく、子育て世代の方には広くたくさんの方に学んでほしい有意義な内容だと思います。(褒め方・叱り方がわからないなどの不安を抱える方はかなりいる印象ですし、親はみんなはじめは初心者ですから。)

最後に

 さて、治療と支援について、大まかにお伝えしましたが、いかがでしょうか。
 大きな流れとしては、「(困難さに応じて)薬なども用いながらその困難さを軽減し、環境調整で本人が取り組みやすい状況を作りながら、SSTなどを用いたり本人にあった課題を練習していくことで、本人の能力を上限に向けて伸ばしていく」というような流れになるかと思います。
 みんな生まれ持った能力に差はありますから、そこは検査などで把握し認めて受け入れることも大切です。その能力を超えて無理をさせることはできません。(そこが受け入れられずに過度の期待や無理をさせてしまうケースも多々あります。)ですが、生まれ持ったその能力をちゃんと活かすことができるかは環境などにもよりますから、良いところも足りないところもできる限り伸ばしていけるように、そして本人にまかないきれないところには必要な手を当てていく、という支援をしていきます。
 これは発達障害に限らず、どの子にも共通することだと思います。そういう意味では、「発達障害だから、発達障害ではないから」という区分はあまり関係がなく、大切なのはその子自身をみつめて支援していくということかと思います。

SSTやペアトレなどについては、今後また機会を見て紹介したいと思います。
下にペアトレ関連リンク2つはっておきます。また、最近では書籍などもたくさん出ているので、ご興味のある方は御覧ください。(ちゃんと活かしたい方は実際のトレーニングを受けることをおすすめします)

では、さいごまでありがとうございました⭐

「ペアトレーニング実践ガイドブック」厚生労働省

*発達障害向けの学習支援・ペアトレなど NPO LITALICOジュニア 

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