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リースバックで老後の資金は賄える?リバースモーゲージとの違いも解説

「年金収入だけじゃ生活が不安」「病気や要介護になったときの費用をどうしよう」と心配される高齢の方やご家族も少なくありません。

年金だけでは医療や介護などの突発費用を賄えない可能性があります。そんなときに頼りになるのが、近年注目の「リースバック」。自宅不動産を売却してまとまった資金を得た後に、賃貸で家に住み続けられるサービスです。

しかしまだ体験事例が少なく、「罠」「やばい」などのネガティブな情報もちらほら。検討を始めたもののメリットやリバースモーゲージなどとの違いがわからず、迷う方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、そんなリースバックについて、利用目的や活用方法、メリットとデメリット・注意点を解説。「リバースモーゲージ」や他の資金調達方法との比較も交えて、解説していきます。


リースバックの概要と活用方法



リースバックとは、持ち家を売却してから、その家を賃貸で借りて住める不動産取引手法のことで、「セール・アンド・リースバック」とも呼ばれます。具体的には、不動産の売却と賃借の2つの契約を締結します。
家を売却するのでまとまった資金を得られ、家から引っ越しせずに済む点が特徴です。主な利用目的と活用方法には、以下が挙げられます。

  • 住宅ローンなど借金の完済

  • 事業の立て直し

  • 相続対策

  • 医療・介護費用の捻出

住宅ローンなど借金の完済

リースバックは、住宅ローンやその他の借入・返済の負担を減らす目的で多く利用されます。

近年は住宅ローンを完済するために、リースバックを利用する人が増えています。また「ローンをまとめたいが、借り入れが多すぎて審査が通らない」といった場合でも、リースバックでローンを完済し、整理できるケースがあります。

事業の立て直し


リースバックは事業の建て直しや運転資金としても活用できます。

リースバックでは自宅だけでなく、事務所や店舗、マンションまで幅広い不動産が対象です。資金の用途にも制限がないため、事業の建て直しや運転資金に回すことも可能です。

一時的な資金繰り悪化の場合は、収益力回復と同時に物件の買戻しもできるでしょう。

相続対策

リースバックは相続対策にも有効です。

資産が不動産しかない方は、相続時に遺産の分割で揉めてしまいがちです。しかしリースバックで家を売却すれば、不動産を現金化できるため、子どもたちへ平等に分割が可能です。

生前の話し合いや遺産分割協議でも、不動産の分配は話がまとまりにくいため、トラブル回避のために現金化しておくことも方法の1つです。

急な入院や介護に備える

リースバックによる現金化では、急な入院や介護の費用にも備えられます。

日常の生活費は年金で賄えても、入院や介護施設の入居費用が用意できないという方は少なくありません。リースバックでまとまった現金を得られれば、必要な治療や介護を受けることが可能です。

リースバックのメリット


リースバックのメリットは以下のとおりです。

  • 住み慣れた自宅で暮らせる

  • 引っ越し費用がかからない

  • 周囲に知られず売却できる

  • 現金化が早い

  • 固定資産税などの維持費がかからない

  • 災害時の破損修繕は貸主側が負担してくれる

  • 相続(遺産分割)の心配をしなくてよい

  • 契約と条件によっては将来買い戻せる

リースバックでは家を売却しても引っ越す必要がないため、住み慣れた自宅で暮らすことが可能です。長年のお付き合いのあるご近所さんとも交流を続けられ、行きつけのスーパーも変えずに済みます。

リースバックでは家の広告を出すわけではないため、周囲に知られずに売却が可能です。また会社が直接家を買い取ってくれるため、仲介で売却するよりも短期間で現金化できます。

