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バリ島の家族

今回のバリ旅行のきっかけは、以外なところからだった。
もともとは仕事の契約が切れて無職になる4月から、友人とスペインに旅行に行こうと計画を立てていた。しかし、旅費を調べれば調べるほど円安が憎くなり、友人とタイミングがズれ、スペインはなんとなく様子見に。
そんな私をインドネシアに誘うきっかけをくれたのが、たった3ヶ月しかいなかった会社で出会った先輩。名前をKさんという。Kさんに会うまで、私はインドネシアに行こうと思ったこともなく、バリ島のことも何も知らなかった。
Kさんは、最初に出会ったときから不思議な魅力をまとう人だった。ゆったりしてて、穏やかで、夜中2時まで仕事をしている人がざらにいるチームの中で、どうしたらこんな穏やかさを保てるのだろうと思うくらい。
で、仕事中のちょっとした雑談で、Kさんがバリ島に縁があることを知ったのだった。海洋学を専攻にしていたKさんは、学業を終えた後、オーストラリアでしばらく過ごし、その後は長い間バリ島でダイビングのインストラクターをやっていたのだった。
たぶん私がバリ島に惹かれた最初のきっかけは、Kさんの人柄に惹かれたからだと思う。

「Kの友人なら、あなたは私たちのファミリーよ」

「もしバリ島に行くなら、家族のような存在の現地の人たちを紹介するから教えてね。バリ島はとても素敵なところだよ」というKさんの言葉にインスパイアされ、翌週にはデンパサール行きの片道チケットを買っていた。
それをKさんに伝えたら、本当に友人を紹介してくれて、それが私が「ホストファミリー」と呼ぶバリ島・ムンジャンガンエリアに住む一家なのです。
もうかれこれ1週間半以上、彼らのお家に泊まらせてもらって、ご飯を一緒に食べ、バリヒンドゥーのセレモニーや近所のマダムたちのバリダンスのレッスンに参加させてもらってます。
Kさんとホストファミリーの絆は強く、よくホストマムが「Kの友人なら、あなたも私たちのファミリーよ」と言ってくれる。本当にありがたい。ずっとこの出会いを大切に、交流を続けていきたい。

家庭料理が毎日の楽しみ

ホストマムは本当に料理がうまい。メインのおかずと、副菜、スープ、そしてコーンを混ぜた炊き立てのお米がたっぷり食卓に並ぶ。それを家の広場で大きなカーペットを広げて、家族4人+私、時々2匹の犬と食べる。
インドネシアの料理は何を食べても本当においしい。辛さはオプショナルなので、スパイスを足したければサンバルという唐辛子ベースのソースをつけてもいいし、つけなくても味付けがされている。このサンバルも色々種類があって、ココナッツオイルが入っているからか、辛さの中にクリーミーさがあるから食べやすく、ついつい唐辛子で舌の感覚がなくなるまで食べてしまう。
ホストマムは野菜もよく使う。庭で採れたモリンガの葉っぱを、するすると枝から手先でちぎり落として、唐辛子とレモングラスが入った煮立ったスープにさっと入れる。モリンガの葉っぱはほんのり甘さがあって、くたっとするとほうれん草に似ていると思う。

モリンガのスープ。ロングビーンを入れて。
採れたてのモリンガ。
この日の食卓は、厚揚げの甘辛あえ、テンペ、焼き魚、バクソー(肉団子)のスープ、唐辛子と野菜のスープ。大ご馳走だった。
トマトのサンバル。美味しいけどしばらく舌が痺れた。
これはサンバルマタ。マタ=新鮮・生という意味らしい。

