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現代フランス料理の魅力とは?中編

日本からの訪問者


パリのメトロでの出来事から数ヶ月前のことです。

当時私はスーシェフとして、ボルドーにあるピエール・ガニェール氏の2ツ星レストラン【ラ・グランメゾン】に勤めていました。

とある日のランチに一人の日本人男性客が食事に来ました。

その男性は大阪の某ホテルに勤めているという料理人で、年齢は私と同じくらいの30代前半。

見るからに料理経験も日本で積んできているように見えました。

彼いわく、長期間星付きレストランでの研修を目的にフランスに滞在して、休みの日や研修先の移動日を利用して、星付きレストランを中心に食事に来ていると言う。

短期間で食事にいったレストランの数は、星付きレストランだけで、私が聞いても驚くぐらいの数の二つ星、そして三ツ星レストランを回って食事をしていると彼は私に話してくれました。

そんな彼との食事後の会話で

彼はとても喜んで、今日の食事はとても素晴らしい時間を過ごせたと言った。

ただこの数ヶ月間に及び、数十件の星付きレストランで食事してきたが正直がっかりする食事が多かったという。

それは味やサービスのことではなく、出てくる料理に醤油、和出汁などの日本人にとって馴染みのある味わいから調理法による食感、フランス料理以外で味わう事のできる風味などを多く見られたからというものでした。

彼以外にも、私は他の日本人からも同じような感想をフランスの星付きレストランでの食事体験で感じたと耳にすることが多々あります。

また私自身も同様に数年前、似たような感覚を抱いた記憶がありました。

とあるフランス北部の二つ星レストランで出てきた魚料理のソースがグリーンカレーだった時は、正直「何故?」と感じていたことです。

レストラン意外の食事でも、実は私自身同じような感覚は既に何度も体験していることを思い出すのでした。

有名フランス人シェフのレシピを見た時もそう、実際自分が以前の職場でドレッシングやソースを作る時にも、そこでは当たり前のように醤油や日本酒、ニョクマムにカレーパウダーが使われていたからです。

そのような体験や感覚を重ねるごとに、ようやく頭の片隅に常にあった疑問【フランス料理って一体なんだろう?】と自分の今までのフランス料理の常識について改めて考えるようになっていったのです。

日本で憧れたフランス料理

日本で私がフランス料理に憧れて学び始めた当時のフランス料理の多くは、古典フランス料理をベースとした料理が認知されており、親しまれていた。

魚や肉の調理にバターやクリームソースにはお酒を使うことで香りや味わいに複雑性をつくり、力強い印象のフランス料理が当時の日本を代表するフレンチ。

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そして食事に来た日本人男性客の方も同じく、日本にフランス料理が広まっていった70〜90年代の一部の高級フランス料理こそが、フランスにおけるフランス料理であると捉え、認識していたから起きた結果でもあるいえるのではないでしょうか?

つまり我々日本人の持っているフランス料理に対する固定概念が非常に偏っていることが、日本人と現代フランス料理の、いや敷いては美食に対する壁になっているとも私は感じたのです

現代フランス料理とは?


私が仕事の拠点をボルドーに移してフランス滞在7年目を迎えていた頃です。美食を求めてフランスに移住し、フランス料理の本質美食の魅力をどのようにこれから自分自身で表現していこうかと考えていた時期でした。

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「これがフランス料理のすごいところです」

「これこそ美食なんですよっ」

と、当時私はそれを魅力的に話すことができませんでした。

確かに料理の技術も知識も身につけることはできました。

しかし私より優れている人がたくさんいるこの世界で、何が自分の魅力で、その魅力を発信するためにフランス料理の本質や美食の魅力を自分でも理解できていないのが正直なところでした


フランス料理を学ぶために、日本で日本人の作るフランス料理であっても、フランス料理の古典を学び、料理を味わうことでそれぞれの地方の特色や歴史を理解するきっかけにはなります。

ただ、

「現在のフランス料理とは何?」

「美食の本質は?魅力は?」

と問われたときに、島国で単一民族の日本人には難しい質問なのではないでしょうか?

複数もの国と接し、移民の多い国であるフランスの生活環境をあまり知らない我々日本人にとって、実際に見て体験しない限り現代フランス料理はとても理解しにくい困惑する料理でもあることは事実だと感じています。

例えば海外の方から

「日本料理は、寿司、天ぷら、すき焼きでしょ?」

と言われても、それらは日本料理を象徴する料理の一部に過ぎません。

それら以外にも日常的に食べている日本人の食事があることは言うまでもないことです。

気軽に中華や、東南アジアの料理を家庭の料理に取り入れ作って食べるし、西洋から来た料理を独自にアレンジして進化した洋食は、今では日本人の食生活に切っても切り離せないと言っても過言ではないと思います。

それらはまさしく現代の日本料理であるといえるのです。

フランスのレストランや友人宅での食事、マルシェで買い物をするときに気付かされることは、近隣諸国から来る食材に巡り会える機会の多さです。

スパイスだけでも少なくとも20種類以上は異国から輸入されたものを、スーパーで見つけることは容易です。

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そしてそれらはフランス料理の中に自然に溶け込んでいます

多くの移民で成り立つフランスで、時間をかけて少しずつフランスの食生活の中に溶け込んできたということの表れなのです。

日本の食材も私が初めて渡仏した2010年に比べ、一般の人にも十分に認知されている食材や料理が多くなってきたと思います。

うどん、お寿司を作るキット醤油にわさびは手軽に購入できるようになってきましたし、本屋には日本の一般家庭の料理を丁寧に紹介したレシピ本も売られています。

こうしてフランス料理の中に自然と他国の食材や、料理のレシピが移民と共に、フランス人の生活に馴染むということはその逆もあるのではないでしょうか。

つまりどこの国に行っても、フランス料理はその国の食材、スパイス、ハーブ、調味料で美しく料理を表現できるということです。

バターやクリームがなくても、醤油や和出汁を使っても、酢飯を使っても、カレースパイスがふんだんに使われていても。


世界中のフランス料理


東京に限らず、なぜ日本にはこれだけ多くのフランス料理店があると思いますか?

【日本人の技術が優秀だから?】

【日本人の持つフランス料理への強い憧れ?情熱?】

それらの理由ももちろんあるでしょう。

しかし本質は、フランス料理自体が日本の土地で、日本の食材、調理法を用いても魅力的に表現できることにあります

それは日本だけに限らず、世界中に多くのフランス料理店が存在して、フランス料理がいつの時代も世界の美食の中心である理由の一つでもあると私は考えています。


それでは今日はここまで!

続きは【現代フランス料理の魅力とは?後編】にて!

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Chef ichi




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