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福岡でフィールドワークをしたら北海道が知りたくなった

普段はSI企業でサービスデザインに従事しています。利用者がサービスを通じて得る体験を明らかにするUXリサーチは、デザインに欠かせないプロセスであり、フィールドワークはその手法の一つです。私はデザインプロセスの中でも特にUXリサーチに興味があり、福岡県糸島市にある本屋アルゼンチンで開催された裏・糸島フィールドワークに参加しました。
本稿では、自分自身の振り返りを目的に、イベントの様子とフィールドワークを通じて得た気づきを綴ります。


フィールドワークに参加した理由

本イベントは、運営メンバーの一人であり、UXリサーチの日本発のカンファレンスRESEARCH Conferenceの発起人でもある松薗さんを通じて知りました。最初はUXリサーチ関連のイベントかと思いきや、運営メンバーに名を連ねるのは、合同会社メッシュワーク比嘉さん水上さん、le Tonneauの室越さん、KESIKIの牛丸さん、そして松薗さん。私がPodcastやXで追いかけている方々が「ソフトな人類学」というキーワードで一堂に介しているではありませんか!こんな夢のようなイベントに参加しない理由が見当たらない!ということで、即日参加を決めました。

不安募るフィールドワーク前夜

意気揚々と参加表明したのも束の間、イベントの大らかさ?に不安が募ってきました。

  • 本屋アルゼンチン周辺でフィールドワークする:初めての土地で!

  • フィールドワークはペアで実施する:初めましての方と!

  • 3時間で最低一人聞き書きする:短い時間で知らない人に話を聞く!

  • フィールドワークの様子をドキュメントにまとめて共有する:どんな話が聞けるか分からないけど、アウトプットすることは決まってる!

初めてづくしとは言え、どこに行くか当たりをつけねば…
ペアを組むことになったMさんと糸島について調べたところ、いくつか気になる事実が分かりました。私たちは、糸島の食と神社を取り巻く歴史や文化をテーマにフィールドワークすることにしました。

  • 福岡都市圏において糸島市の農業産出額は突出している

  • 本屋アルゼンチンがある二丈西部地区は白山神社を中心に福井神楽や福吉神幸祭等の伝統文化が継承されている

糸島についての事前リサーチ

偶然に身を委ねるフィールドワーク当日

当日はお天気に恵まれ、茉莉花の香り漂う気持ちのいい一日でした。
挨拶もそこそこにいきなりフィールドに放たれて戸惑いつつ、海岸沿いや直売所でウォームアップ後、白山神社へ向かいました。

白山神社

白山神社は1141年に築造され、ククリヒメノミコト、イザナギノミコト、イザナミノミコトをお祀する由緒ある神社で、縁結びでも知られています。イザナギノミコトが桃を鬼に投げることで、黄泉の国から戻ることができたことから、厄割桃による厄除けも行われていました。

厄割桃に息を吹き入れ、岩に投げつけて割ることで厄払いします

白山神社では、他の神社から譲り受けた子ども神輿をボランティアで修繕している地元のおじさんと出会いました。タバコ休憩をされていたので話しかけてみたところ、お神輿の修繕をきっかけに、神社を中心とした地域の人々の繋がりや、人々との繋がりの中におじさんが見出している楽しみや喜びについてお話を伺うことができました。

修繕中の子ども神輿

当初計画では、直売所と神社をいくつか巡る予定でしたが、白山神社だけでタイムオーバー。一人しか聞き書きできませんでしたが、おじさんとじっくり話をすることができ、私たちは満足して3時間のフィールドワークを終えました。

これで良かった?フィールドワーク翌日

フィールドワークの翌日、どこに行って、誰とどんな話をし、どんな気づきを得たのか共有し合いました。私たちは白山神社で出会ったおじさんとの会話を通じて得られた気づきを共有しました。

  • 家族以外の人々との関係性が当たり前に存在している

  • 手元にあるもので何でも作り出せる知恵がある

  • モノやコトが循環することで人と人の繋がりが保たれている

フィールドワークの共有が行われた本屋アルゼンチンの玄関

フィールドワークの共有を終え、不意に「これで良かったのかな?」という疑問が湧き上がってきました。
最低一人聞き書きをする、というミッションがあったからこそ、ちょっとした差異に敏感になり、些細な違和感も流すことなく話を聞くことができたのは事実です。ですが、フィールドワークと言わずとも、初めて訪れる場所は色々気になるし、色々知りたくなります。そんな状況で白山神社のおじさんと会話したことは、ごく自然なことのように思えたのです。あの日、Mさんと一緒に、あの場所を訪れたからこその出会いではありました。でも「これで良かったのかな?」というモヤモヤした気持ちを拭えきれぬまま、糸島を後にすることになりました。

フィールドワークの影響は突然に

ゴールデンウィークだったので、すぐ東京には戻らず、実家のある北海道に飛びました。
フィールドワークの影響は、飛行機を降りた直後に突然やってきました。あれ?北海道の空の色ってこんなに薄かったっけ?北海道の風景を初めて見たような感覚になったのです。

北海道の空と銀杏並木

フィールドワークの事前リサーチの際、魏志倭人伝や古事記に登場する糸島のことをうらやましく思っていました。北海道には歴史がないから…と。でも、それは果たして本当なのだろうか?私が知らないだけでは?と思い始め、急に北海道のことが知りたくなり、数十年振りに北海道博物館を訪れました。
北海道が中心になっている地図を眺め、北海道が北と南の文化の影響を受け、独自の文化を発展させてきたことが分かりました。

北海道で交わる北と南の文化

結局、フィールドワークとは何なのか?

正直、まだつかめていません…
ですが、状況に身を委ねつつも、積極的に関わりに行く姿勢は楽しめたと思います。そして、フィールドワークによって新たな問いが生まれ、問いが深まる感覚もおぼろげながら感じることができました。
これを人類学のエッセンスと呼んでいいものか分からないし、おぼろげな感覚を何かに役立てることができるのか分かりませんが…

面白かったので「ソフトな人類学」を続けてみたいと思います!

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