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遠景としての家族(井戸川射子詩集『遠景』)

井戸川射子の詩集『遠景』(2022年、思潮社)は、タイトルのとおり、遠くから何かを眺めているような詩集であった。 何を眺めるのか。この詩集で読者が眺めるもののひとつに、私の父や母、幼い私や私の子などがある。

父親の背骨のように
隆起、カーブし
進む方向にうねっていく
その山の背を
ぼんやりと歩いていた
本当に背骨
なのかもしれない
土は肉なので
足が踏めば
こそげ落ちていった
その茶色い中腹で妹は
お姉ちゃんを抱きしめる

(「なだれ混じって添う高原」より抜粋)

井戸川射子詩集『遠景』p52-53

一般的に文学作品において、家族を描写するとき、過度に美化したり、もしくは醜悪に書くことが多いように思うが、井戸川の場合は、おおむね中立的に、それこそ遠くから不特定の親子連れを眺めるかのように描写をする。その描写は読者の目線からの認識により近く、その意味でリアリティーのある詩集だった。

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