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『恋愛 疲れた』で検索したくなる夜に


「いや、普通に好きなんですけど、なんかときめかないんですよね〜」

最近いい感じの男性から貰ったという高級店のクッキーをかじりながら、休憩中の後輩がぼやく。


「例えば?」

「うーん…なんかこう、好きな人にはカッコよくスマートに、特別扱いして欲しいじゃないですか。」

「昨日もご馳走してくれて最寄駅まで送り届けてもらった上に、そのクッキー貰ったんじゃなかったっけ?」

「いやそうなんですけどぉ!!違うんですよぉ…こう…私のことだけを想ってくれた、っていうのを感じたいんです!!」


話だけ聞くと素敵に感じるのに、新手のツンデレか?などと思ったが違ったようだった。


「有難いですけど、毎回ほぼ相談なくお店は予約されてますし…私クッキーそんな好きじゃないですし…挙句、車散らかっててちょっと引きましたし…」

「おーおー」

「嬉しいけど寂しいというか…私はこの人が好きなのか?って思ったり…なんかもう恋愛疲れました…」


言葉をこぼしながらどんどん項垂れていく彼女の気持ちが、私にもなんとなく分かってしまった。

要は〝カッコよくて素敵な彼〟が〝他の誰でもなく私だけに向けてくれる愛情〟を感じたいのだ。

女性だったらきっと好きな人にはそう思う。
いつだって確かな愛情を感じたいし、ときめいていたい。


しかしこういう話は、男性側から
「女心マジで難しい」
という感想が高確率であがる。


このすれ違いの原因は何なんだろうか。





冒頭の後輩の言葉をもう一度思い出してみる。


相談なしで食事の予約
さほど好きではない高級店のプレゼント
散らかった車で送迎


先に言っておくが、後輩のお相手がダメだとは思わない。きっと彼なりに、彼女に喜んでもらいたいと思って起こした行動だろうしその気持ちはとても素敵だ。

だが、結果的に彼女はときめいていない。
それは何故か。


私は、彼が〝女性が喜んでくれるであろう行動のみを選んで実行〟したからだと考える。

それの何がいけないんだ!という声やら石やらが飛んできそうだが、少し聞いてほしい。

確かに、いわゆる女子ウケや女心にフォーカスした情報は巷にたくさん溢れている。


〝食事は男性が予約してくれると嬉しい!〟
とか

〝サプライズプレゼントに女子は弱い♡〟
とか

〝遅いし送るよって言われたらキュンとする〟とかとか。

でも、これってあくまで〝私が好きなものや喜びそうなこと〟を想像して考えて、行動してくれたというのが前提にあると思う。


プレゼントは絶対ブランド品が欲しいとか、デートは高級レストランでとか、現地集合じゃなくてお迎えがいいとか、全部が全部そういう訳じゃない。

もっと言ってしまえば高級品がいいわけでもなく、送迎してほしいわけでもなく〝私のことを考えてくれたのが想像できる〟のであれば何だって嬉しい。

逆に「女の子ってこういうのが好きなんでしょ」っていう知識だけで行動されたとしても、嬉しいけどイマイチ心に響かなかったり、場合によっては後輩のように引いてしまう時もある。

chu!厚かましくてご・め・ん
頼む殴らないで


ひとつ言えることは、多くの女性はきっと〝女心じゃなくて目の前にいる私のことを考えて!〟と思っているということ。

当たり前かもしれないがスマホで検索じゃなくて、目の前の相手の言葉を聞いて知る、というのが一番大切で必要なことだと思う。


サプライズとかって多分、2人の信頼関係の先にあるのだ。




お互いを理解する為には、まず相手に歩み寄って知る努力と伝える努力が必要不可欠だ。

そしてこれは男性だけではなく、男心に悩む女性にも同様に当てはまる。


素直な気持ちも下心も全部ひっくるめて不器用でも自分なりに真っ直ぐ伝えること、そしてそれを受け止めることはどんな恋愛テクニックも敵わない愛情表現だと私は思う。

なんなら響かなくたっていい、むしろその瞬間の相手のリアクションが「???」でもいいとすら。

その時は分からなくても、じっくりじわじわと〝自分のために悩んで考えてくれた、時間を割いてくれた〟という事実を感じられる時が必ずくる。


そしてこのじっくりじわじわっていうのが、個人的にはすごく大事だと思う。

今はタイパ・コスパの時代でとにかく手軽で効率的な出会いが主流になりつつあるが、恋愛ってどう頑張ってもその枠にはめることは難しい。

短い時間で構築された関係は一瞬で壊れるし、背伸びしたり猫を被り続けると、自分をよく見せることに手一杯で相手のことを考えられなくなる。

もちろん、マッチングアプリなどの出会えるツールはどんどん使うべきだと思う。


時間をかけるべきは、その後だ。

最初こそ「この人、何考えてるかよく分かんない」と思ったとしても、お互いが相手を知りたいという気持ちを失くさなければ、段々と「あれ?もしかしてあの時のって…」と思うことが増える。

時差は発生するが、そのうち答え合わせができる。しかし、その伏線を回収するまでの過程ではどうしてもすれ違いが起きる。男女の脳の作りは違うからどうしたって仕方ない。


これがきっと「女って、男って、分かんね〜〜〜!!」の正体だろう。


でも、大抵最初はそんなもんだ。


人間、好きであればあるほどどうしても期待してしまう。こうであってほしい、って美化しちゃうんだよね相手のことを。


むしろこの恋愛のめんどくささが、最大の醍醐味でもあると思う。2人の話が出来るようになったらもう、この男女の思考の差を乗り越えたも同然だ。


私と恋人の場合だが、

当初、店を決める時は謎の2択で聞かれ「なんでその2択?私の意見は?」と伝えると、

「どっちがボツになってもにほは気を遣ったり凹むでしょ。だからにほと俺が2人とも好きなもの2択にした。」

と斜めな気遣いをいただいたり。

LINEでの問いかけに全く関係ない返事が来た時「わたしの質問に答えろ!」とキレたら

「OK分かったよって思ったから、特に送らなかった。」

などと言っていた時も。(白目)(ちなみに今も)


〝好き〟というのは、それだけで相手が自分の理想通りでいてくれる魔法ではない。

1人でも生きていける自立した2人が、それでも一緒に生きていきたいと思う気持ちを言葉にして伝え合っていくことだと思う。

だから自分が思っているより、もっと素直に正直に思ったことを伝えていいのだ。


どれだけ長い間一緒にいても、お互い知っていたようで知らないことはきっとある。

思い悩む前に、言葉にしてみる努力をやめないようにしたい。



「そうね〜疲れるし面倒よな、分かるよ。」

「マジで自分の気持ちが謎っス…。」

「嬉しかったら喜べばいいし、気に入らなければ怒ればいい。案外自分の気持ちも言葉にしてみないと分かんなかったりするよ。それは相手にとってもね。」

「確かに、踏み入ったことは話すのも聞くのも避けてたかもです…。」
 
「好きかどうか悩むのは、もう少しお互いを知ってからでもいいんじゃない?そのうち、自然と分かるかもよ。」

「先輩…たまにいいこと言いますよね。」

「私はいつもいいことしか言わん。」


大丈夫、未来は案外悪くないよ。


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