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読書記録〜あの光〜

先日、香月夕花さんの「あの光」を読了しました。まずはこの小説の内容紹介を引用させて頂きます。

ハウスクリーニングサービスで働く高岡紅は、丁寧な仕事と気配りで依頼人からリピート指名が入るほど信頼を得ていた。だが、入社当時からさほど変わらぬ待遇や問題の多い部下に腐心する日々に疑問を抱いていた。そんな折、10代から水商売で身を立てた母・奈津子から独立を促され起業を決意する。仕事は軌道に乗り、リピート客である船場薫の強い勧めで新事業「開運お掃除サービス」を立ち上げる。薫の仕掛けで紅のブログがインフルエンサーの目に留まり、書籍化も決定。初セミナーも大成功を納め、カリスマ指導者として一躍時の人となった。そんなある日、紅のメソッドを曲解した一部の会員の行動がSNSで批判され大炎上。窮地に追い込まれた紅は起死回生を試みるのだが……。承認欲求と自己啓発の闇を撃つ問題作。

集英社 文芸ステーションの内容紹介より

誰しも弱っている時に何かにすがり、頼りたくなります。また迷い悩んでいる時に導いてもらえるものがあればそこに惹かれていくのではないでしょうか。必ずしもそのこと全てを否定するつもりはありません。
例えば私は子どもの頃に入院生活が長かったのですが、今よりもセキュリティが低かった小児科病棟には怪しげな勧誘を目的とした人が出入りすることもありました。病気で苦しんでいる子どもの親にとっては「子どもが治るなら何でもしたい」と思う気持ちは痛いほどわかります。

たった一度の偶然でも自分が望んだ結果になれば「きっとこのおかげだ」と思うし、SNSで他の人も同じように書いていれば「自分だけじゃない」と信憑性が高まり、情報はどんどん拡散されていきます。
そこで自分が納得して周りに迷惑をかけなければ問題はないけれど、大体そこには強引な勧誘や金銭問題が絡んできます。また集団組織になってくるとそこから抜け出しにくい心理状況があり、自分の中に違和感が生まれてもそのまま依存してしまいます。正しいかどうかさえどうでもよく思えて、小さな偶然や嘘を見て見ぬふりをする怖さがあります。依存から抜け出せない理由の一つには「時間もお金も投資してきたからそれを否定することは今までの自分を否定することになる」という葛藤も影響していると思います。

何かを信じることで自分が明るく前向きに生きられるのであれば、それもその人の生き方の一つです。でもたった一つのことや一人のことだけを信じて周りが見えなくなったり依存しすぎることは怖いことだと思います。
信じて依存していたものが何らかの理由で崩れ去った時の反動があまりに大きすぎるからです。

今はネットで一つ調べればそれに関する情報が関連づいて出てきます。
初めは自分の興味のあるものや知りたいことがどんどん出てくることに嬉しさもありましたが、そのうちに偏った情報だけを見て知ることに不安を感じてきました。自分が好きなことや自分の意見と同じものだけに囲まれて居心地が良いだけでは新しい発見は何も生まれません。
これからはもう少し広い視野で情報を得て学んでいきたいなと思います。

最後に。この本を通して、嘘をつくことは悪であるけれど「どうして嘘をつくのか」「どうして嘘であっても希望を信じてついていく人がいるのか」ということも考えさせられました。


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