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Clark and Division クラーク通りとディヴィジョン通り

2011年11月23日

「ヒロシマ・ボーイ」を書いたナオミ・ヒラハラの最新作(今年8月に出ました)を、ようやく読了しました。ナオミさんとは一度だけですがパネリストとしてご一緒したことがあり、お父様が広島で原爆にあわれていること、今回の最新作が私の住むシカゴの話であることなどから、勝手に親近感を抱いている作家さんです。

第二次世界大戦中、カリフォルニアの日系アメリカ人(二世)が収容所に入れられた話は有名ですが、終戦前に危害がないと考えられた人たちが、収容所を出ることが許されていたことは知りませんでした。しかし、これは帰還ではなくよその土地へ移ることでした。その行き先の一つがシカゴ。

主人公であるアキ・イトウは家族と一緒にマンザナー収容所へ追われます。そこでのプライバシーのない生活に辟易した姉のローズは、一足はやく収容所を出てシカゴに行きます。準備の整ったイトウ家は、ローズを追ってシカゴへ。しかし、長旅のあと、ようやく到着したイトウ家が受け取ったのは、迎えに来ているはずのローズが地下鉄の駅で電車に飛び込んで自殺したという衝撃のニュースでした。

そこから、アキの奮闘が始まります。家計を助けるべく働き口を見つけ(これがニューベリー図書館!)、同僚のナンシーとフィリスに助けられつつ、ローズの死の真相へと迫ります。性被害、当時の中絶クリニック、人種差別(対アジア人、対黒人)、警察の汚職など現在でも通用する(だからこそのトピックでしょう)が盛りだくさんです。

ミステリーの様相を取りつつ、世相批判でもあるこの本。とはいえ、主人公は親しみやすいし、なんといっても、この本の題名でもあるクラークとディヴィションという通り名は、シカゴ市民ならお馴染みです。しかも私は、アキの図書館の同僚であり、友人でもあるナンシーが住むポロニア・トライアングルのあるコミュニティーに住んでいます。ここは、ディヴィジョン通りをまっすぐ西に行ったところ。ナンシーの名字からわかるように、このあたりは一大ポーランド系移民の街でした。近隣にはウクライナ街もあり、今でも東欧系のスーパーがあったりして、ロシア語かポーランド語か、はたまたウクライナ語か私には判別できない文字のお菓子などをたくさん売っています。(「きのこの山」にそっくりなお菓子が!)

というわけで、お話以外のところでも楽しめた本でした。

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