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短編 『 虹 』(最終話)


     (約850字)


 2人は、欠けたピースを探していただけの同士だった。

 エイトは、足が伸ばせるソファーで寝るように言っても聞かなかった。

 私がベッドで眠る横で、座ったまま手を触れていた。

「一晩、それじゃ、風邪ひくよ」

私が怒ったフリをして言うと、嫌々そうな顔をして、ソファーに置いた毛布をズルズルと引っ張ってきた。


しばらくして、私は今の会社の人事異動の話を切り出した。

大阪支社に転勤の話が出て、気持ちがはっきりした。


もう、私の役目は終わったんだ。

私はエイトが行く道を見ていたいだけだった。

道標はとうに要らなかったけれど、それが実感として胸に落ちてくるのに時間がかかった。

苦しみに過去から負けないように見ていただけで、最初から大丈夫だったかもしれないが、子犬みたいに弱々しく見えていた。


話す言葉も、負けず嫌いなところも、側にいられなくなっても大丈夫になるまで見ていようって、決めていた。


「たこ焼きを食べたいときは、どうすればいいの」

「コンビニに老舗のたこ焼きが売ってるよ」

「ビリケンさんは、こっちには居ない」


「じゃあ、お土産のぬいぐるみか人形を贈るよ」


「虹が出たら、どうすればいい?」


「教えて、遠くから見てるから」


「同じ国に住んでるから心配ないよね」


「お兄さん、見つかるといいね」


「見つかったら、大阪に送ってやるよ」


「それは、ありがとう」


 翌朝、ベランダの向こうに朝日から立ち上がる虹をいつまでも二人で見ていた。


                 終わり



        ※フィクションです



            ↓前回のお話です



短編小説集の『カラーズ』を続けてお読みいただきまして、ありがとうございました。


プライベートで変化があり、長々とnoteの活動を続けるのに不便を感じました。
一晩で、連作を書きおろしました。


私のnoteの創作活動は、これで終わりです。
今まで、スキをくださったり、フォローしてくださったり、コメントをくださって、感謝します。


昨日の『卵』色は、カツ丼セット
(アサリの味噌汁つき)を食べながら書きました


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