家の所有権を手放しているため、固定資産税や維持費の負担、さらに災害時の修繕負担を負わなくて済むことも、リースバックのメリットです。

リースバックのデメリットと注意点


一方で、リースバックには以下のデメリットと注意点もあります。

  • 子供が相続できない

  • 家賃が相場よりも高く、値上げもあり得る

  • 長く住めない可能性がある

  • 修繕費用がかかる場合もある

  • 買い戻しできるとは限らない

  • 評価額によっては契約できない場合もある

デメリットと注意点を知らずに契約するとトラブルの原因にもなるため、確実に押さえておきましょう。

子供が相続できない

リースバックでは家を売却するため、名義が変わり子どもは相続権を失います。

子供がリースバック契約していることを知らなかった場合に、相続できないと知ってトラブルになるケースも少なくありません。

後述するリバースモーゲージと異なり、リースバック契約では契約時に推定相続人の同意は不要です。とはいえ、トラブルを未然に防ぐためには、推定相続人である親族に相談することが大切です。

家賃が相場よりも高く、値上げもあり得る

リースバックの家賃は、周辺相場よりも高めに設定されるのが一般的です。

理由は、リースバックの家賃の決め方は周辺相場とは無関係で、物件の買取価格から算出されるためです。住宅ローンや抵当権が残っている場合にも、家賃が高く設定されます。

家賃を払えなければ通常の賃貸借契約と同様、一定の手続きを経て退去を迫られてしまうため、注意が必要です。

リースバックの家賃を払いながら、生活していけるのかどうか、事前のシミュレーションが重要です。

また、契約更新等の際に、家賃が値上げされる可能性も否定できません。原因としては、オーナー変更など経営側の事情が考えられます。

家に長く住みたい場合は、運営会社に契約内容を確認し、契約書面に売却防止の記載をするなどの対策が必要です。

長く住めない可能性がある

リースバックでは長く住めない可能性があり、実際に退去を迫られたトラブル事例も少なくありません。

賃借(借家契約)には「定期借家契約」と「普通借家契約」の2種類があり、リースバック契約は「定期借家契約」という期限つき契約が一般的です。

定期借家契約では、オーナーに更新を拒否する権利があるため、更新してもらえなくても違法になりません。これに対し普通借家契約では、借主が希望すれば更新できるため、長く住む予定なら普通借家契約を選ぶ必要があります。

修繕費用がかかる場合がある

家のメンテナンス費用が不要なはずのリースバックですが、修繕や修繕費の支払いを求められる場合もあります。

借主に修繕義務が生じるのは、1つは契約以前からあった汚れや損傷などです。最悪、雨漏り補修やシロアリ被害のような大規模補修を求められるケースもあり得ます。

その他一般の賃貸借契約と同様に、借主の不注意や過失により生じた汚れや傷などは、借主に原状回復の義務があります。具体的な線引きについては、以下のガイドラインを参照してください。

参照:住宅:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について-国土交通省

買い戻しできるとは限らない

「自宅を買い戻すつもりで一時的にリースバックを利用したのに、実際には買い戻せなかった」というケースも少なくありません。

主な原因の1つ目は、買い戻し価格が高いことです。リースバックの買戻し価格には諸経費が上乗せされ、売却時の1.1~1.3倍前後になる場合が多いです。

買い戻せない原因の2つ目として、オーナーチェンジにより不動産の運用方針が変わったことが考えられます。

将来家を買戻したい場合は、契約時に「買い戻し特約」をつけるとともに、契約条件を入念に確認しましょう。また売却時よりも高い買取価格を支払えるかどうか、シミュレーションしておくことも大切です。

評価額によっては契約できない場合もある

家の買取査定額が想定よりも低い場合に、リースバックを利用できないケースもあります。

住宅の評価額が住宅ローンの残債額を下回っていた場合(オーバーローン)、売却益でローンを完済できず抵当権を解除できません。抵当権が着いたままでは売却自体が不可のため、リースバックはできないのです。

オーバーローンでリースバックを利用するためには、自己資金で住宅ローンを完済するしかありません。

リースバックと似た制度「リバースモーゲージ」との違い


リースバックと並んで、老後の資金調達にしばしば活用される制度に「リバースモーゲージ」があります。リースバックと似ていて、説明を聞いても違いがよくわからなかったという方も多いでしょう。

ここではリースバックとよく混同されるリバースモーゲージについて紹介し、リースバックとの違いを解説します。

リバースモーゲージとは?

