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【じゃがいものアイスクリーム】

今回はじゃがいものアイスクリームのお話。

レシピ・調理工程はちょっぴり複雑です。はっきり家庭で再現できるレシピではありませんが勝手にお話させていただきます。

シンプルなレシピも存在しますが今回紹介するレシピから、じゃがいもの特徴、魅力を伝えプロの料理人が注意を払っている食材との向き合い方も紹介できたら幸いです

まずは使っているじゃがいもの品種から。じゃがいもはビンチェ種というフランスで広く名前の知られている品種を使用しています。

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このビンチェ種、古くは第一次世界大戦前後にはオランダで究極のじゃがいもとして扱われてきた歴史があるそうです。食糧難だった時代にオランダで比較的栽培が容易で重宝されていた種いう理由から。

しかし食糧事情が改善されてからより美味しい他の品種が出回り始めたことでビンチェ種の生産は自然と少なくなっていたそうです。

その後フランスはパリで、このビンチェ種をフライドポテトにすると、とても美味しいということが知られてビンチェ種の人気はフランスをはじめ、ヨーロッパ各地へ広がっていったといいます。

現在もフランスの料理人に

『フライドポテトに使うじゃがいも品種は?』

と尋ねたらビンチェ種を真っ先に思い浮かべるでしょう。

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ビンチェ種はヨーロッパの風土や気候にあっている為か、安定した品質で生産できるため低価格で市場売られています

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写真からもわかるように、表面に土がついた状態でマルシェで売られています。良い保存状態を長く保ち、じゃがいもを傷めないようにするためだそうです。

しかし他のじゃがいも品種の殆どは土を落とされてスーパーやマルシェで売られており、高級品種のじゃがいも以外で土がついて売られているのは、この低価格のビンチェ種のみだと思います。

個人的な見解として、よく売れるために土をあえてつけたまま売ることで、数多く一緒に並べられている他のじゃがいも品種との差別を計り特徴を付けているのだと思います。日本で売られているごぼうのような感じだと思いますが、実際のところは私にはわかりません。(しかもこのビンチェ種、屋外のマルシェでしか見かけないような気がします・・・土がついてスーパーなどで売ると掃除が大変だから?・・・かも)

さて、このビンチェ種を使ったじゃがいものアイスクリームのレシピを2つの工程に分けて説明します。初めに過去記事のじゃがいものピューレを紹介した記事の中で少しだけ触れた、香ばしく焼けた皮の香りをじゃがいものピューレの中に移す工程がこのアイスクリームレシピでは重要になってきます。

【工程A: じゃがいものピューレの材料と分量】
ビンチェ種のじゃがいも    1300g
牛乳              300g
生クリーム           300g
クリームチーズ         250g
無塩バター            25g

よく洗い土を落としたビンチェ種にじゃがいもの水気を取ったら、岩塩を引いたバットに並べて170度の熱したオーブンに50分〜60分入れて火を入れる。


①の火が入ったのを確認できたらじゃがいもの皮を剥き、じゃがいもは熱いうちに裏ごしする。じゃがいもの皮は再びオーブンに入れて、しっかり焼き色が付くまでオーブンで焼く。焦げないように注意し、焼き色がついた皮を牛乳に1時間浸し香りを牛乳に移してから濾す。


裏ごししたじゃがいものうち750gを計り、香りを移した牛乳・生クリーム・クリームチーズ・バターを②で裏込したじゃがいもと合わせる。
【工程B:アングレーズソースの材料と分量】
工程1のじゃがいものピューレ     800g
卵黄                 100g
生クリーム              550g
塩                   10g
トレモリン               80g
グルコース                                                    40g


卵黄にトレモリン・グルコースを入れて泡立て器でブランシールする

温めた生クリームを①に少しずつ注ぎながら混ぜ合わせ、鍋に入れてアングレーズソースを作る要領で中火でたく。濃度が付き始めたら裏濾しをして氷水に当てながら冷やす。

A工程で作ったじゃがいものピューレと塩、②をあわせてアイスクリームマシーンにかける

提供時は仕上げにほんの少しの塩と黒胡椒をふりかけると味わいを強調できます

じゃがいもの風味を味わう温度は温かいほうがより強調されますが、冷たい温度で尚且、クリームや卵黄と合わせるアイスクリームでは口に含んだ時のじゃがいもの風味は弱まってしまいます。

そこでじゃがいもの部分で香りの強い皮をローストして、焼き色をつけてから牛乳に浸すことで、じゃがいもの香りをピューレにしっかりと移すことでき、冷たい状態のアイスクリームでもしっかりと風味を味わえるのです。

このように食材の本来捨ててしまう部分を無駄なく使い、特徴を活かした調理法は、お皿の上では確かに魅力的に輝き素晴らしい味わいを演出してくれてます。

しかし難点を指摘すると、料理人にとって全ての食材を無駄なく使用するには多くの人手・手間・時間を要し、人件費にコストを掛けることのできるレストラン以外では非常に難しい選択になります。

確かに【捨てられてしまう食材を使いきる】と言葉は、聞こえもいいし本来料理人が目指すべきものというよりかは、身につけていなければならない知識や能力です。

ただ全てのレストランがとは言えませんが、高級店になればなるほどお皿の上で美しく形が整えられて綺麗に盛り付けられている料理であればあるほど、その裏で廃棄になる食材のリスクは高まってくるということも事実です

そして有名シェフの殆どが食材廃棄の知識や取り組みが浅いことも事実。
より良質さ食材を追い求め、知ろうとする事は料理人にとって自然なこと。

新しい時代が始まって、持続可能で環境により配慮しているレストラン・料理人としてのスタイルが問われています

それは一つに食材の質・価格以上に、食材の育った環境から育てた人、入手ルート、そして使い切ることに力を入れるレストランや料理人のカタチが一番注目されてくる時代へと移り変わり、なるべき姿なのだと思います。

じゃがいものアイスクリームの記事を書きながら、そんなことを思う今日このごろでした。

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Chef ichi

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