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不動産日記 vol.2

報い

私には引っ越しをするにあたり、相談しなければならない人がいました。

近くに住む母と妹です。

私の父は私が中学生の頃には、
母と上手くいかず家を出ていたので、
これまで私と母と妹は3人で、力を合わせて暮らしてきました。

私が18歳で大学に行くため、家を出たときは
妹は母と二人になってしまい、苦労したようです。

母は仕事をしており、
あまり子育てが上手とは言えない人でした。

父とのことで、母は妹を気遣う余裕がなかったので、
いつも寂しかった、と大学を卒業したあと妹から聞きました。

私はと言えば、家族のことなど考えておらず、
自分勝手に大学に進学したので、
そんな妹の話を聞いて、
これからは妹に報いなければならないと思っていました。

だからお互いに結婚した後は、
子育てしながら、
私は妹の役に立つよう努力しました。

引っ越しについては、母と妹は何て言うかな……
また自分勝手で申し訳ない、と不安に思っていました。

ああ、そうなんだ

私は次女が2歳くらいの時から、
仕事に復帰していたので、
それを支えてくれたのは母と妹です。

その頃、夫は非常にハードスケジュールで、
自治体の子育てサポートは、20年前ともなると
今ほどのサポートは得られず、
母や妹が居てくれたおかげで、
私は娘たちが病気のときや授業参観があるときにも
安心して仕事に行くことができました。
(私は授業参観に休むことのできない仕事をしていました。)

母が老いてきてからは、
私のほうが母の家に近かったので、
私が母のお世話をする機会が多かったのですが、
私が引っ越すとなると、
妹に母のお世話を頼むことになってしまいます。

妹にはできるだけ負担が少なくなるよう、
「実家へのアクセスが良い場所に引っ越したいと考えている」と
話しました。

すると、妹や姪が「自分たちが母を引き取って同居する」と
言い始めました。

私はまったく予測していなかったので驚きましたが、
冷静に考えたらあり得る話かもしれません。

「ああ、そうなんだ」と
自分の不安が杞憂だったことに気がつきました。

そして私は知らず知らずのうちに、
母や妹の存在に依存していたことにも気がつきました。
自分の都合で頼ってきた、そういった気持ちを
はがし落とさなければならないのだと思いました。

突然、ぴったりと片寄せ合ってくっついていた肌と肌が
ゆっくりとはがされるような
何とも言えぬ寂しさを感じましたが、と同時に
この家族の中での私の役目は終わったんだな、とも思いました。

















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