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忘却書籍振返 〜文学フリマ東京38に向けて〜

まず、告知をいたします。

きたる2024年5月19日の『文学フリマ東京38』に知古文庫はG-10で出店します。2年ぶりの参加となります。
前回は、手ぬぐい蒐集本を造り、今回は、オリジナル手ぬぐいを造りました。造ったからには、多くの人に使っていただきたい……という気持ちが芽生えています。覗きにくるだけでもよいので、お立ち寄りいただければと思います。
当方、たいへんコミュ障をこじらせておりますが、落ち着いているときだったらだいたい喋れます。

オリジナル手ぬぐい第一弾『職場に猫放そう委員会』会員手ぬぐい。PVも造りました

webカタログ ▶ https://x.gd/D4fJ2


先週から本格的にイベント準備をしていたのだが……
困った。

文学フリマゆえ、もちろん手ぬぐい関連だけでなく、既刊の小説なども持っていくのだが、……なにぶん刊行から年月が経ったものの内容を、忘れかけてしまっている。コレはマズイ……
いちおう、書籍の説明用にwebサイトをのこしてはいるが……

かといって、当日説明もできないのは、大変マズいような気がしてならない……

そこで、いま、出品する書籍をすこし読みかえして、今回出品する本を、あらためて紹介を書こうと思う(なにしろ、いまだに在庫が残っているのだから)。

なお、これ以前に造った本の一部は、パブーというサイトで閲覧できるようになっている(存在を忘れていた)。
PuBoo → https://puboo.jp/users/chicoshop
印刷した本の小説は、どちらかというとシュールとかナンセンスとか、あるいは無秩序という感じの内容が多いが、パブー内にある話はやわらかいので、こちらのほうがいいと思われるかもしれない。


FUTURISMO

短編集『FUTURISMO』(2013)

「未来派」という芸術活動があったのをご存知だろうか。1909年のイタリアで、詩人マリネッティが書いた『未来派宣言』“Manifesto del futurismo”に端を発する活動で、各国の芸術活動に深い関係性もあり、ロシアの未来派や、日本にも未来派的な思想があったりするため、詳しく書くと長文になる(し、資料を検討しないといけないの)で割愛する。過去の芸術の破壊や、機械の礼賛などを謳っていて、時代性といえばそうなのだろうが、女性蔑視や暴力的な思想も多々含まれており、また、芸術活動というか、政治的・思想的側面が強いようにも感じる。
たしか、このタイトルをつけるに当たって、ちょうど私が未来派関連の書籍を読んでいたこともあったのだが、著者のいかるがが、当時書店に並んでいた雑誌のタイトルから「ドーリーメイク」(お人形さんのような化粧術)という言葉から、人の理想は人を超えた美にあるのではないか?のようなことを考えていたからだったと思う。たしかに、フラットにメイクされた姿は、無機質であたかもお人形(≒機械)を礼賛しているようにも思えて、なんだか、いまの時代こそ未来派の再来なのではないか、などとひたすら雑なことを考えつづけ、あげく次の短編集のタイトルに使おうと決まった。
表紙のイラストレーションは、ジャコモ・バッラの同時性絵画をイメージした、ロシア風の少女が歩く姿と、ツバメが羽ばたく絵なのだけど……まあ、これは正直だれも判らないと思う。
いかるが氏が一番あぶらがのっている時期だったと思う。ブログから作品見繕って集めてきたら300ページ超になり、短編の順番など、煮詰めきれず印刷に回さねばならなかったのが悔やまれる。


黒企業顚末記

黒企業顚末記(2015)

猫がいる職場で働いたことはありますか? 文学フリマ東京38で『職場に猫放そう委員会』会員手ぬぐいというものを販売するのですが、そう、私は猫がいる職場で働いたことがあります。

そこはブラック企業と呼ぶには、そこまでハードでは無かった。けれど、たぶん付け入られたら実質ブラックになる要素はあった会社だと思う。実際に、そういった話がなきにしもあらずで……
この本は私が今まで働いてきた会社の中で、とりわけ印象深かった会社のエピソードを、いかるが氏が書き起こして本にしたもの。主人公も女性にして、恋人とのエピソードなどを追加してマイルドにしたもので、まあ、文章にすることで供養できて良かったかなと。
帯にも書いたのだけど、読んで、ただ愚痴を聞かれている気分になるかもしれないな…という危惧も。だとしたら申しわけない。


