【500文字小説】卒業
「ついに卒業式だな。引っ越しの準備は済んだ?」
ユウコはあの日から無口になった。俺の言葉には返事を返さず、こっちを見て微笑むだけ。
「今日で離ればなれなんて信じられないな」
去年の夏休み、俺は海を見に行こうと早朝から自転車を走らせた。ユウコは俺の後ろで鼻歌を歌っていた。早朝だったんだ。運転手がちょうど、眠くなるくらいの。
「東京って行ったことないなあ」
ユウコの向こうで親友のカトウが心配そうにこちらを眺める。喋らないユウコに話しかける俺が滑稽に見えているんだろう。
「なあ、俺