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現代フランス料理の魅力とは?

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いつの時代もフランス料理が世界の美食の中心である事を理解することが、人を癒やし勇気づけるヒントになる・・・かもしれない
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ステレオタイプの料理から自由になる日【後編】

ステレオタイプの料理から自由になる日【後編】

鴨胸肉のカルパッチョを題材に本来あるべき料理の幻想から、なるべき理想の料理へとシフトする時代。

料理も一定の場所でしか表現できなかった環境から、一瞬で世界中にレシピを含めた料理の写真や調理動画を届けることができる時代になってきました。お陰でより多くの人が、今まで知ることもできなかった世界中の料理から、料理人の哲学的な考えに触れる機会が増えたことは、この10年で大きく進歩したことだと思います。

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ステレオタイプな料理から自由になる日【中編】

ステレオタイプな料理から自由になる日【中編】

島国の日本とは異なり陸続きのフランス。

国境付近は両国の文化が融合し、独特の文化が発展した魅力的な地域もあります。

その中でも食文化にフォーカスしたときにフランス全土に視野を広げると、フランスの国境付近だけでなくても、隣国の食材やレシピは様々なところで見ることがあります。

特にフランスを中心にして見てみると、イタリアやスペインのそれぞれの国で生まれた食材やレシピに、調理法等は、フランスではレ

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ステレオタイプな料理から自由になる日【前編】

ステレオタイプな料理から自由になる日【前編】

今回のお題は、作り手である料理人が料理に名付ける『料理名』について個人的な考えや想いを綴ります。

現代のフランスを中心に欧州各国で活躍する料理人の自由な発想や創造力。そんな彼らの料理に僕は影響を受けています。

もしかしたら『和食』の世界や『日本のフランス料理』を生業にされている方には、伝わりにくい内容になっているかもしれませんが、フランス料理を中心に欧州各国の現代料理に興味があれば、楽しんでい

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料理名からも紐解ける現代フランス料理の魅力

料理名からも紐解ける現代フランス料理の魅力

パリで大活躍されているソムリエールの知人から一通のメッセージが届きました。

彼女とは面識はないものの、2020年にフランス政府が公衆衛生上の非常事態宣言したことで外出禁止となり、たまたま友人のご縁が重なり連絡を取るようになりました。

彼女からくるメッセージは頻繁ではありませんが、内容は決まって彼女が疑問に持つフランス料理のレシピに対する質問です。

彼女からの質問はこのようなものでした。

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美食の街リヨン【後編】

美食の街リヨン【後編】

リヨンが美食の街である本質的な意味を紐解いていくには、ある人物の存在を知る必要がある。

何故ならばその人物こそが

「リヨンはガストロノミーにおいて世界の首都だ」
っと言った人物であるからだ。

この言葉の根本を理解するとリヨンのみならず世界中に点在する美食の街、しいては美食が私達に教えてくれる本当の役割を知ることができる。

彼の名前はキュルノンスキー(Curnonsky 1872-1956

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美食の街リヨン【中編】

美食の街リヨン【中編】

リヨン料理の特徴とその物語

南北の岐路に位置する美食の街リヨンの料理はフランス北部と南部の両方の性質の異なる料理の影響を受けて発展してきた。

北部のロレーヌ・アルザス料理からはバターとクリーム。

南部のプロヴァンス・地中海料理からは旬野菜とオリーブオイル。

そしてルネサンス時代にスパイス貿易の中心地だったことからリヨン料理で有名な臓物料理や豚肉のパテになどには香辛料もよく使われる。

また

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美食の街リヨン【前編】

美食の街リヨン【前編】

2020年でフランス生活10年目を迎えた今年。私は以前4年間ほどフランス第二の都市、そして美食の街として有名なリヨンで生活していたことがある。

リヨンに住んでいた当時、私は決まって休日や平日でも時間さえあれば一人でカフェに行くのが習慣となっていた。カフェで飲むコーヒーが好きというよりかは、20代前半の頃から習慣となっている日記を書くためである。

日記を書く時間はとても心地よく、頭の中にある自由

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現代フランス料理の魅力とは?後編

現代フランス料理の魅力とは?後編

パリの観光名所
初めてパリを観光で訪れる人の多くはパリを象徴するエッフェル塔や、凱旋門を訪れるように、はじめからパリのアラブ人街やアジア人街などの移民街を観光の目的で訪れる人はよっぽどの理由がない限りいないと思います。

しかしパリ市内の大部分はそういった移民地区によるものであることを皆さんは御存知であるだろうか?

我々日本人のイメージするおしゃれなシャンゼリゼ通りや、歴史を感じさせるルーブル美

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現代フランス料理の魅力とは?中編

現代フランス料理の魅力とは?中編

日本からの訪問者
パリのメトロでの出来事から数ヶ月前のことです。

当時私はスーシェフとして、ボルドーにあるピエール・ガニェール氏の2ツ星レストラン【ラ・グランメゾン】に勤めていました。

とある日のランチに一人の日本人男性客が食事に来ました。

その男性は大阪の某ホテルに勤めているという料理人で、年齢は私と同じくらいの30代前半。

見るからに料理経験も日本で積んできているように見えました。

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現代フランス料理の魅力とは?【前編】

現代フランス料理の魅力とは?【前編】

美食のヒントはパリのメトロから!
フランス料理を愛してやまない料理人ならば一度は訪れてみたいと願うであろうフランス最大、そして世界有数の大都市パリ。

魅力あふれる観光スポットに、星付きレストランを始めとする多くの素晴らしいレストランが数多く点在しているのは料理人でなくても承知の通りである。

そんなパリを満喫するための移動手段は、公共バス、タクシー、レンタル自転車、そしてゆっくりと時間に縛られる

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