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ローストビーフから学べる塊肉の火入れ【後編】

牛肉の部位で主にステーキとして食べられる部位は、厚みや大きさに比例して調理時間と理想の加熱調理をする難易度も増します。

それは何も牛肉に限ったことではなく、豚肉・鶏肉・鴨肉も同様です。

19世紀のフランスの美食家ブリア・サヴァランは

【料理人にはなれるが、肉焼き師は生まれつきである】

という言葉を残しています。

この言葉からお肉を焼く技術は生まれ持った才能が必須であると思われがちですが、決してそのようなことはありません。

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人によって好みの異なる肉の焼き加減を、状況に応じて最適な状態で焼き上げるためには、数多くのお肉を焼く経験に加えて、それぞれ異なる特徴のお肉の状態を把握できる判断力も必要になってくる。

要するにお肉を焼く才能は、知識を実践して習慣化することでセンスに変わり身につけることができるということです。

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さて、本日は前回の【ローストビーフから学べる塊肉の火入れ・前編】の続きになります。

今回はローストビーフの旨味・香り・食感をより引き立ててくれる、ソースと付け合せのお話です。

まずはソースのお話から始めさせていただきます。

前回の記事でも少しだけ触れたグレイビーソース。このソースの作り方は塊肉を焼いた鍋やフライパンに残った肉の旨味や香りを利用して作る、短時間でできるローストビーフに添えられる本式のソースです。

私は今回動画内で紹介している方法も強火で肉表面全体を焼いた際に使用したフライパンに残る油分の肉の香りを利用してソースを作っています。

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私が紹介するソースは、材料以外で本式のグレイビーソースと異なる点は、無駄が出ない・作り方に一貫性がある点です。

本式の作り方は玉ねぎなどの香味野菜を炒めてから白ワイン・水などの水分を加えて煮詰めたら、甘みを出すために使った香味野菜は濾して廃棄されるのが一般的な作り方です。

ソースの作り方で旨味や香りを出しきったら廃棄してしまう方法は大量に作り、美しく盛り付けるためのレストランにおいての作り方。一般家庭では不向きな調理方法だと私は思います。

またグレイビーソースは温かい状態で召し上がることで、口当たり、香り、旨味といった味わいの本領が発揮されます。

私が今回のローストビーフのソースの作りで重点を置いている点は、ソースで使う素材を味わい尽くし、暖かくても冷めても美味しく召し上がれる点です。

また使用した玉ねぎもソースの中に残して食感も楽しめるようにしております。それでは作り方の説明です。

フライパンでじっくり玉ねぎ・にんにくを中火で茶色くなるまで炒めます。

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玉ねぎがしんなりして茶色くなってきたら酸味を作る赤ワインと香りに複雑性を与えてくれるポルト酒を入れて煮詰めます。

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水分が煮詰り味見をして、ほんのりポルト酒の甘みを感じられたら火を止めて小さい鍋に移し替えます。

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このソースには味の軸になる要素がこの時点ではありません。

レストランでソースを作る際、肉のソースであるならば肉から抽出した出汁の旨味を煮詰めて作るジュ・ド・ヴィアンド(Jus de Viande)などを入れてソースの骨格を作ります。

動画内ではローストビーフを焼き終えた後に休ませると旨味の詰まった肉汁が少し出てきます。

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少量ではありますが肉汁をソースの中に入れますが、これだけの量ではインパクトが足りません。

そのため旨味に変わる近い要素の醤油・カソナードと蜂蜜を加えています。

醤油の塩味・香りは味を引き締めてくれ、カソナードと蜂蜜の甘みがソースに深みを与えてくれます。

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また、今回のローストビーフは冷めても美味しく召し上がれるように考慮しているので、同じく私が紹介するソースも温めても、冷めてからも酸味・甘み・複雑な香りを楽しめるようにしているのが特徴的です。

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それではソースのレシピを紹介致します。

【赤ワインのソース】
赤ワイン       150g
ポルト酒       100g
玉ねぎ        100g
にんにく        15g
塩            2g
オリーブオイル      大1
醤油          10g     
カソナード(砂糖でも可)15g
はちみつ         5g
黒胡椒          適量


【作り方】
①:牛もも肉の表面に焼き色をつける際に使用したフライパンに、オリーブオイルを足して、玉ねぎのみじん切り・ニンニクのみじん切り・塩を入れて中火てしんなりするまで炒める。

