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世界三大珍味の本当に美味しい?フォアグラ

高級食材として知られているフォアグラ・キャビア・トリュフ。

希少性や価格が高価ということで、世界三大珍味と呼ばれるこれらの食材は、食べる機会よりも、ネットやテレビの情報の中で、見たり聞いたりすることのほうが多い食材だと思います。

主にフランス料理で扱われる高級食材として広く知られている食材ですが、これらすべての食材を毎年定期的に扱うレストランは限られてきますし、料理人でも適切にこれらの食材を扱える人も限られてきます。

『珍味』っと日本語にするとなんだか安っぽく、へんてこな食材の印象を受けるのは僕だけかもしれませんが(笑)、一部の高級レストランでは、料理に華やかさやお客さんに強いインパクトを与える『わかりやすい高級食材』として欠かせない存在です。

ただ希少性と価格が高いからと言っても、産地や品質に注意を払い適切な調理法が施されないと、必ずしも『美味しい食材』であるとは限りません。

1:トリュフ


例えばトリュフはそのまま食べても味があるわけではなく、本質的には美味しい食材とは言えないと思います。適切な厚みにスライスして他の食材と組み合わせたり、シャッキとする食感や、熱を加えることで魅力的な芳醇な香りが最大限に発揮される食材です。

トリュフは約60種類の品種が確認されているそうで、食用になっているのはそのうちの9種類だそうです。フランス以外でもイタリアもトリュフの産地として有名で、特に黒トリュフより希少性の高いイタリアはアルバ産の白トリュフの価格は、黒トリュフの価格の約3倍以上の価格で取引されます。

ちなみにフランスのトリュフの産地で有名なのは、南西部のペリゴールに南フランスのプロヴァンス地方が有名です。

2:キャビア

魚卵のキャビアも同様に、キャビアだからといってどれもが素晴らしい品質とは限りません。チョウザメの品種であったり産地やメーカーなどによって、粒の大きさから味わいのコクや塩分が異なります。

品質が良いことで有名な品種のチョウザメのベルーガは、魚卵のサイズも大きく均一で、粒の存在感をしっかりしています。色味も明るく光沢のあるグレーでなめらかな見た目です。

味わいも旨みが濃縮されており、塩分とのバランスが取れた味わいです。

フランスでキャビアの産地と言ったら、ワインの産地で有名なボルドーの近郊で養殖されたチョウザメから取れたキャビアが有名です。

以前は20世紀初頭から、ボルドーに流れているジロンド川、ガロンヌ川、ドルドーニュ川で生息していたチョウザメから魚卵をとり、キャビアを作っていたそうですが、乱獲か密猟により絶滅の危機に陥り、自然に生息しているチョウザメ漁は禁止となっているそうです。

3:フォアグラ

世界三大珍味の中でも、最も調理のバリエーションが豊富でデリーケートな調理が必要な食材と言ったら、アヒルやガチョウの肝臓を肥大させて作られた高級食材のフォアグラです。

フォアグラを使用した料理は冷たい料理から温かい料理まで様々です。

フランス料理のレストランで提供される主なフォアグラ料理は、冷たい料理ならテリーにムース、温かい料理ならソテーが最もよく知られている調理法かもしれません。

YouTube動画でもアヒルのフォアグラを使ってフォアグラのテリーヌの作り方を紹介しましたが、詳しい作り方のお話をする前にフォアグラの特徴についてお話しようと思います。

フォアグラはフランスが世界で最も生産されている国であり消費国でもあります。

特に12月のクリスマスシーズンになると、一般のスーパーなどでもフレッシュのフォアグラから加工されたフォアグラのテリーヌなど、フォアグラを使った様々な商品が並びます。

そして家庭の食卓で食べる機会が最も多くなるのは、クリスマス当日と、新年前夜のレヴェイヨンと呼ばれる12月31日の晩餐の日です。

フランス国内では、南西部のペリゴール産とランド産が有名で、ガチョウとアヒルの両方のフォアグラが生産されています。

ちなみにアヒルはマガモを品種改良して家禽化した鴨のことです。

そしてガチョウのフォアグラのほうが高価で味わいも繊細で、口当たりも軽やかですが、生産量は極めて少く希少な食材です。その理由としてガチョウはアヒルに比べて病気にかかりやすく飼育期間も長いからです。

また品質的にもアヒルのフォアグラに比べて安定が難しいらしく、価格もアヒルのファアグラの2倍以上です。そういった様々な理由からアヒルの方が飼育が楽で、病気にも強いことから、今日では鴨(アヒル)のフォアグラの生産量は増加傾向にあり、ガチョウのフォアグラは儲けが少なくなるため生産者も数を減らしているそうです。

品質のよいアヒルのフォワグラは、大きさが400〜500g前後。それ以上の大きさの品質が低いというわけではないのですが、個人的に600g以上の大きさのフォアグラは加熱調理の際、丁寧に調理を施さないとフォアグラ自体が綺麗な形が保ちにくく、溶けてしまう印象があります。

またフランスでスーパーやマルシェでフォアグラを購入する際は、その殆どが真空パックされて売られています。衛生上真空パックのほうが保管に優れてはいますが、真空パックされると中の血管が傷つきフォアグラの表面に血が滲み出てしまうこともあります。

品質の良いフォアグラを扱うレストランでは、直接フォアグラ農家や信頼をおいているお肉屋さんから仕入れ、それらのフォアグラは清潔な包装紙に一つひとつ包まれてレストランに送られてきます。