「リバースモーゲージ」とは自宅を担保に融資を受け、本人の死後に、担保の不動産を売却して一括返済をする制度のこと。老後資金を借りられるシニア向けローンと考えて頂ければわかりやすいでしょう。 

リバースモーゲージの取扱機関は、金融機関と社会福祉協議会です。
一番の特徴は、自宅の評価額から決められた融資枠の中で融資を受け、契約期間中の返済は利息のみという点です。

融資の上限額は不動産の評価額の50~70%が一般的です。

本人死後の不動産処分は金融機関が行うため、リバースモーゲージの契約時点で「推定相続人すべての同意」が必要になります。

 リバースモーゲージがおすすめな方と注意点

リバースモーゲージは、以下のような方にはおすすめです。

  • 不動産以外の資産が少ない

  • 住宅ローンの残債がある

  • いずれ高齢者住宅に移るつもり

  • 相続人がいないか1人だけ

一方でリバースモーゲージには、以下のデメリット・注意点もあります。

  • 融資のため審査が厳しい

  • 資金の使途が限定されている

  • 固定資産税の納税義務がある

  • 配偶者以外の家族の同居が認められない

  • 担保不動産の評価額下落リスクがある

リバースモーゲージは家を担保とした融資のため、審査があります。条件によっては審査に通らない可能性もあり、高年齢や低収入の場合は、リースバックを選択するほうがよいケースもあります。

 また、事業や投資が認められないなど、融資条件として資金の使い道に制限があります。商品によっては使途がリフォームや新築、住宅購入、老人ホーム入居などに限られる場合もあり、取り扱い機関によって異なるため、個別に確認が必要です。

リースバックとのもう1つの違いは、不動産の名義が移行しないため、固定資産税と住宅の維持管理負担があることです。 

支払いは利息のみのため、月々の負担が少ない点はリバースモーゲージのメリット。ただし金利が上昇した場合に、支払い負担が増える可能性があります。

また将来、担保不動産の評価額が下落する可能性があり、借入限度額の減額リスクや、売却後に相続人に返済負担が残るリスクがあります(「ノンリコース型」を選択すれば相続人による返済は不要)。 

リバースモーゲージでは、配偶者以外の家族の同居が認められず、たとえ子供であっても原則同居できません。 

参考:国民生活センター「リバースモーゲージとリースバック

リースバック・リバースモーゲージ以外の資金調達方法

資産が自宅しかない場合の資金調達方法は、リースバックとリバースモーゲージだけではありません。ここではその他の方法を紹介します。

資金調達までの時間やご自身の条件に合わせて、適切な方法を選択しましょう。

仲介による売却

家をもとに資金調達する方法の1つ目は、不動産仲介による売却です。

仲介業者の力を借りて、家を高く買ってくれる相手を探せるため、他の方法よりも高額な資金を調達できる可能性が高いです。買主のニーズに合えば、相場よりも高く売れるケースもあります。

ただし仲介では、売買成立と完了までに時間がかかり、売却活動開始から引き渡しまで、3ヵ月~半年以上かかることが一般的です。

仲介は高く売却したい場合に適していますが、早く現金化したい場合はほかの方法を検討する方がよいでしょう。

買取による売却

家をもとに資金調達する方法の2つ目は、買取による売却です。

仲介との違いは、不動産会社に直接買い取ってもらうため、スピーディーに売却でき、内覧などの売却活動も不要なことです。

買主を探す必要がないため、買取では早ければ数日で現金化でき、一般に家を担保に借り入れるよりも高い資金を調達できます。

買取のデメリットは、市場相場の7割前後の買取価格になることです。そのかわり築年数が古い住宅のような、売れにくい物件でもそのまま買取ってくれる会社が多いため、急いで現金化したい場合に活用できます。