②:①に赤ワイン・ポルト酒を加えて液体をしっかり煮詰める

③:②の液体が煮詰まってたら別の鍋に移し替えて、醤油・カソナード(砂糖でも可)を加えて粗熱を取る

④:はちみつと黒胡椒を加える


【赤キャベツのソテー】

続いて付け合せで一緒に盛り付けた赤キャベツのソテーのお話です。
こちらは過去のYouTube 動画でも紹介した一皿がベースになております。

過去のYouTube動画内ではクランベリーの香り・リンゴ酢の酸味と角切りにして一緒にソテーしたリンゴの甘みを引きだして芳醇な香りのパート・ブリゼ生地と一緒に赤キャベツの旨味・食感を楽しめるように仕上げています。

今回は赤キャベツをシンプルにオリーブオイルで短時間強火でソテーして食感を残しつつ、リンゴ酢で酸味を加えて色鮮やかに仕上げています。

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歯切れのの良い赤キャベツの食感と酸味は、噛みごたえのあるローストビーフの付け合せにもってこいです。噛みしめるごとに、にじみ出てくるローストビーフの肉汁と旨味をキャベツの香り・旨味・そして僅かな酸味が引き立てて、咀嚼し終えて飲み込んだ後でさえ心地よい余韻を口の中いっぱいに広がり続けてくれます。

動画内では、盛り付ける時に赤キャベツのソテーと先ほと紹介したソースを合わせてからお皿に盛り付けています。

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理由はローストビーフの旨味・ソースの複雑性・赤キャベツの心地よい食感辺が合わさったときの一体感を味わってもらいたいからです。

ローストビーフ単体で召し上がっていただいても、もちろん美味しいですが、それぞれのソースや付け合わせの調理工程を丁寧に施して、特徴が最大限に生かされた素材のマリアージュを体感できる人さらになっております。


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また動画内では仕上げに西洋ネギ(ポワロー)をせん切りにしたものと、

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中心部分の黄色い芯部分を細かく角切りにして柑橘の風味が特徴的なEXヴァージン・オリーブオイルと合わせて下味をつけたフレッシュのポワローも添えています。

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爽やかなポワローのフレッシュな香りがお皿全体の良いアクセントの役割を担ってくれます。

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盛り付ける際にパルメザンチーズも少量ふりかけると、風味と旨味が増すのでオススメです。❗

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【赤キャベツのソテー】

赤キャベツ       200g
塩             2g
オリーブオイル      15g
リンゴ酢         50g
黒胡椒          適量
【作り方】
①:赤キャベツをせん切りにして、オリーブオイルを引いた強火に熱したフライパンに入れて塩を加えて炒める。

②:①の赤キャベツが全体的にオリーブオイルがまわり熱くなってきたら、リンゴ酢を加える

③:赤キャベツが全体的に色が濃くなりリンゴ酢が煮詰まってきたら火を止めて仕上げに黒胡椒をふりかける

『フランス料理はソースが命』言われることがあります。

この言葉は高級フランス料理の華麗なテクニックや強く印象に残る複雑な味わいから来るものと一般的には理解されていると思います。

それに対して、10年以上も前に読んだ画家でフランス食文化に精通している画家の玉村豊男氏が書いていたコラムの文章はとても印象的で、私は今でも心に留めています。

【21世紀の料理を考えるためのいくつかのヒント・ヨーロッパ食文化の古層】より引用
そもそもソースの成り立ちを想像してみれば、例えば肉を焼いた時に滴り出る旨味を含んだ汁を、一滴残らず絡め取って再び肉と合わせる、出たものは決して無駄にしない、という、大切な食材を徹底的に利用する精神がその根本にあると考えるのが妥当だろう。

ソースが命であるのは、それがフランス料理の高級感を象徴しているからではなく、ソースと食材が一体化した力強い料理を食べた時に『命の力』を実感することができるから、ではないだろうか。

ソースや付け合せは見た目の華やかさや季節の旬だからという理由で使用される事が多い傾向にあります。

また調理工程の中には、様々な無駄や破棄せざる負えない部分が出てしまうのが、現代のフランスにある高級レストランの傾向でもあります。

目指すべき一皿を作り上げる中で

『手段が目的になっていないか?』

『素材から何を表現したいのか?』

とい根本的な部分を見つめ直せる糸口として、【前編】・【後編】に分けて紹介した今回のローストビーフのお話がお役に立っていただければ幸いです。

おしまい

調理工程は前回のローストビーフの記事全編同様にYouTube動画で見ることができるので、ぜひ気軽に遊びに来てください❗

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Chef Ichi


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