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“中川家じゃん”を封じる偉業 M-1グランプリ2023の感想

※※とてつもなくネタバレをしているので注意※※


※※ほんとに注意※※


※※いやマジで※※


今年はあまり予選動画を観られていなかったが、決勝でガシャンガシャーンと組み立てられるM-1のロゴを見るとやっぱり「本当に始まってしまった」とこちらまで緊張してしまう。

“たかが4分、されど4分“とモグライダーの芝さんがPVで言っていたが、M-1を観ると本当にそれを強く感じる。
ボーッとしていたら過ぎてしまうようなたった4分間の中にギュウギュウに笑いを詰め込んだ漫才同士のぶつかり合いはもはやスポーツのようで、毎年レベルが上がり過ぎてこの先が怖くなってしまう。

レベルが高すぎるあまりに、今回はインフレが起こっているように感じた。
そんなインフレの元凶となったのが今年のチャンピオン、令和ロマンだ。

去年秋に地下ライブ『グレイモヤ』で観たドラえもんのネタが本当に面白くて、お笑いライブで初めて笑い過ぎて座席から転げ落ちそうになったのを覚えている。
そのドラえもんのネタを去年のM-1敗者復活戦でやって結果は2位。1位がオズワルドだったことを考えるとかなりの快挙だったと思う。

特にくるまのお笑い好きは凄まじく、各賞レースの決勝が近づくたびにホワイトボードをパンパンに使って予習・解説をしてくれる動画がふざけつつもかなり勉強になる内容でありがたかった。
THE SECONDの時期にはスーパーマラドーナ武智の“Mおじ”に対して“セカおじ”を名乗り結構話題になっていたのも記憶に新しい。
THE SECOND特有のルールであるネタ時間6分を各漫才師がどう使うかという解説が特に分かりやすくとても勉強になった。

そんな令和ロマンがトップバッターだった。
観ている人を巻き込んで一緒に楽しむことができるような素晴らしいネタで、点数もそこそこ高かった。
この”そこそこ高い”トップバッターの点数を基準点としてしまったが故に、そのあと9組の得点は伸び悩み全員96, 7点というようなミルクボーイ現象が今回は起きなかった。

結果的にのらりくらりと他の組を交わし続け、さや香、ヤーレンズに続いて3位で最終決戦進出。
正直空気的に「ヤーレンズいっちゃうじゃん」と10組のネタが終わった時点では思っていた。
ヤーレンズのあの雰囲気が審査員や大会にマッチするとは思っていなかったから結構予想外だったが、塙さんか誰かの「(ボケ数が多くて)自分に刺さるボケが絶対1個はある」というコメントで腑に落ちた。

しかし令和ロマンも負けない。
所属する吉本興業をも犠牲にしたネタは1つ1つのボケのパンチが強くて、今回のコンセプト通り爆発の連続だった。
拍手が広がらなかったとことか、めちゃくちゃ複雑な単純作業とか、実際の映像が浮かぶようなくるまの演技力も令和ロマンの漫才が見やすくて分かりやすい理由かもしれない。
ドラえもんのネタもその連続なので絶対観てください

そしてヤーレンズとのデッドヒートの末令和ロマンが優勝!
中川家以来のトップバッターから優勝というとんでもない偉業を成し遂げてしまった。

M-1に限らず最初の人が優勝することを”中川家“と例えるのは少しでもお笑いが好きな人にとっては当たり前になっていて、もはや古事成語みたいになっていた。
過去の大会でのモグライダーやカベポスターなどもめちゃくちゃ面白いネタだったのに、「トップバッターだから」という不遇な理由で点数が伸びず優勝を掴めなかった印象がある。

そのもはや更新されないとされていた中川家の伝説を今年令和ロマンが更新してしまった。
これはとてつもない偉業だ。

ラランドを筆頭に大学お笑い出身がジワジワと勢力を広げていた昨今だったが、とうとうM-1チャンピオンを輩出してしまった。
大学お笑いでも既にプロに引けをとらないような面白い人はたくさんいるから、これからしばらくは大学お笑い出身芸人の時代になるのかもしれない。

そして最後にくるまが叫んでいた『来年も出ます!』の真実や如何に。
この若さとこの勢いなら本当に来年も出そうだし、もっと凄いネタを既にストックしている可能性は大いにある。
来年、トップバッター優勝を大きく上回る前代未聞の伝説が生まれてしまうかもしれない。

脳内の引き出しが足りないので外付け脳みそとして活用しています。