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【選挙ウォッチャー】 那覇市長選2022・分析レポート。

 10月16日告示、10月23日投票で、沖縄県の那覇市長選が行われました。立候補したのは、英雄的な沖縄県知事として知られる故・翁長雄志さんの息子である翁長雄治さんと、翁長雄志さんの後継者となった現職の那覇市長・城間幹子さんが後継指名し、自民・公明推薦の知念覚さんの2人。参政党が独自に候補者を擁立する動きを見せましたが、知念覚さんと政策協定を結ぶことで候補者を下ろしましたので、一騎打ちとなっています。
 実はこの選挙、沖縄県知事選ほど注目されていませんが、沖縄の情勢に大きな影響を与えかねない非常に重要な選挙となっていますので、クラウドファンディングが間に合わず、無酸素状態で非常に苦しい中ですが、取材に行ってまいりました。

知念 覚  59 新 自民・公明推薦
翁長 雄治 35 新 立憲・共産・れいわ・社民・社大推薦

 知念覚さんは、那覇市の副市長だった人物ですが、副市長なんて誰も知らないので、知名度は高くありません。一方、翁長雄治さんは、少なくとも偉大なる父・翁長雄志さんのことは誰もが知るところであり、前回の沖縄県議選では多大なる期待が寄せられ、トップ当選を果たしています。
 これだけを聞くと、「それなら翁長雄治さんが勝つんじゃない?」と思うかもしれませんが、そう簡単には決まらないのが「沖縄」です。翁長雄治さんは「オール沖縄」の候補として玉城デニー知事が選対本部長を務めていますが、知念覚さんは現職の城間幹子市長が後継指名をしています。「オール沖縄」だったはずの城間幹子さんの寝返り。なぜ翁長雄治さんではなく、あえて知念覚さんを後継指名したのか。このあたりの複雑な事情は、簡単には説明できません。
 とにかく「オール沖縄」とされたものが分裂し、知念覚さんの陣営は何を言っているかと言うと「チーム沖縄」です。「オール」「チーム」ができてしまい、何が何だかグルグルしています。


■ 那覇市が抱える米軍施設の問題

現在は、那覇市内にある「那覇軍港」は浦添市の綺麗な海に移設予定である

 沖縄県が抱える米軍施設の問題は、「辺野古基地」だけではありません。先日も、辺野古基地問題に触れた西村博之さんが、「ボギーてどこん」レベルの下級ネトウヨだったことがバレて大炎上しましたが、あくまで「辺野古基地」は象徴的な問題であって、実は、県内のアチコチに数えきれないほどの米軍関連の問題があります。
 今回の選挙でも、翁長雄治さんの陣営は「辺野古基地を作らせない!」とアピールしていましたが、辺野古基地があるのは沖縄県北部の名護市。沖縄県全体で考えれば辺野古基地は重要な問題ですが、こと「那覇市」ということで考えた場合、那覇市にできることはほとんどありません。自民・公明推薦の候補が勝つことで、下級ネトウヨたちが「那覇市でも辺野古基地賛成派の候補が勝ったぞ!」と勃起しながらドヤることがあっても、現実には、それより重要な問題が足元に転がっており、那覇市民にとっては、那覇軍港の移設問題や那覇空港の軍民共用問題の方が、よっぽど市民の生活に直接的な影響があります。
 現在、ゴタゴタしながらも進められようとしているのが、那覇軍港の浦添移転です。浦添市の松本哲治市長は、もともと「移転反対」を公約に掲げて当選した人物ですが、当選するや、一転して「移転賛成」に寝返り。現在は保守系議員で構成する「チーム沖縄」の中心的メンバーです。今回、「チーム沖縄」が当選したので、この那覇軍港の移設問題は、より推進されることになるのではないかと考えています。
 那覇軍港の問題を「普天間基地」に例えるならば、那覇市は普天間基地のある宜野湾市と同じです。「移転して軍港がなくなる側」なので、両候補とも「なくなった方が良い」と考えます。しかし、単純になくなるだけなら大歓迎かもしれませんが、あくまで「移設」なので、どこかに軍港はできることになります。それが浦添市にある、ご覧の海です。

この綺麗な浦添市の海がコンクリートで塗り固められる計画になっている

 那覇軍港の全面返還が決まったのは1974年ですが、今も返還は実現しておらず、浦添市に新たな軍港を建設し、移設する計画になっています。構図としては、とても「辺野古基地」と似ているのに、この計画には、沖縄を代表するデマゴークで、いまや西村博之さんに引用リツイートされる存在となった下級ネトウヨの「ボギーてどこん」らが反対しています。
 現実としては、浦添市への移転を進める立場が「チーム沖縄」ということになりますので、知念覚さんが市長になった方が軍港移設は推進されることになる可能性は高いですが、「ボギーてどこん」のような低級ネトウヨたちは、政策ではなく、「オール沖縄が嫌い」というだけで行動するタイプなので、より浦添市の美しい海が埋め立てられる可能性の高い方を応援するという定番の「ネトウヨ仕草」です。
 ここが沖縄の面倒臭いポイントで、辺野古基地に賛成しているからと言って那覇軍港の浦添移転に賛成しているとは限らないし、那覇軍港の浦添移転に反対しているからと言って辺野古基地に反対しているとは限らない。意外と一貫して「あらゆる基地建設に反対」という人は少なく、あまりに問題が多すぎて、すべての問題を網羅できている人は、僕も含め、ほとんどいないのが現状です。
 しかし、こうした問題が「辺野古基地の反対」では一致できても、考え方の違いによって対立を起こす原因となっていて、沖縄の政治がいつも混沌としている要因となっています。そこに貧困問題やコロナ禍で観光客が激減している問題などが直撃しているのですから、「沖縄で政治をする」というのは、非常にハイレベルな仕事だと言えます。


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