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かかりつけの小児科の小さなおばあちゃん先生の瞳に見守られて 〜その1〜

「せんせい」と「先生」

わたしは看護師になってもう18年くらいになる。
だからいろんな医師に会ってきた。

看護師で医師とは距離が近いので、お医者さまって感じではない。
先生って呼んでいる。

先生って感じで書くと、学校の先生のような教えをこう、みたいな感じだけど、どちらかというとひらがなで「せんせい」と書いてもっと近しい関係を表したい距離感ではある。

「せんせい」の記録の間違いにすぐさま「ちょっとせんせい、ここ」ってツッコミを入れられる「せんせい」もいれば
まさに「せんせい様」で、「あのー、せんせい、ちょっと、ここの表記が…。」とみなまで言うな、的に気を遣うせんせいもいる。

でも、どんなに威厳があっても、医師はわたしの中では「先生」ではない、「せんせい」だ。
どんなに厳しく見えるせんせいでも、一緒にいると愛着も湧く。一緒に仕事をすればいいところも悪いところもわかる。仕事量を同情できるくらいに距離は近い。

せんせいたちはその科別にキャラも違う。
外科系のせんせいと内科系のせんせいでは性格が違う。

今みたいに新人に怒るなって言う教育はない時代に看護師になったわたしは若い頃はガツンとせんせいに怒られることも多かった。

特に外科系のせんせいはズバッとくる。
内科系はネチッとくる。

でも一生懸命働いているせんせい達、程度の差はあれど、性格の差はあれど、腕の差はあれど、出会ったせんせい達はほとんどみんないいせんせいだった。せんせい達の苦労がわかるくらい近くにいて働いているから。文句もあるけど、リスペクトもある。

せんせいは先生ではない。

だけど、子どもを持つ親になると、せんせいは途端に「先生」になった。

子どもが産まれて小児科に通うようになった。
市の保健センターでどこの小児科がいいですかね、と聞くと、先生のタイプを交えて小児科をいくつか紹介してくれた。

その中でわたしが選んでみたのは「優しくてゆっくり話を聞いてくれるタイプの新米ママにおすすめのお医者さん」がいる小児科クリニックだった。

初めてそのクリニックに行ったのは、確か、子どもが産まれて2か月健診の頃。

外来で小さなわが子との外出にもまだドキドキで慣れない中、初めての小児科クリニックに不安を抱きながら、その門をたたいたのが最初だったと記憶している。

クリニックの受付さんにはきつい物言いはされないか、看護師はこわくないか、先生にはバカにされないかしら。いろんなことが頭をよぎる。

クリニックに着くと、特段にこやかではないが、無愛想でもない程度の受付の対応をうけ、言われたとおりに、あたふたと慣れないなりに健診のために子どもの肌着を脱がせて用意したりした。

今度はとても優しい中年の看護師さんによばれ、診察室にとおされると、先生の横に座った。

先生は女医さんで小さかった。背中が丸くなり、髪はほとんど白髪で、かけた眼鏡は少し下がり気味。わたしの方に向いて話す時は、下がった眼鏡の上の隙間からこちらを見て話した。
小さな瞳が私をみて、穏やかな口調で問いかける。

先生こ隣で介助する中年の看護師さんが、お子さんの身体を抱っこしててくださいなど、指示をくれ、手際よく診察が行われていく。

看護師さんも先生も子どもに優しく話しかけてくれ、聴診器で胸の音を聴いたり、お腹を触ったりした。

当時何をしたかはほとんど覚えてないが、いつも先生は穏やかで優しかった。

思っていた不安は払拭された。今もその小児科クリニックに通い続けているのが、あの時の不安が現実にならなかったことを証明している。

わたしにとってこの小児科のクリニックの先生はまさに「先生」だった。

育児の辛いきもちを聞いてくれ、すくいあげ、育児の術を助言し、助けてくれたのはいつも先生だった。

長くなってきたので、この続きはまた、その2へつづく。






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