他者にも寛容な信仰心

インドネシアは80%がムスリムだが、バリ島においてはバリ・ヒンドゥー教がメジャーである。でも、ヒジャブを被った人たちも一定数いる。モスクもぽつぽつと見かけた。
ホストファミリーの家では、朝5時から近くにあるモスクからお祈りが聞こえる。これが・・・・・・めちゃくちゃうるさい目が覚める・・・・・・。おかげで私はすっかり朝方生活になったのでした。
一方でバリヒンドゥーのお祈りは静か。毎日3回、お線香とお花とお菓子のようなものをお盆に乗せてお祈りし、聖水をかけて、指先一握りぶんのお米を濡らして額とデコルテにぺっと貼り付ける。
私が初日に泊まりに来た日も、「神様にあなたの存在を受け入れてもらうため」と、ホストパパが聖水をぴしゃっと私の顔・頭にかけて、お米を額に貼り付けた。
バリヒンドゥーは牛肉も食べるし、カースト制度もかなり緩い。もちろんお酒も飲むし、恋愛にもオープンだし、なんだかいろんなことに寛容な気がする。もちろんムスリムにも寛容で、近年バリ島に増えてきたムスリム教徒に対しても、「モスクを建てるのはご自由に〜」って感じらしい(ホストパパ談)。
ただし、セレモニーと呼ばれる儀式(集まり)の回数はとても多い。私が参加したときは、前日の夜からお供えもの(花飾り、揚げた鶏肉、ゆで卵のスープなど)を用意して、当日は丘の上にある寺院に家族で行った。そこには家族の家族など結構大勢が集まる。寺院でのお祈りは、そこに集まった人たちが横並びに座って、花を持って手をかざすなどの一連の動作を数回繰り返し、ものの10分くらいで終わった。
そのあとは家族と家族でこの日のために用意した料理を持ち寄って海辺でピクニック。とっても楽しかった。
このセレモニーも内容によって規模の大小はあるらしいが、いかんせん数が多く、毎週1回くらいある気がする。街中でもよく見かける。伝統衣装を着て、伝統音楽を流して、みんなで集まってお祈りする。それがバリ島では当たり前なんだね。

家族みーんな。
寺院は山の上にあり、風が気持ちよかった。
セレモニーの朝は鶏を絞めたり、下ごしらえ。

私が普段していること

基本的には何もしていない。ホストマムが仕事の日は、彼女の職場(リゾートホテル)に着いて行って、オフィスで彼女と同僚たちのコーヒー飲んだり、お昼を食べたり。
バリ島の都会エリア(デンパサールとか)とは違って、本当に外国人の少ない場所に私はいる。物珍しい視線を感じることにも、もう慣れた。でもそれが不快じゃないのは、バリの人は目が合うと笑いかけてくれるからだ。
初日に近所を一人で散歩していたら、校庭でサッカーをしていた子供10人くらいが一気にこっちにきて、「なに?!?!」と思ったら
ハロ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!
と全員に手を振られた。キュン。
個人的にはタイの田舎の方が、警戒心が深いというか、食堂とかでもムスっとした人が多いから、良い意味でバリの人たちの無差別の笑顔に日常的に触れていると、私まで自然と笑顔が増えていく。
「笑顔で挨拶」小学校の頃にさんざん教え込まれた教訓が、20年の時を経て戻ってきたのね・・・・・・。

こんな感じで軒先でぼーっとしてばかり。

東京に戻る自分を想像してしまう

ここまで書いてブログを下書き保存した後は、ホストマムと近所の集まりに参加した。セレモニーで流すバリヒンドゥーのゴンという音楽の練習だって。胸が躍る。
ゴンには楽譜がない。そして参加する全員がどの楽器もできるように練習する。リズム感のやたら良い20代くらいの男性がみんなの楽器を指導していた。
誰かがミスをしたって、みんな笑ってからかいあう。外国人の私にも「鉄琴やってみる?」と誘ってくれる。
子供たちは私を見るとハローと声をかけ、近所のおばさまたちは「ダンスレッスンに来たアナタね〜」的なことを言っているのか、知らんけど、めっちゃ笑顔でインドネシア語で話しかけてくれる。
だから私はバリにいると、彼らのように人に優しくなれる。
東京に戻っても、そのままの気持ちでいられるのかなぁ・・・・。と考えたりもする。心が穏やかで、そしてめちゃくちゃレイジーな毎日。東京に住んでいたらこんな日々は絶対に来ないから。

ゴンのレッスンの帰り、家に着いたら隣の家から大音量のカラオケが聞こえた。このカラオケ、もうすでに2日連続で、夜9時くらいから12時くらいまで永遠と女性が歌っている。しかも曲のレパートリーが極端に少なく、5〜6曲を繰り返しているのだ。上手くもないが、音痴でもない微妙なレベル・・・・。
「今日も歌ってるね」とホストマムに言ったら、「ストレス溜まってるのかしらね」と言っていた。それだけ。「迷惑〜」とか「うるさい〜」とか文句が一切ない。すごい。これがバリ島の田舎かぁ。
これくらいの寛容さが東京に戻っても続くといいなぁ。

ゴンの練習。真ん中にいる男性が先生。
これば別日にダンスの練習に参加したとき。踊ってみたけど、手や指先の使い方が難しい。
家にいる2匹の犬はいつもこんな感じ。暑いもんねぇ。

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