永遠の詩【土方歳三】-薄桜鬼- ✎

※薄桜鬼の二次小説です






多くの仲間を戦で失い、別れを告げ来た俺は今、蝦夷の地にいた。

傍らには無理やり蝦夷まで乗り込んできた雪村がいる。

江戸へ帰す機会は幾度もあった。

だが頑固なコイツは俺の傍を離れなかった。

雪村は黙って書類の整理をしながら、文机の上にある湯呑みの中身を気にしている。

「雪村、お前は何故此処にいる?」

「えっ?」

「何故頑なに江戸に帰ることを拒んだ?」

雪村は俯き黙りこくる。

「今までの延長で俺の世話をやくためにいるのなら、必要ねぇ」

この蝦夷の地はやがて戦場になる。

そんなことはこいつも十分にわかっているはずだ。

「命の保証もねぇ、お前を守ることもしてやれねぇ、そのくらいわかってるな?」

俯く雪村の肩が震えている。

「最後の通告だ。江戸に帰れ」

わざと冷たく言い放ち背を向けた。

「嫌です」

「なんだと?」

振り返り睨みつけると、泣きそうな顔で歯を食いしばる雪村がいた。

「私は帰りません。此処にいます。皆さんとの約束を果たすためです」

「………」

「私は皆さんと約束しました。新選組の行く末を見届けると…」

「新選組はもう無い!」

大きな声で怒鳴ったが、雪村が怯むことはない。

「新選組はあります!まだ息づいています。それを一番知っているのは土方さん、貴方ではありませんか」

「なんだと?」

「貴方が新選組そのものです。仲間と死に別れ、決別を繰り返す…その度に皆の意志を抱えて来たのは貴方ではないですか!」

雪村は肩を震わせながら泣いていた。

「貴方がいる限り新選組は無くなりません。だから私は…」

気がつけば雪村の小さな体を抱きしめていた。

「新選組は今も武士の道標だと思うか?」

「はい…」

「俺はあいつらの…意志を引き継げていると思うか?」

「はい!」

雪村はしゃくりを上げながら言葉を続ける。

「皆が愛したものは今も貴方の中に…今も新選組に息づいています。だから見守らせてください。最後まで…この命が尽きるまで」

「頑固だな」

「土方さんには負けます」

「ふん…そんな俺に惚れたんだろ?」

途端に雪村の顔が真っ赤に染まる。

「気づいてないと思ったのか?俺はお前みたいに鈍感じゃねぇよ」

言い訳をしようとする雪村を唇で無理やり塞いだ。

「俺は終わりなんざ求めてねぇ…生きたいから足掻き続ける」

「はっ…」

雪村が息継ぎをしたのか返事をしたのかわからないまま、再度唇を塞ぐ。

「俺はきっとこれからも走り続ける。俺は待たねぇ。だからお前が必死についてこい」

「はい…」

俺達は無粋な大鳥が執務室に現れるまで、互いの体を離さなかった。










ー ෆ

土方さんの誕生日SSはガチなやつ書いたんですが

作った動画眺めているうちになんか書きたくなってしまいφ=φ_(:P 」∠)_

動画と作中の台詞の一部はゲーム内の台詞をそのまま、もしくは少し変えたものです(無印の方で、真改の方は同じかは知りません)

やっぱり私の中での土方さんは薄桜鬼(あくまでも無印の方)のイメージが強いなぁ

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