タルト・タタン【その２】

フランスは今まさに（１２月）りんごのシーズン。

世界中には２万種類近くのリンゴが存在すると言われていますが、世界中で生産・流通しているリンゴの９０％は、たった十数種類だそう。

今回はフランスのスーパー・マルシェで一般的で容易に購入できるりんごの中でも４種類だけ紹介させていただきます。

そして次の４種類からタルトタタンに使用した際に、どのような違いや特徴が現れるのか少しお話したいと思います。前提としてタルトタタンの作り方は過去の記事タルト・タタン【その１】で紹介した作り方による仕上がりの味わいの違いです

先にお話しておきますが、どの品種を使っても仕上がりに大きな差はありません。食べ比べてそれぞれの特徴や違いを把握できる程度です。

今回のお話を参考にタルトタタンに限らず、どの品種が一番美味しい・適しているとい視点は必要ですが、どの品種を使い、何を表現したいのかという根本的な料理の考え方を知っていただくきっかけになっていただければ幸いです。

①ゴールデン・デリシャス（Golede　Delicious）

まず１つ目は秋から冬にかけて収穫されるアメリカ原産でフランス国内で最も生産されているゴールデン・デリシャスです。フランスではゴールデンで親しまれています。

とってもジューシーで甘味も強く、酸味は控えめです。フレッシュの状態で私が一番好んでよく食べるりんご品種ですが、渡仏当初は口の中に残る独特の粉っぽい印象の食感が苦手で初めて口した時は美味しいという印象からは遠かったです。

りんごのコンポート（ピューレ）作るのに適した品種です。

ゴールデンで作るタルトタタンは甘みが強調され酸味が弱いです。

そしてなんと言っても一番特徴的になるのはとろけるような口どけです。
酸味による余韻は非常に弱いですが、口に含んで咀嚼する必要がないくらい柔らかく、とろけるように仕上げることができます。

②ガラ（Gala）

ガラはニュージーランド生まれでフランスでも一般的なりんごの一つで、フランス国内２番目に生産量が多い品種。比較的強い甘みとシャッキとする食感が特徴的で、酸味は優しい印象です。

バナナや洋梨の風味をほんの僅かながら感じられます。皮が薄い品種なので皮付きのまま薄くスライスしてサラダに入れてフレッシュで味わうとガラ種の特徴を活かせます。

ガラをタルトタタンに使用すると甘さが強調されますが、わずかに残る食感は酸味により余韻を心地よく感じられます。

③フジ（Fuji）

日本原産のりんご。非常にジューシーで甘味も強いです。りんごの中央部には甘みが強くなる蜜もあります。身質もしまっており心地よい食感、酸味はりんご好きにはたまりません。私が一番食べ慣れている味です。

フジで作るタルトタタンは凝縮した甘みとりんごの風味を強く感じる味わいに仕上げることができます。食感は味わいの凝縮感からねっちりした印象を受けます。

④ピンクレディー（Pink Lady）

オーストラリア原産で真っ赤な皮は目を引きます。皮が厚く甘みに比べて酸味が強いですが風味・食感・と全てのバランスが一番整っている印象です。

Youtubeのタルトタタン動画で使用したりんごはこちらのピンクレディー。

４種類のりんごの中で一番高価なりんごです（３.５€/kg）

私がピンクレディーを今回のタルトタタンに使用した理由は、加熱後の歯切れの心地よさと風味、りんごの酸味・甘みの上品さを引き立ててくれるからです。

タルトタタンに限らず料理やお菓子作りでは、たとえ同じ品種の食材を使用しても食材の扱い方・調理法・使う時期によって仕上がりは全て異なってきます。

何がより優れ・美味しいのかを突き詰める事は大事ですが、どんな食材・品種・調理法を選択しても、料理から生み出される【楽しさ・喜び】を共有できる術こそが、より大切な料理人の能力だと信じています。

タルトタタンの調理工程はYoutube動画内で紹介しております。

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Chef ichi