満月ダイアローグを終えて(1)
10月の満月の夜。
舞踊家の友人が踊り、私が音楽を奏で。
お客さんたちはその表現を受けて、自分の中から生まれ出てきたものを、絵や言葉で表す・・・
そんな集いを、喫茶店で開いた。
未知の領域。
恐る恐る飛び込んでみた。
失敗してもいいからと。
精一杯やったつもりだ。
毎日のギター練習で、左手の指先は皮が分厚くなって、タッチパネルがうまく反応しなくなった。
人差し指の第二関節の横も、硬過ぎて、感触がない。
発声の反復練習で、身体の真ん中を通る音は、これまで体験したことのないような心地よい響きで、自分の全身を震わせてくれるようになった。
ここまでやっても、
「本番では思う存分奏でられた?」
自分に問うてみると
「まだまだ全然」
「まだまだ、ギターと自分が遠かった。
もっともっと一体感を持てるようになりたい。
もっともっと仲良くなりたい」
「自宅で歌ってる時くらい、リラックスしてのびのびと、
心地よさだけを感じて人前でも歌いたい」
そんな願いが出てくる。
こんな願いが出てくるのは、とても嬉しいことだと思う。
このあとも、自分が願う場所に辿り着くまで、音楽を続けるだけだ。
結果的には
燃え尽きたりはしていない。
だけど、確かに新しい体験をしたことは、間違いがない。
元々居た場所から、行ったことのない場所へ。
「本当に行けるのか?」
疑念を抱いたままとりあえず飛び込んでみて。
案外、しっかり飛び込めていて。
で、次の日からまた、あっさりといつもの日常が始まるっていう。
だけど、その「いつもの日常」は
いつもと同じ景色のようでいて。
実際、まったくの別物に、変わってしまっている。
「パラレルワールド、幾つもの並行世界を淡々と異動してきたような」
そんな感覚。
自分の今居る場所が、慣れ親しんだ場所が、
確かに「いつもの場所」なのに、「違う場所」である。
生きていると、こんな不思議な感覚が、生まれたりするんだな・・・
たくさんの偶然と必然。
関わってくれた人たち全員の、感覚、感情、インスピレーションの一つ一つ。
イベントが決まってから、ひたすらにひたすらに、自分と向き合う時間。
友人が書いた詞。突然に言葉が舞い込んできてあっという間に完成した自作の詞。先人が作った音楽。そして、このイベントをやる理由。
ー そんなものたちと、ひたすらにひたすらに、向き合う時間。
これらの全てが、今いる場所まで、私を連れてきてくれた。
こんなに有り難いことって、あるのかな。
本番が終わったあと。
十六夜も、十七夜も、十八夜も・・・。
夜空で欠け続ける月を見上げながら、おもしろおかしい気持ちで、世界を眺めている。
まずは、この日記では、自分の感覚的なことの記録を。
次の日記では、具体的に起きたことなどを書きたい。
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