「瑞樹が産まれてきてくれていたらどんなに良かったことだろう。」そう言う母親の言葉には同感だ。 「瑞樹は、言う事をよく聞き守るから、親を一度も困らせたことがない。」そして、決まって「それに比べて、あんたときたら」と、続く。 そうなのだ、母親の頭の中には、瑞樹が産まれてきてくれていたら苦労もせずに楽しい人生だっただろう。そのような瑞樹の子育て物語が、宿った日からもう何年も理想が綴られ続けてきているのだろう。 でも現実の子育てでは、理想通りにはならず「瑞樹が産まれてきてくれて
「瑞樹」と書いて「ミズキ」と読む名前。男の子だったのか、女の子だったのかはわからない。 その子は、親の言う事を守る”とても良い子”だと、母親は説明してくれた。そして決まって”あなたとは違って”と、必ず一言付け加えられた。 瑞樹の命は3ヶ月に満たなかったという。母親にとっては我が身に宿ったことを知って間も無くして瑞樹は旅立って行ったような感覚だったのだろう。 それでは、瑞樹が良い子だったかどうかの判断はできないのでは?と、私は言いたい気持ちを、いつも決まって抑える