バトルマンガのアクションシーンを描くのに参考になりそうな映画リスト
こんばんは、チェ・ブンブンです。
Webtoon企画作家であり脚本家のみじんこさん( @mijin_combi )から映画noteのリクエストをいただきました。
▲前回のリクエスト
今回のお題はこちら!
「バトルマンガのアクションシーンを描くのに参考になりそうな映画リスト」
漫画家が映画を参考にする話は「GANTZ」の奥浩哉や「チェンソーマン」の藤本タツキなど枚挙にいとまがない。確かに、マンガにおけるコマ割りは映画によるショットに通じるものがあり、いかに躍動的に描けるのかはコマ割り、ショットにかかっているといっても過言ではない。
ということで、今回は配信で観られる作品の中からバトルマンガのアクションシーンの作画に参考となり得る映画をいくつか紹介しよう。
1.眠狂四郎 勝負(1964)
アクション映画を研究するのであれば、三隅研次をオススメしたい。「座頭市」シリーズや「子連れ狼」シリーズなどといったジャンル映画において、アクションの手法をひたすら探究し続けた人物であり、彼の手にかかれば観たことのないようなアクションが観られる。
そんな彼の『眠狂四郎 勝負』は、剣豪である眠狂四郎をどのように倒すかある種のファンミーティングを行っている輩との対決が描かれる。実際に眠狂四郎を前にすると、大迫力な間でもってあっさりと倒されてしまう。しかし、別の場面では拮抗する側面もある。アクションは単に速い攻撃を入れるだけではなく、カッコいいアクションを魅せるための間が必要であり、本作はそのヒントを与えてくれるのである。
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2.宇宙戦争(2005)
スピルバーグは多くの大衆娯楽映画を放っているが、緻密なアクションを積み重ねる監督でもある。『宇宙戦争』は巨大なトライポッドの襲来により、人類が蹂躙されていくのだが、ただ単にレーザーで人を粉砕することはしない。車のフロントガラスを貫通し、人を灰にする細かさがあるのだ。また、焼けた戦車が丘から転がるようにして迫ってくる様子を通じて、侵略者の圧倒的強さを表現したりする。宇宙人と地球人とでは言葉は通じない。運動と、それを捉えるショットによって関係性を示しているのである。良い漫画の特徴のひとつとして「言葉がなくてもドラマが動くこと」が挙げられるが、その研究にスピルバーグはもってこいといえよう。
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3.見知らぬ乗客(1951)
サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックの代表作。実はスポーツ映画としても秀逸だったりする。テニスプレイヤーが、敵より先回りして目的地に到達するために試合に勝とうとするのだが、対戦相手が粘ってなかなか勝てない焦燥感を捉えている。スポーツバトルマンガの参考になる映画と言える。また、サスペンス映画としても秀逸で、粘着質な男が大胆な間合いで女を追い回す。ただ立っているだけなのに不気味な遠くからのショットは、恐怖の間を学ぶのに有効な作品である。
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4.バッドガイズ(2022)
マンガを描く上でアニメは参考になるであろう。ドリームワークスは『スパイダーマン:スパイダーバース』からインスパイアを受けて、ゲームのような速い運動と停止を巧みに使ったアクションによって泥棒ものを作り上げた。本作では、画の作り方が秀逸であり、落下する者を捕まえようとする際に、円を構築することで奥行きを与えることに成功している。また、下降、上昇の運動による省略で、爆発の瞬間を省略するといった高度なテクニックが施されている。アナログよりなアクションが実装できる映画と比べ、デジタルなアクションでシームレスな運動を表現しないといけないマンガにとって本作の技法は参考になるであろう。
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5.ブレイブ 群青戦記(2021)
せっかくなので、ここでマンガの実写化における成功例を提示したい。それが『ブレイブ 群青戦記』である。スポーツ進学校が戦国時代にタイムスリップしてサバイバルを強いられるといった内容。高校生でも容赦しない殺戮、死を前に各々の得意分野を手繰り寄せて勝利へと導く演出は友情・努力・勝利の方程式に従っている。本作が素晴らしいのは、時代劇として膨大な人々による群れをダイナミックに演出している点であり、攻略するための難攻不落さを示すために城の高低差が用いられている。ネタと思われるプロットながら、時代劇における空間構図に真摯な作りとなっているのだ。
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6.必殺!恐竜神父(2018)
映画は物理法則といった制約があるので、マンガよりも不自由であることが多い。確かに今はVFXが発達している一方で、リアルさを求めるために物理法則の順守は欠かせない。ただ、B級映画は「そんなこと、知ったこっちゃない」と開き直っていることが多く、それが思わぬ表現を提示するケースにつながっている。本作では予算不足なためか、車の爆発シーンを"VFX:Car on fire"とテロップで表現する印象的な場面がある。また、神父のバトルシーンではマンガのようにコマを割り、その鬩ぎ合いで演出されていたりする。マンガ的な演出溢れる作品なのだ。
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7.遥かなる国の歌(1962)
小林旭の音楽バトル映画。画面構図の勉強になる作品であり、序盤、バーで喧嘩を売る場面では、静寂が勝敗の行方を分からなくする緊迫感を生み出している。また、廃墟同然のビルの端々から仲間が顔を覗かせ集まってくる躍動感、ヤクザがクラブへ殴り込みに来る場面におけるセットを壊さないよう気遣いながら敵を倒す演出は必観である。運動によって登場人物が何を大切にしているかを提示する技法に学ぶものが多い。
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8.LETO-レト-(2018)
実写と落書きが混ざり合うユニークな演出で知られる本作は、実写的なリアルさとマンガ的なフィクションらしさを手繰り寄せるアイデアとして有効な作品と言える。松山ケンイチそっくりな男がバンドマンとして成功していくまでの過程を描いた伝記映画。映画になった時点で脚色が加わる虚構性を、落書きや第四の壁を破って語る者によって強調している。アクションとしては"Psycho Killer"が流れる電車でのバトルシーンが面白い。
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9.ハードコア(2015)
主観によるアクションを演出したいのであれば、全編POV的ショットで撮られた『ハードコア』がオススメだ。目を覚ますと改造人間にされていた主人公が、次々と現れる敵を倒していく。空中落下に始まり、激しい戦闘、主観としてのブレなど圧倒的手数で駆け抜けていく。この演出をコマ割りしていけば、タテスクロール型マンガに躍動感が生まれてくると考えられる。
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10.鵞鳥湖の夜(2019)
警察を殺してしまった男が、街の中に潜伏し追う/追われるの関係が発生していく中国のフィルム・ノワール。シームレスに街に溶け込む男の美しさ。次々と現れるアイテムのユニークさが堪らなく、特にビニール傘を用いた戦闘シーンはマンガ的な面白さがある。手つきや人間の移動にこだわった撮影が多く、奥行き、高低差を用いたショットも多いので十分、マンガに応用できると思う。
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