プラムジャムのおはなし。
毎年7月にはプラムのジャムを作っている。
果物がとっても好きなのだけれど、ジャムを作る作業はとりわけうきうき気持ちが弾む。
子供のころ、母がいちごやブラックベリーやブルーベリーなどをコトコトと煮ていると、甘い香りにつられて覗きに行った。
煮ている途中のものを少しだけコップに注ぎ込んで、お水と氷を足して、ジュースにして飲ませてくれるのが、楽しみだった。
いろんな果物でジャムを作るけど、わたしの中で特別お気に入りなのがプラムのジャム。
深紅の艶やかなジャムを、瓶に詰めると、毎年「またこの時期が来たんだな」と思う。
プラムのジャムとの出会いは、南フランスのマルシェだった。町の名前は、どこだったかな…忘れてしまったけれど。
マルシェと言っても、観光ガイドに出てくるような賑やかな感じではなく、小さなテーブルに品物が載せたお店がぽつん、ぽつんと並んでいる、こじんまりとしたものだった。
どのお店の人も、暇そうに椅子に腰かけていた。
その中で、色とりどりのジャムと蜂蜜を並べているマダムが一人でやっているお店があった。
いろんな色の小さな瓶があって、ふと目に止まったのが、プラムのジャムだった。(確か蜂蜜も買った気がする。)
他のジャムも美味しそうだったのだけど、プラムのジャムは一度も食べたことがなくて、もの珍しさから購入したのだった。
留学時代の私は現地で買った中古のギターに付いてきたソフトギターケース(超絶やわやわなやつ)に、そのギターと、着替えやらタオルやらを隙間なく詰め込んだものを背負って、前にはリュックをひとつ、という出立ちで旅に出ていた。
そんな姿でいたものだから、旅先で瓶を買うこと自体、重いものを増やすようで悩んだ記憶がある。
でも、この時買ったプラムジャムが、それはそれは絶品だったので、もっと買えばよかったと後悔したのだった。
皮ごと煮たプラムは、とろとろとした実の部分と、ぷちっと噛みごたえのある皮の部分と、酸味と甘味のバランスがこれまで食べたことのない素晴らしさだったのをよく覚えている。
それはそれは美味しくて、何かに付けるのすらもったいなく感じて、直接スプーンですくって大事に少しずつ食べた。
ラベルに書いてあった材料は、「プラム、砂糖、レモン」だけ。
その時は、すっかりプラムの買える時期が過ぎてしまっていたので、日本に帰ったら作ってみようと思っていた。
それから何年か経って、いわきで地元産のプラムを見つけた時、作ってみようと心が湧いた。
皮ごと煮てみたら、あの時の食感や香りが蘇って、とても嬉しかった。
それから毎年、プラムを煮るのを心待ちにして、この季節を待つのだ。
去年は3キロ煮ても、お世話になった人に手土産で持って行っていたら、あっという間になくなってしまったので、今年は4キロ煮た。
大石プラムとメスレーの2種類。
あの時のプラムはなんという種類だったのだろう。
今年こそ足りるといいなあ。
足りるかなあ。
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