フォアグラは構造上大きい房と小さい房が一つになっており、調理する前には基本的にこの2つの房を分けて、調理に適した下処理を施します。

例えばフォアグラのテリーヌを作る際には、仕上がりのテリーヌの見た目と口当たりを良くするために、2つの房に分けたあとに内側の血管と筋を取り除く作業が必要不可欠です。

ただフランスのレストランでテリーヌを仕込む際は、血管を取り除く作業の手間と時間を省くために、予め血管と筋が取り除かれたフォアグラを購入するレストランのほうが多いと思います。

価格は下処理されたフォアグラのほうが高いのですが、一度の仕込みに10kg以上のフォアグラを扱うレストランなどでは価格は少し高くても、手間や時間を短縮できる下処理されたフォアグラを購入することが多いと思います。

そしてフォアグラの形を活かしたいフォアグラのソテーやポッシェなどは、下処理されていないフォアグラを購入するほうが、調理に適しているということです。

日本で食べることができるフォアグラの多くは、フランス産かハンガリー産になります。

日本で最もよく知られている食べ方は、スライスしたフォアグラの両面カリッと焼き上げて調理したフォアグラのソテーかもしれません。レストランで食べたことがない食材でも、もしかしたら結婚式での食事で1度は召し上がったことがある方もいるのではないでしょうか?

ところでそのフォアグラ料理、美味しかったですか?もしかしたら食べてみてがっかりした人も中にはいるかも知れません。

日本ではフォアグラはフランス料理店や高級レストランと言われている以外のお店でも食べる機会はあります。価格帯も安く身近な場所でいうと、ファミリーレストランや居酒屋料理に使われていることもあります。

フォアグラの名前や希少性からくるインパクトは確かに魅力的です。それは先にお話したトリュフやキャビアも同じです。

ただ低価格や大量調理で作られるフォアグラ料理の多くは、品質の低いフォアグラを使用されていたり、調理工程に関してもお粗末な場合が多く見られると思います。

品質が低いフォアグラは、フォアグラ独特の香りではなくレバーような臭みになることがあります。また肝臓を肥大させて作られたフォアグラは、脂肪含有量が60%以上と高く、加熱をしすぎて脂が出きってしまい、食感は固くなり風味も抜けて、何を食べているか分からない食感になります。

フランス国内でもフォアグラ料理が有名な地域のレストランでは、当たり前のようにフォアグラのテリーヌやサラダ、そしてフォアグラのソテーなどがメニューに名を連ねていますが、よほど評判の良いレストランかミシュランの星付きレストラン以外でのフォアグラ料理はおすすめできません。

特に観光地のレストランのように、多くの客を受け入れてサービスするレストランほど、繊細な食材の調理や管理はお粗末で美味しくないリスクが高いからです。

フォアグラは、調理後も適切な保管や保存がされていないと、外側から徐々に酸化して黒ずみ、劣化が進むにつれて味にも悪い影響がでてきます。フォアグラのムースやテリーヌなどど予め仕込んで作り置きする前菜料理などは、適切な保管・保存をしないと、どんなに最適火入れや味付けが施されたとしても、フォアグラの魅力は半減してしまう味になります。

ただフォアグラのムースやテリーヌのように、すでに調理されたフォアグラ料理は、美味しい状態と劣化した時の味の違いを知らないと分かりづらいかもしれません。

例えばフォアグラのテリーヌなどは、テリーヌ型から外して空気に触れた瞬間、どんなに保管や保存方法に気をつけていても時間の経過とともに少しずつ黒ずんできます。そういった場合は、変色してきた部分を切り落としてレストランでは提供されますが、変色した表面が取り除かれないまま提供される場合も稀にあります。

昨年の話になりますが、結婚記念日に我々夫婦で一つ星のレストランに食事に行たときのことです。食事の内容はトータル的に満足のできるものでしたが、前菜で食べたフォアグラのテリーヌ風の料理が、見た目も味わいにも僅かですが酸化した状態で提供されました。

美味しいフォアグラ料理は、見た目で直ぐに判断ができるものです。丁寧に調理されたものは盛り付けられたあとも艶があり美しいです。

しかしこのレストランで食べたフォアグラは、フォアグラの加熱時間が長かった影響かフォアグラの風味は弱く、見た目も艶と美しさにかけていました。

何よりカットしてから時間が長く経過したのか、劣化した味がしっかりと感じられたのは残念。

ただ劣化した味を知らない妻からすれば、美味しいフォアグラ料理を食べれたと満足しており、フォアグラ料理を食べた経験が多い人でないと違いがわかりにくい差ではあります。

ちなみに新鮮なフォアグラは生でも食べることができます。フォアグラ本来の味を楽しみたいのであれば薄くスライスして、フルール・ド・セルと胡椒だけでもバターのようにパンと一緒に楽しむことができます。

調理のバリエーションが豊富なだけに、扱う注意点は多くありますが、品質がよく適切な調理されたフォアグラはやはり格別です。

近年ではフォアグラを生産する工程で行われる、アヒルやガチョウに行われる強制摂食(ガヴァージュ)について、動物愛護の観点から論争が起こり、生産や販売を禁止する動きもあります。

ニューヨーク市では2022年からフォアグラの貯蔵・販売や料理の提供が禁止されています。近い将来は世界的に、もしかしたら口にできなくなる食材になるかもしれません。興味のある方は、是非美味しいフォアグラ料理を一度は食べてもらいたいです。


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Chef ichi







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