不動産担保ローン

不動産担保ローンは、不動産(自宅)を担保にする融資です。

無担保ローンよりも低い金利で融資を受けられ、まとまった資金を調達できること、高齢者でも比較的借りやすいことが特徴です。

長期返済が可能であれば、借入期間を20~30年で組むことも可能です。

不動産担保ローンのデメリットは、手数料が高額になる場合があること、返済できなかった場合に家が処分されてしまうことです。また、リバースモーゲージと同様に、家の名義があるため、固定資産税や維持修繕費はかかります。

また住宅ローンを返済中だと審査に通らない可能性があるため、その場合は他の資金調達方法を選択するほうがよいでしょう。

親子間売買

親子間売買とは、親子間で家を売買する取引方法です。

不動産業者を通さなくても取引できるため、時間と仲介手数料を節約できます。贈与よりも支払う税金を抑えられることから、節税に利用されるケースもあります。

ただし、親子間売買では住宅ローンを借りにくい点に注意が必要です。また親子だからと相場よりも極端に安価な取引をすると、贈与税が課せられる(みなし贈与)場合もあります。

また、不動産の権利譲渡は登記や税金面の手続き難易度が高く、当事者だけでは正しく遂行できないかもしれません。なるべく税金や不動産の専門家にアドバイスを得て取引するほうが安心です。

よくあるリースバックQ&A


ここでリースバックについての、よくある質問にお答えします。

Q1.リースバックが「やばい」といわれる理由は?

リースバックが「やばい」といわれるのは、以下のトラブル事例があるためです。

  • 家賃を値上げされた

  • 自宅を勝手に売却された

  • 家を買い戻せなかった

  • 修繕費負担で揉めた

  • リースバック契約自体ができなかった

  • 契約後親族とトラブルになった

  • 退去を迫られた

家賃の値上げはオーナーが変わった場合などに起こります。中には、家を勝手に売却された結果、家賃を上げられたり、買い戻しを拒否されたりするケースも。

家賃や修繕費負担割合、賃借期間などは、契約時に業者との間で取り決めされているため、後から変更は原則不可能です。そのため契約時点で、詳細な取り決めを書面で残すことが重要です。

そのうえで契約前には入念な契約内容確認を行い、不明な点は締結前に確認し、解消しておきましょう。

親族間のトラブルについては、リースバックを検討する時点で推定相続人に相談することで回避できます。

参考:国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」

Q2.支払総額がかえって高くなる?

売却後家賃を支払い続けることで、支払総額が売却額を上回るかどうかはケースバイケースです。長期間家賃を払い続ければ売却益を上回ることもあるでしょう。

リースバックを契約する前に、必要資金の緊急性と、将来の支払い負担を秤にかけて検討することが大切です。

Q3.実際いつまで住めるの?

長く住めるかどうかは「定期借家契約」か「普通借家契約」か、また更新時の条件によっても変わります。

定期借家契約の契約期間は2~3年です。長く住みたい場合には、契約期間を長く設定するとともに、借主の意思で更新可能な普通借家契約にしましょう。

なおリースバックで入居できる最長年数は10年前後といわれています。買主側にすれば、本音は不動産を自由に運用したいのです。

買戻しの意思がある場合は、契約時に明記しておくことが大切です。

自身の生活スタイルに合わせてリースバック・リバースモーゲージを活用しよう



リースバックやリバースモーゲージは、家しか資産がない場合でも、自宅に住みながらまとまった金額をねん出することができます。もし病気療養などが生じた場合にも、心強いサポートとなるでしょう。

いずれもさまざまな契約要件があり、自分と家がそれらを満たしているかどうかを確認する必要があります。資金調達後に生じる支払いに対応できるのか、長期的なシミュレーションも必要です。

自宅の土地建物の資産価値を把握し、売却した場合・しない場合の生活・相続両方について、家族で話し合っておくことをお勧めします。


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