転校生

転校生(2016)

私が両親に感謝していることの一番に挙げるのは、私に宗教を継承させなかったこと。思想をうけつぐことなく、私はりっぱに唯物論者となってしまいました。

身体が入れ替わる話で、さて、魂と肉体が入れ替わって、それって本当に別の身体を持った自分になるのだろうか?という疑問からできた話だったと思う。魂ってなに? 記憶のこと? つまり、記憶は脳(肉体の一部)にあるわけで、身体が入れ替わったとしても、脳は入れ替わらない。ってことは記憶もその身体に留まっているはずで、じゃあ、魂が入れ替わるってどういうことだろう??? ということ。正直、魂って(あるとしたら)それを構成する要素ってなんでしょうね。記憶か、性格か。うーん、オーラとか? よくわかりません。

話は女子高生と転校生の男子の物語。途中でいかるが氏から、大量の追加原稿が入ったが、中盤以降はもっと整理したほうが自然だったと悔やんでいる。
タイトルはウケ狙いです。入れ替わりモノの話なので、まあ、有名作品から拝借するさもしい根性を発揮しました。なので、既存の作品と関係性はありません。このあたりから、「ちょっとスケベなほうが受けがいいんじゃない?」みたいな感じが出て、装画もだんだんとそっち方向に走り出していった。


豚を捌くように

豚を捌くように(2016)

たしか、イベント用に書いていた本が意外と早めにできあがったため、あいてる時間でもうひとつ手製本で小冊子でも追加しようか、というつもりだった。いざ原稿を見るとマアマアの分量があって、どうせなのでこれも単行本にしようと相成った。読みかえしてみたが、ほとんど内容を憶えてない……
文章は生き物である。文字組みは生き物である……と誰かが言っていたような気もするので、版面に足を生やそうと思った。そしてパラパラ漫画調になった。気軽に作るつもりだったが、思ったより大変な作業だった。表紙も、レトロ印刷さんでリソグラフのバーコ印刷(盛り上げ)をやってみた。


サムシングナイス

サムシングナイス(2017)

だれもが一度は漫画家を夢見るもの。私ももともとは漫画家に憧れてたし、イラストレーションを学びながらすこし漫画を描いた時期もあった。いかるが氏もそんな時期があったと聞き及んでいる。
アレコレと物語を妄想するのもだれしもやることで、同氏が過去に考えていたキャラクターと物語をもとに『ネガティブキャンペーン』と『カエル、カタツムリ、イヌの尻尾』という話にして収録。学園モノの、恋愛モノでもある。
『ネガティブキャンペーン』は、紗耶加、塔子、湯村という3人の女の子の会話が中心に進んでいく構成だったので、それぞれの人物を別々の書体を変えて組んだ。面白い試みだったものの、もっとメリハリをつけられればよかったと思う。話は、けっこう粗っぽい筆の運びをしていて、それなりの面白さがある。


身体論

身体論(2018)

意外と、一番最近のものほど憶えていないものだ(とはいえ6年前……)。コンセプトは体の部位体の部位、掌編を編んで順に載せていく。原点回帰とも言える。
装画は、ウケ狙いの路線が、もう行き着いて、こうなったらヌードを描いてやろうと思った。やってみて、アダルト作品でないが、センシティブな画像に指定されたりしたこともあったので、ちょっと厄介だったなと思う。今見ると、デッサンがイマイチだ。挿絵は、ともかく動物を描きたかったので描いた。ペリカンとか、タコとかはあまり描いたことがなかったで、これは結構楽しかった。


最後に、
手ぬぐい紹介アカウント『毎度、手ぬぐい』の看板娘。今回のイベント用の立ち画です。全身画を載せる機会がなかったので、ここに投稿しておきます。

粋なのが江戸っ子の取り柄よ


※知古文庫は造本、イラスト、編集などを担当する知古(造るほう)と、執筆担当いかるが(書くほう)


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