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THEDDO./スッド、はじまりに寄せて


はじまりに

1. 長い冬

2024年、大変な年明けになってしまい、被災された方々へ哀悼の意を表するとともに、1日も早い回復を願っております。

2022年末に父が亡くなり、120年続いた私の鹿児島の実家が空き家になってしまいました。(そのあと整理していて、なんと1500年代からご先祖がこの地に住んでいたことがわかった!)

私は現在東京に住んでいて、その家は自分が生まれてもいない、育ってもいない古い家。けれど夏休みごとに帰省しては幼心に自然と農とのつながりや、いまの自分の生き方・働き方をかたちづくってくれた大切な場所。父を失った悲しみが癒えるまもなく、行政や相続手続きは形式的かつ迅速に進んでいくものの、自分の心だけが取り残されたような気持ちでした。家だけが家族が暮らし存在した軌跡ではないのに、それが全てなくなってしまうような喪失感。

4代前のご先祖が手づくりし時代とともに変化してきた家

2. 春がきた

そんな時、鹿児島の仲間たちが「庭の草刈りしといたよ〜」「みんなで家を見に来てみたー!」と、勝手に家に通い始めてくれて、ついには刈った雑草を庭で野焼きして、楽しそうにしているではありませんか(笑)

それが2023年の春頃で、私はその風景を見て、とても心救われました。
そうか、自分ひとりで背負い込まなくても、地域みんなでなんとかしていくこともできるかも。出身者や移住者の仲間たちも基本的には賃貸住まいで、場所を借りて暮らしているので、みんなが寄り合って自由にできる場所があっても良いのではないか。実際にこれから多拠点居住にチャレンジする仲間がいるので、みんなが少しずつ住み通うような家ってできないかな、などと話し始めました。

そしてもうひとつ、地域に空き家が1軒あることの心理的影響も考えました。あそこの誰々が亡くなって、今は空き家。という話がこれから地域にはどんどん増えていくかもしれません。そんな時に、ちょっと何をやっているか得体が知れないかもしれないけど(笑)、若者たちが楽しそうに通ってワイワイやっていたら、そしてそれが少しでも地域のためになることだったら。空き家がただ朽ち果てて廃屋になっていくさまを見るよりも、きっと地域の人たちも明るい気持ちになれるのかもしれません。

「ひとり1空き家」時代に

1. 縦割り化された情報と制度

なんとか家のことをできるところまでやろうと考えた私が空き家継承者となり最初につまづいたポイントは、現状の相談窓口や制度では、まず「空き家の使用用途」が決まっていないことには、相談やサポートすら受けられないということ。(注:自治体や地域によるかも知れません)
人口減少や担い手不足、ただでさえ地域にはプレイヤーが不足しています。しかし空き家の利活用は、あらゆる要素(家の状態・予算・人手・継承者の居場所等々)を加味して総合的かつ中長期的に判断していかなければなりませんが、まず最初に決めなければいけないのは「空き家の用途」(居宅・店舗・民泊など)で、これはもう決められるはずがないとしょっぱなから挫折しました。(笑)

2. 設計図のない場づくり

そして第二に、設計図から躯体、壁面、天井など家づくりを進めていく通常の家づくりと比較して、空き家は「すでにそこにある」そして「日々変化している(老朽化)」。それがもうひとつの難しい部分だと感じました。自分たちの用途や滞在のあり方によって設計「できない」。ただ一方で、これまで都会で暮らしてきた自分にはとても魅力的に感じる「余白」も、地域の家にはありました。自由にできる野山や空き地(それが九州の夏場にはとても厄介なことになるのはまた別の話)、そして長いこと賃貸で暮らしてきた自分にとって初めて自由にすることができるマイホーム(?)。その場所や家を自由にできるということが、自分にとってはとても新鮮で、都会で暮らしてきたからこそ魅力を感じているのかも知れません。
設計図がなく、さまざまな制約とともに設計していかなければならないのだとしたら・・セルフビルド手法を取り入れていきたいと、現在有識者の方からさまざまなアドバイスをいただいています。これもまた別の機会にご紹介します。

おわりに

私は元々広告会社に勤務していましたが、地域の仕事をしたい!と会社を辞めてもうすぐ10年。これまでたくさんの素晴らしい地域や自治体、事業者さんと出会い素敵な仕事をさせていただきました。世界を旅したバックパッカーの経験もありましたが、いまはコロナ禍が去っても、海外にいくよりも多様で美しい日本の地域をもっと探索したい。そんな日本のローカルマニア。

これまで基本的に委託事業の仕事が多く、自分で事業をしなければいけない立場になるのが今回が初めてかもしれず、ドキドキもしていますがワクワクもしています。自分の集大成のような、しかしこれまでで一番「解のないテーマ」に取り組むことになるのですが、自分でも不思議なぐらいワクワクしています。

「空き家から地域課題を解決する。」とは、尊敬してやまない大先輩で、クリエイティブ・ディレクターの田中淳一さんが私たちのために書いてくださった言葉で、我ながら大それたテーマだなぁと思うのですが(笑)、難しいテーマだからこそ、地域や国内外の皆さんと知恵や意見をかき混ぜながら、楽しくやっていきたいと思っています。

今後も国内外の素晴らしい方々の記事を皮切りに、さまざまな取り組みを進めていきますので是非お楽しみに!

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